令和6年9月25日条例第28号    調布市手話言語条例  手話は,独自の語彙,文法及び文化を持つ一つの言語です。手指,体及び顔の部位等の動きを使って視覚的に表現する手話は,手話を使用する人々が物事を考え,意思を疎通し,知的かつ心豊かに日常生活を営み,社会参加を実現するために不可欠なものです。  一方で,我が国では,過去に手話を使用することへの制限や差別が存在した歴史があり,現在もなお,手話が言語であることに対する理解は十分であるとはいえません。  こうした認識の下,手話を自らの言語として使用する人だけでなく,全ての人に対して,手話を獲得し,手話で学び,手話を学び,手話を使い,手話を継承していくことができる権利を保障する環境の整備を推進することが必要です。  私たちは,手話が言語であることが広く理解され,手話を使用する人の権利が保障される社会をつくるとともに,多くの人が手話に慣れ親しむことを通じて,共生社会の充実を目指し,この条例を制定します。 (目的) 第1条  この条例は,手話に対する理解の促進及び手話の普及に関する基本理念を定めるとともに,市の責務並びに市民及び事業者の役割を明らかにし,市の施策を総合的に推進するための基本的な事項を定めることにより,ろう者,難聴者,中途失聴者その他の手話を使用する者が安心して生活することができる共生社会の充実に寄与することを目的とする。 (定義) 第2条 この条例において,次の各号に掲げる用語の意義は,当該各号に定めるところによる。 (1) 市民 市内に在住し,若しくは在勤し,又は市内の学校に在学する者その他市内で活動する者をいう。 (2) 事業者 市内で事業活動を行うものをいう。 (基本理念) 第3条 手話に対する理解の促進及び手話の普及は,次の各号に掲げる基本理念の下に行われなければならない。 (1) 手話が独自の語彙,文法及び文化を持つ一つの言語であること。 (2) 手話を獲得し,手話で学び,手話を学び,手話を使い,手話を継承していくことは,基本的な権利として最大限尊重される必要があること。 (3) 障害の有無にかかわらず相互に人格及び個性を尊重し合うことのできる共生社会の充実のため,手話はこれを使用する者だけでなく,社会において広く理解されることが必要であること。 (4) 手話を使用する者の社会参加のためには,生活のあらゆる場面で手話を使用することができる環境の整備が必要であること。 (市の責務) 第4条 市は,基本理念にのっとり,国,東京都,市民,事業者その他関係団体と連携を図り,手話に対する理解を促進し,及び手話を普及し,並びに手話を使用する環境を整備するために必要な施策を総合的かつ計画的に推進するものとする。 (市民の役割) 第5条 市民は,基本理念に対する理解を深めるとともに,市の施策に協力し,共生社会の充実に寄与するよう努めるものとする。 (事業者の役割) 第6条 事業者は,基本理念に対する理解を深め,市の施策に協力するとともに,手話を使用する者にとって暮らしやすい環境を整備し,共生社会の充実に寄与するよう努めるものとする。 (施策の推進) 第7条 市は,次の各号に掲げる施策の推進に努めるものとする。 (1) 手話に対する理解の促進及び普及のための啓発活動を行うこと。 (2) 学校教育,社会教育等の学習の場において,市民が手話に対する理解を深めることができる機会を充実させること。 (3) 市民に対し,手話を獲得し,及び学ぶ機会を確保するために,学習環境の整備,情報の提供,相談その他の必要な支援を行うこと。 (4) 市職員が手話に対する理解を深め,手話を学習することができるよう,環境を整備すること。 (5) 手話通訳を利用しやすい環境を整備すること。 (6) 手話通訳の質の向上のため,関係機関と連携し,手話通訳者及びその指導者を養成し,及び確保するとともに,手話通訳者の処遇の改善に資する取組を行うこと。 (7) 手話を使用する者の就労に際して手話の使用に関する適切な配慮及び支援が行われるよう,事業者に対して普及啓発その他の必要な取組を行うこと。 (8) 災害その他の非常事態において,手話を使用する者が必要な情報を迅速かつ的確に取得し,円滑に意思疎通を図ることができるよう,関係機関と連携し,必要な取組を行うこと。 (9) 手話を使用する者が手話を通じて市政に関する情報を取得し,及びその意見を表明することができるよう,必要な取組を行うこと。 (10) 前各号に掲げるもののほか,手話を使用する者が安心して日常生活及び社会生活を営むために必要な分野において,手話を使用することができるよう,必要な取組を行うこと。 2 市は,前項各号に掲げる施策を推進するに当たり,手話を使用する者,手話通訳者その他の関係者の意見を聴くよう努めるものとする。 (財政上の措置) 第8条 市は,手話に関する施策を推進するため,必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。 (委任) 第9条 この条例の施行について必要な事項は,別に定める。 附 則  この条例は,公布の日から施行する。