(令和6年度答申第3号)                         答 申 1 審査会の結論  処分庁が,令和4年1月28日付け3調都外発第3030001号で「・市政情報公開請求書(令和3年10月1日付け)・市政情報公開請求書(令和3年10月8日付け)・市政情報公開請求書(令和3年10月19日付け)・市政情報公開請求書(令和3年10月29日付け)」(以下「一部公開文書」という。)を一部公開決定とした処分は,妥当である。 2 本件の経緯 年月日  経緯 令和3年11月26日  審査請求人は,調布市情報公開条例(平成11年調布市条例第19号。以下「本条例」という。)第6条第1項の規定により,市政情報公開請求書を処分庁に提出し,「調布市HP「個人情報の漏えいに関するお詫びと御報告」(2021年11月10日 登録)に記載の「9件」及び「個人情報漏えいについてお詫びと御報告」(3調都街発第2240002号 R3.11.10)に記載の6月10日から10月29日までの8つの日付の情報公開請求書を個人情報をマスキングせずに送付したと特定するに用いた情報」の公開請求(以下「本件請求」という。)を行った。  処分庁は,同日付けで本件市政情報公開請求書(以下「本件請求書」という。)を受理した。   同年12月13日  処分庁は,本件請求について,本条例第12条第2項の規定により公開決定等期間延長の通知を行った。 令和4年 1月28日  処分庁は,本件請求について,本条例第11条第1項の規定により市政情報一部公開決定処分(以下「本件処分」という。)を行った。   同年 4月26日  審査請求人は,本件処分を不服とし,審査請求書(以下「本件審査請求書」という。)を審査庁に送付し,行政不服審査法(平成26年法律第68号。以下「法」という。)第2条の規定により,審査請求(以下「本件審査請求」という。)を行った。  審査庁は,同日付けで本件審査請求書を受理した。   同年 6月 2日  処分庁は,法第29条の規定により,弁明書(以下「本件弁明書」という。)及び証拠資料を審査庁に提出した。  審査庁は,同日付けで本件弁明書及び証拠資料を受理した。   同年 7月 1日  審査請求人は,法第30条の規定により,反論書(以下「本件反論書」という。)を審査庁に提出した。  審査庁は,同日付けで本件反論書を受理した。   同年10月 7日  審査請求人からの申出により口頭意見陳述を実施した。   同年10月21日  審査請求人から補充的書面の提出期限延長を求める申出があった。   同年10月24日  審査請求人から「不服審査請求令和4年度第6号事件についての意見書」と題する書面が提出された。   同年11月14日  審査庁は,期限内に処分庁から再弁明書及び補充的書面の提出がなかったことから審理を終結し,本条例第19条の2第1項の規定により,調布市情報公開審査会(以下「当審査会」という。)に諮問(以下「本件諮問」という。)を行い,諮問書とともに本件審査請求書,本件弁明書及び本件反論書の写し(以下「本件諮問書等」という。)を当審査会に提出した。  当審査会は,同日付けで本件諮問書等を受理した。 3 本件審査請求の内容 (1) 本件審査請求の趣旨  調布市長が審査請求人に対し行った本件処分の取消しを求める。 (2) 本件審査請求の理由    審査請求人の本件審査請求書,本件反論書,本件口頭意見陳述,補充的書面及び本条例第24条に基づく口頭での意見陳述における主張はおおむね以下のとおりである。   ア 本件処分で一部公開等されたものは9件の情報公開請求書であるが,これは「請求する市政情報の件名又は内容」を正しく理解しておらず,失当である。   イ 本件請求により求めているものは,9件の情報公開請求書そのものだけではなく,それら個人情報をマスキングせずに送付したと特定するに用いた情報である。たとえば,電子メールに添付して送付したと仮定するならば,マスキングされていない9件の該当の情報公開請求書が添付された電子メールやその送信のための起案文書などである。   ウ 本件請求の対象文書は,2件の情報公開請求書について,匿名通報に含まれるメールと情報公開請求書のコピーが該当する。このうち1件は,調布市長宛のもので,11月10日時点では市の共有文書になっているのだから,それを情報公開するべきである。しかし,それ以外の7件については記録が存在せず,担当職員らの記憶によるだけか。9件の情報公開請求書が存在するだけでは,答えになっておらず,この処分は失当である。   エ 一部公開文書を4点の市政情報公開請求書としていることは,審査請求の趣旨を正しく理解しようとしていない。審査請求の趣旨は,4点以外の,公開されるべきだが公開されていない文書が対象であって,それらを出さない不十分な処分の取り消しを求めているのである。   オ 処分庁は,何を根拠に9件の情報公開請求書を個人情報をマスキングせずに外環事業者に送付したと特定したのか。9件のうち,客観的証拠として存在するものは2件だけである。   カ 2021年6月10日付から10月29日付までの8つの日付の9件の情報公開請求書をどのように特定したのか。9件でなくもっと多くの情報公開請求書が個人情報をマスキングせずに送られているかもしれないし,また,少ないかもしれないのである。街づくり事業課職員からの聞き取りとのことだが,その調書ないしは,記録文書を情報公開すべきである。およそ公的機関において,そのような重要な記録を残してないわけはなかろう。   キ 本審査請求は,情報公開請求者の個人情報をマスキングすることなく情報公開請求書を外環事業者に送付していたスキャンダルの核心に係るものである。調布市の市民や社会に対する信用は地に落ちている。信用回復の唯一の道は,誠実に本件の真相解明を行うことしかない。しかし,現実は,「探索したが見つからなかった,ないものはない。情報公開請求等の決定は適切に行われている。」と木で鼻を括るような説明だけで,説明責任を果たしていない。都合の悪い文書やメール等を意図的に削除して「ないものはない」,組織共有文書でないなどと開き直るのでなく,メールを復元してでも開示すべきである。   ク 審査請求人としては,処分庁は公的機関として,記録を残すことの重要性を再認識して欲しい。処分庁は,秘密録音により記録を作成し隠ぺいしている一方,都合の悪い文書を削除していると考える。   ケ 処分庁が一部公開したものは,4件の一部公開文書だけであり,まず,9件でないことは不十分であるが,それ以上に話がずれているというか誤魔化している。客観的事実として,9件の事業者に送信したメールと添付文書を示し,また,証明方法が難しいが,それ以外にはないことを示すことが必要であるが,それが出来ていない。少なくとも10月8日付のものは匿名通報者から市長宛のものが真正のもののコピーであるならば,少なくともそれを公開すべきである。9件を特定した根拠が加害者である担当者の供述であるならば,その担当者の供述調書の類を公開すべきである。このような重大なスキャンダルであり関係者を処罰するものであるから,供述調書をとってないことはおよそ真っ当な行政機関においてはありえないはずである。   コ 客観的証拠が存在しない理由は,杜撰な公文書管理(Eメールを含む),杜撰な決裁手続きに関係することは明らかである,社会に対する調布市の信用は地に落ちたままである。 4 処分庁による本件弁明書等の趣旨   本件弁明書等による処分庁の主張を要約すると,おおむね以下のとおりである。 (1) 弁明の趣旨  「本件審査請求を棄却する。」との裁決を求める。 (2) 本件審査請求に対する弁明  審査請求人は, 本件請求により求めているものが情報公開請求書そのものだけではなく,それら個人情報をマスキングせずに送付したと特定するに用いた情報であり,公開されていない文書があることから,本件処分の取消しを求めている。  しかし,「調布市HP「個人情報の漏えいに関するお詫びと御報告」(2021年11月10日 登録)に記載の「9件」及び「個人情報漏えいについてお詫びと御報告」(3調都街発第2240002号 R3.11.10)に記載の6月10日から10月29日までの8つの日付の情報公開請求書を個人情報をマスキングせずに送付したと特定するに用いた情報」について,対象となる文書の存否を確認するため,執務室等の行政文書を保管する場所及びコンピュータ上の電子ファイルを探索したが,一部公開した文書以外に対象の市政情報は存在しておらず,対象となる文書の特定が適正になされているものである。  また,個人情報漏えい事案に係る事実確認は,本件処分で一部公開された文書や職員からの聞き取りにより行ったため,審査請求人が求めている文書は不存在であり,本件請求に対して,適切に本件処分を行った。 5 審査会の判断 (1) 本件請求の経緯  ア 令和3年11月,市政情報公開請求の手続過程において個人情報の不適切な取扱い事案が発覚した。本事案の内容は,東京外かく環状道路事業(以下「外環事業」という。)に関する市民からの市政情報公開請求において,市政情報公開請求書の写しを電子メールに添付して当該文書等を作成した機関に送信し,その際,請求者名等の記入欄にマスキング処理を施すことなく送信したことにより,請求者の個人情報が当該機関に漏えいすることとなったものである。 イ これらについて本事業に関する市の所管部署である都市整備部で事実確認を行ったところ,街づくり事業課において令和3年6月10日から同年10月29日までの市政情報公開請求書の写し9枚を電子メールで事業者へ送ったことが判明し,市は11月10日に「個人情報の漏えいに関するお詫びと御報告」として市ホームページでの公表を行っている。 ウ 令和3年11月の本件請求時における外環事業に関する所管部署は,都市整備部街づくり事業課であったが,その後,2回の組織改編があり,令和4年1月の本件処分時は都市整備部付外環担当,令和6年4月から都市整備部まちづくり推進課となった。そのため,本件答申時における処分庁は都市整備部まちづくり推進課である。 (2) 本件請求文書について   ア 本件請求文書は「調布市HP「個人情報の漏えいに関するお詫びと御報告」(2021年11月10日 登録)に記載の「9件」及び「個人情報漏えいについてお詫びと御報告」(3調都街発第2240002号 R3.11.10)に記載の6月10日から10月29日までの8つの日付の情報公開請求書を個人情報をマスキングせずに送付したと特定するに用いた情報」で,審査請求人が主張する情報公開請求書を電子メールに添付して送付した場合,一部公開文書のほかにマスキングされていない9件の該当の情報公開請求書が添付された電子メールやその送信のための起案文書も含まれると解すことができる(以下「本件請求文書」という。)。   イ 本件請求文書の一部が不存在であるとした理由は,処分庁の説明によると,情報公開請求書を事業者へ送信したメールについては,請求日時点ですでに削除されており,これらのメール送信に伴う決裁文書については,当初より作成されておらず,存在していない。併せて,本件請求における特定するに用いた文書等も,個人情報漏えい事案の事実確認が本件処分で一部公開された文書や職員からの聞き取りにより行われたため,本件処分で一部公開された文書以外に文書等は作成されておらず,存在していないとのことであった。加えて,本件請求時点において,本件請求文書は,執務室の文書を保管する場所及びコンピュータ上の電子ファイルを探索したが保管していないとのことである。  本件請求時における処分庁の説明等を踏まえると,一部公開文書のほかに本件請求に該当する文書は保有していないとする処分庁の説明に,特段不自然,不合理な点があるとはいえず,これを覆すに足りる事情は認められない。 (3) 対象文書の範囲について 審査請求人は,令和3年11月に発覚した不適切な個人情報の取扱いに関する匿名の通報者が調布市長宛に送付した文書(「以下「匿名文書」という。)についても,本件情報公開請求の対象とすべきである旨主張している。 しかし,本件請求書の請求する市政情報の件名又は内容を見るに,匿名文書までもが対象文書であると解することはできない。よって,本件請求の対象とはなり得ない。 [0](4) 公文書管理について  本件諮問は本条例第19条の2第1項に基づきなされた公開決定等の処分に関する審査請求に係るものであり,当審査会における審査は処分庁の行った本件処分が妥当であったか否かを審査するものである。審査請求人が主張する本件請求における特定するに用いた情報等を公文書として記録すべきということは,市における公文書管理に関する事項で,調布市文書管理規則(平成16年調布市規則第12号)等に基づく取扱いであることから,その内容や運用については行政において検討されるべきものである。 (5) その他    その他,審査請求人は縷々主張しているが,当審査会の判断に影響を及ぼすものではない。 (6) 結論     よって,「1 審査会の結論」のとおり判断する。 6 当審査会の処理経過   当審査会は,本件諮問について以下のように審査を行った。 年月日 処理経過 令和4年11月14日 審査庁から提出された本件諮問書等を受理  令和6年 1月29日 情報公開審査会(令和5年度第5回) 本条例第24条の規定による審査請求人の口頭での意見陳述    同年 3月28日 情報公開審査会(令和5年度第6回) 処分庁の事情聴取及び審査    同年 5月15日 情報公開審査会(令和6年度第1回) 審査 7 調布市情報公開審査会委員 職名 氏名 備考 会長 草川 健 弁護士 副会長 井上 寛 弁護士 委員 稲益 和子 弁護士 委員 佐藤 惠子 市民