【2】 市報ちょうふ 令和6(2024)年9月20日 No.1772 【3】 ●ヤングケアラーって知っていますか?  ヤングケアラーとは、一般に、本来大人が担うと想定されている家事や家族の世話などを日常的に行っている子ども・若者のことをいいます。  ヤングケアラーといっても、普通の子ども・若者です。だからこそ、周りが気づき、声をかけ、困っていることに本人が気づけるよう、手を差し伸べることが大切です。  今回は、約10年前から家族の介護を手伝っている若者にお話を聞きました。 ◎ヤングケアラー×インタビュー「家族全員で介護しているので、多少の不自由もありますが学業にも臨めています」  そう語るのは、現在、市内に住む大学生の稲葉剣斗さん。  昨年度、調布市青少年表彰を受けています。認知症の祖父を含め家族5人で暮らしており、10年前に祖父の認知症の症状が進行し、10歳頃から介護に参加しています。現在も介護は続いており、長い経験の中で、どんな気持ちで、どのように関わってきたのか、お話を伺いました。 -具体的にどのように介護に関わってきましたか 家族の中でローテーションで役割を分担し、私は、例えば洗濯などの力仕事を中心に担ってきました。そのほか祖父の介助などを行っています。家族の目が祖父に行き届いていない時には、柔軟に対応することが必要ですので、さまざまなことを幅広く行っています。 -介護をすることになり、どのような気持ちでしたか 祖父とはずっと一緒に暮らしているため、介護していることをそこまで深く考えることはありませんでした。介護する時間もそれほど多くなかったので、そこを特別視することもあまりなかったです。ただ、日常生活の中で、少し手助けする時間が増えてきているなと感じたぐらいでした。世間ではヤングケアラーと言われるのかもしれませんが、一般的に想像されるようなヤングケアラーのイメージである「ずっと勉強もできない、学校に通えない」というわけではなく、家族が協力し合い、さまざまなことにチャレンジできている環境だと思っていました。 ◎「今までの経験は無駄じゃなかったな、これからもこの経験が生きる」 -そのような状況でも、当時、行政の支援はあったのでしょうか 介護サービスに繋いでもらいました。特に私自身がお世話になったのは、介護の悩みがある人の話を聞いてくれる相談窓口でした。そこで悩みを聞いてもらい、私自身が何かできることはないかと相談してみました。 -相談できた時は、どんな気持ちでしたか 自分自身が困っているから助けてほしいというわけではありませんでした。少し人と違った環境にあるからこそ、置かれている環境や自分自身の思いなど、あまり他の人が経験していないことを、他の形で解決することができたらいいなと思い、相談窓口を訪ねたので、「こういう方法、活躍の場がありますよ」と紹介してもらえた時はうれしかったです。今までの経験は無駄じゃなかったと感じることができ、これからもこの経験が生きるんだと思えました。 -経験の中で、どういったことが大変でしたか 私自身、今の状況が大変なことだと分かっていないのが本音です。今も介護は続いているので、辛かったことを心の中で消化できていない部分もありますが、それが心に残ることはあまりありません。恐らく10年、20年と経った時に「そういえばあの時辛かったな」と思う時があるのかなと思っています。ただ、そうした中でも辛いと感じることはあります。祖父とずっと一緒に暮らしているので、認知症の進行が目に見えて分かることです。いろんなことを徐々に忘れていくので、小学生の頃は私の名前を呼んでくれましたが、今は名前も分からなくなっている状況がとても辛いですね。 -現在のヤングケアラーが、おかれている状況をどう思いますか ほとんどのヤングケアラーが、ヤングケアラーであることを自認していないと思います。私も最近自認したぐらいなので、自認していないことが普通だと思いますが、そこが一番大きな問題だと思います。ほとんどの支援は「ヤングケアラーさん助けますよ」ということが前提で、話が進んでしまっていると感じています。自分自身がおかれている状況や困っていることに気付かずに生活している人が多いと思うので、そこが一番の問題であり、支援を行う上で考えるべき課題だと思います。 ◎「自分がヤングケアラーだと気付けていない人がまだまだいる」 -支援の手を差し伸べるためにできることは何だと思いますか 私も当事者としてどのような支援なら受け入れるかと考えた時に、家に突然来られて「ヤングケアラーの方ですよね」と聞かれても受け入れられないと思います。自分から相談に行ったからこそ、すべてが肯定的に捉えられたのだと思いました。困っている事に自ら気づき、他からの支援を受け入れられるような方法を、私自身これからも考え続けていきたいと思っています。 -大人に伝えたいことはありますか 自分自身が良い例だと思うのですが、ヤングケアラーの中にも程度の差があります。ヤングケアラーって「学校にも行けないなど、かなり生活が圧迫されている人」とイメージされている方が世間には多いと思います。ただ、ヤングケアラーの中にもいろんな人がいて、軽度であれば、その人がヤングケアラーだと誰も分からないと思います。だからこそヤングケアラーという概念を、世間がもうちょっと広く受け止めてくれたら良いなと思います。 ◎ヤングケアラーは、例えばこんな子どもたちです 障害や病気の家族に代わり、買い物・料理・掃除・洗濯などの家事をしている 家族に代わり、幼いきょうだいの世話をしている 障害や病気の家族の身の回りの世話をしている 家計を支えるために働いて、家族を助けている ◇他にも 目を離せない家族の見守りや声かけなどの気づかいをしている 日本語が第一言語でない家族のために通訳をしている アルコール・薬物・ギャンブルなど問題を抱える家族に対応している 障害や病気の家族の入浴やトイレの介助をしているなど  子どもや若者が本来なら享受できたはずの「勉強や部活動の時間」「友人との他愛ない時間」などと引き換えに、家事や家族の世話をしていることがあります。責任や負担の重さにより、その子自身の学業や友人関係などに影響が出たり、こころやからだに不調を感じる場合は、注意が必要です。  少しでも気になることがあれば、あなたの話を聞いてくれる「ヤングケアラー・コーディネーター」に相談してみませんか? ◎ヤングケアラー・コーディネーターに聞きました。 調布ゆうあい福祉公社ヤングケアラー・コーディネーター高橋さん -ヤングケアラー・コーディネーターとは  ヤングケアラーと思われる子どもやそのご家族からのお話を聞き、必要に応じて適切な相談窓口や支援サービスを紹介する役割です。 -どんな時に相談してもらいたいですか  自分自身がヤングケアラーかどうか分からなくても構いません。家族の見守りやお世話、家事、介護をしていて、日常生活や学業に影響が出てから自分の置かれている状況に気付く人もいます。自分や家族のことを誰かに話すのは抵抗があったり、とても勇気がいると思いますので、そのような時は匿名でご相談ください。気持ちをひとりで抱え込まず、ちょっとしたことでも相談してください。ご連絡いただければ、こちらから伺うこともできます。  また、子ども自身やご家族からだけでなく、周りの方からのご相談もお受けしています。 -具体的にどんなことをしてくれますか  実際に会ってお話を聞き、子どもに合わせた支援を一緒に考えます。大人が勝手に子どもへの支援を決めつけないことが重要です。 ◎ヤングケアラーに関する相談先 ◇調布ゆうあい福祉公社 場所/国領町3丁目8番地1電話042-481-7711・Eメールyc-jusan@chofu-yu-ai.or.jp ◇子ども家庭支援センターすこやか 場所/国領町3丁目1番地38ココスクエア2階電話042-481-7731・Eメールsukosou@city.chofu.lg.jp ◇24時間子どもSOSダイヤル(文部科学省) フリーダイヤル0120-0-78310(24時間受付・年中無休) (子ども政策課) ●J:COM(地デジ11チャンネル)「テレビ広報ちょうふ」 〈5日号〉5日から19日 市政情報、ミニコーナーなど 〈20日号〉20日から翌月4日 市政情報、特集など 放送内容は調布市公式YouTubeでも配信中 ●調布FM83.8メガヘルツ市政情報番組「調布市ほっとインフォメーション」 月曜日から金曜日 午前9時15分から、午後1時30分から、4時から、9時から(各15分)/5時30分から(5分) 土曜日 午後5時30分から(5分) 日曜日 午後3時30分から(5分) (注)放送が休止・時間変更になる場合あり。インターネットでも聴取可。詳細は調布FMホームページ参照