『子どもの笑顔輝く学校』をめざして 調布市立調和小学校室内化学物質放散対策プラン   平成15年(2003年)4月         調布市教育委員会             ○ はじめに  今日の社会では,極めて多くの化学物質が建築材や生活用品等の多方面で使 用されており,国内でも,約5万種の化学物質が製品として流通しているとい われております。これらの化学物質は,私たちの豊かな生活や経済活動を支え ているものですが,一方では環境汚染をもたらし,人体への様々な健康影響が 懸念されております。  特に近年,快適性の向上,省エネルギーの推進等を図るため,建物の高断熱, 高気密化が進むなかで,室内の換気が十分に行われていないことなどにより, 建材等から放散される化学物質の室内濃度が高まり,健康への影響が問題とさ れております。  学校は,子ども達(児童・生徒)が一日の大半を過ごす生活の場であり,化 学物質に汚染されず,健康で快適な環境のなかで学校生活を送ることができる よう求められております。  文部科学省においては,平成14年2月に「学校環境衛生の基準」を改訂し, 化学物質4物質(ホルムアルデヒド,トルエン,キシレン,パラジクロロベン ゼン)を指定し,平成14年4月以後の契約物件について,室内空気中の化学 物質の室内濃度指針値を下回ることを義務付け,更なる学校施設の安全性への 対策を示しました。そのなかで,学校施設整備に際しては,室内空気を汚染す る化学物質の発生がない,若しくは少ない建材の採用及び換気設備の設置等に ついて配慮された計画・設計が大切とされております。  こうした状況下のもと,新校舎として建設された調布市立調和小学校におい ても,平成14年9月の開校以来,新校舎内の化学物質放散によるものと思わ れる症状を訴える児童が一部顕れて参りました。  調布市としても,直ちに,原因の究明,化学物質の放散濃度の測定等に取り 組んだところでありますが,平成15年1月23日,居住衛生の調査・研究に係 る民間専門機関のNPO「シックハウスを考える会」からの報告によりますと, 平成14年9月の開校時点では,室内空気汚染による「シックハウス症候群」 の可能性が極めて高いと指摘され,児童,保護者等に対して何らかの影響を及 ぼしたことが判明しました。  この間,市及び教育委員会は,化学物質放散濃度の低減を図るため,学校や 保護者の御協力を得て換気の励行に努め,また,更なる室内空気測定の実施や 児童の健康調査,一時避難に及んだ児童の健康面や学習面等への対応など,取 組の強化を図って参りました。  現在,室内空気は,厚生労働省ガイドラインの14化学物質を対象とした測 定で,すべてにおいて指針値を下回った結果となっておりますが,夏期の直射 日光の影響による化学物質放散の懸念や児童の健康管理などに対して,今後の 対応策を決定・実施し,調和小学校が『子どもの笑顔輝く学校』となるよう, 引き続き改善に向けた努力を傾ける必要があることから,ここに本対策プラン をまとめたものであります。  併せて,調和小学校の化学物質放散問題を今後に生かし,安全な学校づくり を推進するために,学校施設における今後の対応について方向性を示し,「みん ながつくる・笑顔輝くまち調布」の着実な実現を目指すものであります。 Ⅰ 調和小学校新校舎の概要  調和小学校は,「民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関す る法律」(通称PFI法:平成11年7月法律第117号)に基づき,施設整備・ 維持管理・運営事業を一体なものとして導入した事業であります。  (契約)   (1) 契約件名  調布市立調和小学校整備並びに維持管理及び運営事業   (2) 契約の相手方 東京都千代田区大手町一丁目2番1号             調和小学校市民サービス株式会社   (3) 契約締結日  平成13年3月22日   (4) 契約期間   契約締結日から平成29年3月末までの16年間   (5) 契約金額   45億7,444万3,650円  (整備工事)    ・工事着手日  平成13年4月1日    ・工事完了日  平成14年7月15日    ・引渡し日   平成14年7月31日(校庭整備は8月31日)  (維持管理業務)    ・維持管理業務開始日  平成14年8月1日  (プール運営業務) ・プール運営業務開始日 平成14年9月1日  (新校舎授業) ・新校舎での授業開始日 平成14年9月2日 Ⅱ 化学物質放散に係る取組の経過  調和小学校は,平成13年4月1日に工事を着工しましたが,建設に当たって は設計の段階からシックハウス症候群の対策として,化学物質放散による影響 を極力抑えた資材の選定を行い工事の発注をしました。また,新校舎の共用開 始前から,化学物質放散濃度の測定を実施しておりましたが,平成14年9月2 日,授業を開始してまもなく,新校舎内での化学物質の放散が原因と思われる 症状を訴える児童が一部顕れました。  教育委員会及び学校等では,これまでに次のような取組を行ってきました。  1 教育委員会の取組   (1) 室内空気測定実施(5回実施)      文部科学省「学校環境衛生の基準」に準じた5時間密閉後吸引方式。  ア 第1回;平成14年7月21日(竣工間際)  ・測定箇所 16箇所,指定化学物質 4物質  ・ 結果 基準値を上回ったものがホルムアルデヒド3箇所,トルエ     ン15箇所,キシレン1箇所  イ 第2回;平成14年8月17日(備品搬入後)   ・測定箇所 16箇所,指定化学物質 4物質  ・ 結果 基準値を上回ったものがホルムアルデヒド2箇所,トルエ     ン11箇所  ウ 第3回;平成14年10月26日   ・測定箇所 18箇所,指定化学物質 4物質   ・結果 基準値を上回ったものはトルエン1箇所  エ 第4回;平成14年12月27日 ・ 測定箇所 第3回測定で基準値を上回った1箇所を含む「のがわ       学級」の4箇所に限定,指定化学物質 4物質   ・結果 基準値を上回ったものがトルエン1箇所  オ 第5回;平成15年1月25日~27日(NPOシックハウスを考える会実施)   ・測定箇所 30箇所,指定化学物質 14物質(厚生労働省基準)   ・結果 すべてにおいて指針値を下回りました。   (2) 保護者説明会開催(5回開催)  ア 第1回;平成14年10月11日(参加者80人)       ・第1回・第2回の室内環境調査結果の説明   ・児童の安全・健康の確保等についてのアンケート調査結果の説明  イ 第2回;平成14年11月14日(参加者105人)      ・第3回室内環境調査結果の説明 ・ NPO「シックハウスを考える会」を迎えてのPTA主催の学習会   を実施  ウ 第3回;平成15年1月23日(参加者35人)      ・第4回室内環境調査結果の説明      ・健康診断結果の説明 ・ 今後の対応策の説明  エ 第4回;平成15年2月15日(参加者32人) ・第5回室内環境調査結果の説明  オ 第5回;平成15年3月28日(参加者22人) ・ 調和小学校のシックハウス症候群問題に関する調査結果の説明 ・ 調和小学校室内化学物質放散対策推進委員会の内容と今後の対応 策の説明   (3) 健康診断実施(2回)  ア 第1回;平成14年10月30日,31日  全児童を対象にNPO「シックハウスを考える会」提供の問診票によ る状況調査並びにNPO笹川医師による医師検診表に基づき,医師検診 を実施しました。診療科目は内科,耳鼻科,眼科を学校医によって, 皮膚科は笹川医師により実施しました。  イ 第2回;平成15年3月20日  卒業する6年生を対象に,皮膚科の検診を笹川医師により実施しま した。   (4) その他の取組    ア 他校等へ一時避難した児童への対応(14.10~15.3)      他校等へ一時避難した児童について,担任は当該校の担任と緊密な     連携をとり,学習に遅れが出ないようにしました。「太陽の子」の児童     についても,担任が定期的に連絡をとる体制をつくるとともに,平成     15年1月からはスクールサポーターを派遣し,児童の学習内容の補充     を強化しました。      転校した児童についても,学習の状況はもちろん健康面についても     担任が聴き取りを行って参りました。    イ 簡易測定器の配備(14.11.21)      化学物質の放散濃度について,児童・保護者が不安を感じたときは,     いつでも測定ができるよう学校に簡易測定器を配備しました。    ウ スクールカウンセラーの配置(14.12~)      児童・保護者が相談をしやすい状況をつくるため,スクールカウン     セラーを配置しました。    エ 調和小学校シックハウス問題の解決のために,NPO「シックハウス     スを考える会」による支援と業務委託の実施 ① 臨時健康診断(前掲;14.10.30~31)と調和小学校シックハウス  症候群医学調査報告(15.1.23)      ② 第5回目の室内空気測定(前掲;15.1.25~27)   厚生労働省基準の化学物質14物質,測定箇所30箇所    ③ 化学物質放散発生源特定のための調査(15.2.26~28)    校内特定箇所の床・壁・中央にてフレック(一部がくりぬかれた   円盤状で特定領域の空気を捕集する装置)を使用した測定     ④ 新築工事で使用された建材・資材の調査分析(14.12.26以降)     ⑤ 6年生を対象に問診表及び皮膚科(笹川医師)検診(前掲;15.3.20)     ⑥ 室内環境改善調査委託報告書の提出(15.3.24)    オ 医療費給付申請受付(15.2.7~8)      新校舎開校(14.9.2)後,本件事案によって医療機関に診療検査を     受けたことにより発生した医療費の負担分については,学校健康セン     ターからの給付等で対応を図ることとし,そのための申請を受け付け     ました。    カ 対策推進委員会の設置(15.3.19)      調和小学校シックハウス症候群問題の対策を進めるとともに,児童     の健康の保持を図るため,平成15年3月19日に「調布市立調和小学     校室内化学物質放散対策推進委員会」を発足しました。構成メンバー     は,市民,学校関係者,校医,行政等で組織する委員25人です。    2 学校の取組   (1) 換気の徹底     新学期に向け,14年8月中から換気について徹底していくことを職員 間で確認しました。     朝の窓開け,休憩時間中の換気,放課後の窓開けを続けるなかで冷房 を利用しました。また,放課後は窓を開け放したまま帰り,校舎管理補 助員が最後の巡回時に閉めました。上部にある換気窓を夜間も開けた状 態にするなど換気に気をつけました。     9月下旬より,早朝(午前7時15分~20分頃)からの窓開けを開始 し,教頭・用務主事・非常勤の用務補助員の協働により全館の窓を開放 し換気をしてきました。     10月22日から11月11日までの期間,PTA有志が早朝の窓開けに 参加しました(ほとんどの測定場所が基準値を下回った「第3回目」の 測定結果を確認して手伝いは終了)。早朝の窓開けについてはその後も教 頭・用務主事等で続行してきました。     9月中旬までの冷房期間が終了後,授業中も窓を開け放ち換気を徹底。 11月に入ってもこの状態を継続しましたが,NPO「シックハウスを考え る会」の上原会長より,「風邪を引かせる方が怖い」との指摘があり,常 時一部分を開け風の流れを作ったり,休み時間の換気を徹底するなど室 温を保ちつつ換気の徹底を継続しました。暖房期間中も当日の天候,気 温,湿度などを考慮しつつ前記の方法で換気に取り組んできました。     15年3月より,校舎管理補助員が勤務開始時刻を30分前にスライド して早朝の窓開けに参加。現在は,用務主事,臨時用務補助員,校舎管 理補助員が窓を開け,教頭が確認する形で確実な換気を行っています。   (2) 健康状態の観察     外遊びを奨励するとともに,担任による朝の健康観察等を徹底しまし た。保健室ではシックハウスに関わる症状がないかを特に注意して観察 しました(保健室の観察では顕著な例を認めず)。     保健室へ来た児童のデータは,養護教諭が用意した個人別カードを活 用し児童の来室理由を個別に把握しました。     2学期半ばより,新しい形式の「朝の健康観察表」を取り入れ,点検 項目を細かく具体的にして健康観察をより確実なものにしました。     養護教諭は,保健室に来た児童の来室理由をパソコンでデータ処理し 統計的に実態を把握しています。   (3) 担任による学習支援     一時避難で自宅待機や「太陽の子」へ通う児童に対し,授業内容につ いて説明した手紙やプリント類を継続して届けました。また,子ども同 士の関わりを大切にするため,担任の指導のもと,子どもに手紙を書い てもらい友達から連絡する形をとりました。本人が参加したい授業には 随時参加してもらいました(図工工作や連合音楽会の練習)。     15年1月末に,担任の関わり方について保護者から要望が出されまし た。それを受け止め,毎週木曜日の午後4時から,該当児童が課題を提 出する際,担任と児童が面談する場を設けることにして実施しました。 図工・音楽・家庭科・算数科などの専科教員も個別に指導しました。面談後 は必ず担任が家庭に電話するなど,様々な機会を捉えて連絡を密にしま した。     「太陽の子」の担当者とは,担任が連絡を密にとり,該当児童の状況 把握に努めました。  他校に一時避難した児童については,成績処理等について学校間で連 絡を取り合い,調和小学校への在籍意識を大切にしながら一時避難校で の生活が安定したものとなるよう配慮しました。     14年11月よりスクールカウンセラーが暫定的に派遣されました。保 護者の希望を受け,「太陽の子」に直接出向いたり電話などでのカウンセ リングを行ってきました。      (4) PTAとの連携     ホルムアルデヒドを吸収するという観葉植物の提供を呼びかけ協力し ていただきました。     PTA役員会を中心に,保護者への早朝窓開けのお手伝いを呼びかけ ていただき協力をいただきました(10月22日から11月11日)。     PTAの意識調査を実施し,環境問題に関する保護者の意識をまとめ ていただきました。  平成15年度にPTA主催の「シックハウスに関わる学習会」を予定し ています。  PTA有志による「環境ボランティア」を募集。簡易測定器を用いて の測定に協力していただきました。結果は15年3月にまとめてグラフ化 し家庭に配布しました。 Ⅲ NPO「シックハウスを考える会」からの提言  居住衛生の調査・研究に係る民間専門機関のNPO「シックハウスを考える会」 の支援・協力を得て,これまで臨時健康診断の実施や調和小学校シックハウス 症候群医学調査報告を受けるとともに,室内空気測定や化学物質発生源を特定 するための調査を行ってきました。  こうした総合的な調査結果を基に,次のとおり化学物質の放散濃度を低減さ せる方法の提言を受けました。  1 収納家具関係     過去の実験データから,収納家具における化学物質放散(ホルムアルデ   ヒドであることが多い)はその多くが仕切棚の木口からです。    従って,これを抑えるには木口部分をテープで封じる方法が効果的です。    しかし,樹脂系のテープは湿気で膨潤することが多く密封性にいささか    の不安があります。台所で一般的に使用されるアルミテープがお勧めです。    2 床や壁の目地     フローリング材そのものに問題がなくても,それを固定する時に使った   接着剤に問題があると,その目地を通して化学物質が放散してくる場合が   あります。    時間が十分取れる場合には日射エネルギーと十分な換気にて放散を促進   すれば良いが,それができない場合には目地を無機系の材料(有機系は新   たな問題を引き起こす可能性がある)で埋める方法が考えられます。  3 自然換気を有効に使う方法(冬季の場合)    内外温度差がなければ自然換気は十分に行われません。従って,夜の間    に暖房機を使って部屋を十分暖め,夜明け前の外気温が最低になる時に窓   を全開放するとより効果的な換気状態が得られます。 Ⅳ 調和小学校室内化学物質放散対策プラン   教育委員会及び学校等としては,NPO「シックハウスを考える会」からの提言, 調和小学校室内化学物質放散対策推進委員会及び保護者説明会での御意見等を 踏まえ,次のような対策を実施して参ります。  1 教育委員会としての対策   (1) 施設改善等 ア これまで以上に換気を十分に行うため,普通教室の廊下側の窓を全  開にします。そのため,児童の落下防止として5月の連休中に手すり  を設置します。 イ 収納家具や棚等における木口からの化学物質放散を抑えるため,木  口部分をテープで覆います。(プレイルーム・少人数教室・4年2組・     5年2組) ウ 室内の空気の流れを効果的にするため,扇風機を設置します。(プレ  イルーム・少人数教室・放送室・4年2組・5年2組・アリーナ)   (2) 定期的室内環境調査  平成15年2月に実施した室内環境調査に準じた調査を,平成15年の 夏期(6月・8月)及び冬期(12月)に実施します。   (3) 児童の健康管理体制     昨年10月に実施した全校児童に対する問診や臨時検診結果から,シッ クハウス症候群に顕れやすい目,鼻,喉等の粘膜刺激症状などが出てい ます。こうしたことから,症状の推移の把握も含め本年5月の定期健康 診断に併せて問診票を受け取るとともに,皮膚科検診(旧6年生は3月 20日に皮膚科検診を実施済み)を行う予定であり,今後も定期的な検診 と併せ,卒業生及び転校生に対しても進級先又は転校先の学校と連携を 密にし,児童の健康管理には万全を図ります。  また,児童の保護者に対する医療費を含めた医療相談についても,常 時相談できる体制を維持して参ります。   (4) 他校等への一時避難  児童が他校等へ一時的に避難する場合には,避難先となる学校等と緊 密な連携を図ります。また,学習内容の進度を含めて,児童の学習につ いて遅れが出ないよう担任等との連絡・相談体制を確立して参ります。   その際,必要に応じてスクールサポーター等の派遣も考慮します。     他校へ転校した場合においても,その後の学習や健康の状況について 十分な情報交換をして参ります。     更に,健康面や学習面のケアーのために他校等との緊密な連携を図る ほか,15年4月に配置したスクールカウンセラーを活用するなど行政と してできる限りの対策を講じて参ります。  2 学校としての対策   (1) 換気の徹底 ア 換気体制の継続   校舎管理補助員の朝の勤務時間を30分間前に移行し,用務主事と臨 時用務補助員の3人で各階を分担し,午前7時30分から全館の窓開け を開始する体制を継続します。このことにより,児童登校の午前8時 15分までにできる限り外気との入れ替えを行うことができます。    イ 窓開けの徹底  暖・冷房期間を含めて窓の密閉をせず,空気の流れを遮断しないよう 暖・冷房期間以外は,窓の全開を原則とします。また,児童下校後も校 舎管理補助員が戸締りをする午後5時までは開け放ちのままとします。      なお,空気が滞留する傾向にある教室等は,扇風機を活用して外気     との入れ替えを早める工夫をします。    ウ 機械換気の継続      機械換気については,これまで同様夜間を除いて常時運転します。     エ 夜間の換気      天窓を若干開放(校舎警備上全開放は不可)しておきます。 オ 備え付け備品類への対応   備え付け備品類の引出しは,児童への安全を配慮しつつ,できる限    り開放し,化学物質の放散を促進します。   (2) 児童の健康状況の把握    ア 八つの観察項目による朝の健康観察を引き続き実施し,健康状況の 把握を徹底します。 イ 家庭での体調異状を把握するため,連絡帳を活用するなど,家庭と  の連絡・連携を一層強めます。 ウ 内科的訴えにより保健室へ来室する児童からは,訴えの内容をよく  聴き取り,適切かつ迅速に対応するとともに訴えの内容を月毎に整理・  分析します。その結果,シックハウス症候群との関連が伺える場合に  は学校医に相談し,必要な場合は臨時健康診断について教育委員会と  協議し実施します。    エ 個別の児童の健康状況とその変容の様子を確実に把握するため,健 康調査を実施します。 オ 平成15年度は,春の定期健康診断のほかに,状況に応じては秋に  臨時健康診断を実施します。 カ 体調異状により一時避難していた児童については,とりわけその体 調把握に努めるとともに,保護者との連絡・連携を一層強めます。また, 他校に転校した児童についても定期的に体調を聴き取り把握します。   (3) 教育相談体制の強化  平成15年度から配置されたスクールカウンセラーの専門性を最大限 活用するために,相談しやすい環境設定を行います。また,校内の教育 相談担当スタッフとの連携を強くして,相談後の担任等による適切なケ アを図ります。     さらに,スクールカウンセラーによる教育相談の研修を実施し,教職 員の児童理解の力を高めます。   (4) その他 ア 化学物質や臭い等の感じ方に個人差があることへの理解を,すべて  の児童,保護者に深めてもらい,体調の不良を訴えることをためらう  ことがないような,温かい雰囲気を学校,地域に醸成します。 イ PTAとの緊密な連携のなかで,上記の事柄を着実に実施するとと  もに,好ましい環境を児童に提供するための学習会を企画するなど,  今回の教訓を前向きに生かすための方策を追究します。      また,そうした活動の推進役としての環境ボランティアを検討して     いきます。 ○ 学校施設における今後の対応 Ⅰ 目標   行政の役割は,住民の福祉の増進を図ることであり,特に,自ら守る手段  を持たない,無防備ともいえる子どもたちの安全確保は,何ものにも優先さ  れなければなりません。学校においては,児童・生徒の健康に関わる施設の  環境問題について,真剣に取り組むことが重要であり,今後の学校施設での  化学物質の放散に係る対応では,次の5点を施策の目標とします。  1 学校施設の安全確保(シックハウス症候群発症回避の対応)    学校施設整備に際しては,厚生労働省,文部科学省,国土交通省などの   動向に留意しながら,最大限の室内環境対策を講じていきます。    設計段階では,建材・資材の選定に当たり,各種情報収集により室内空   気を汚染する化学物質の発生のない,若しくは少ない建材を採用し,また,    換気設備の設置等が配慮された計画・設計のさらなる充実を図ります。    また,施工に当たっては,これらのことが確実に実施されていることを   確認することが安全確保への第一歩であると認識します。そして,管理責   任者は,室内化学物質放散濃度の低減に万全を期し,放散濃度低減を確認   したうえで施設の供用を開始することとします。    また,供用を開始した後においても,換気の励行に努めます。    2 情報提供    管理責任者は,児童・生徒,保護者等に不安・不信を抱かせないために     適時適切な情報の提供に徹します。(室内空気調査結果等)    3 関係機関等との連携    学校を一日も早く安全な環境下に置くために,学校・地域・行政とが連    携を図り,換気の励行や関係機関等との連絡会の設置,また,専門家のア   ドバイスを積極的に活用するなどの手だてを構築します。    4 児童・生徒の健康    施設の新築,改築,改修等を行った場合は,必要に応じて全児童・生徒   を対象とした健康調査を実施します。また,健康面についての相談体制を    確立し,保護者等の不安を払拭するよう努めます。    なお,検診に当たっては,現在,「シックハウス症候群」の診断基準が国     で定められておらず,検診を担当する学校医等も明確な診断方法等や判断    を模索している状況があることから,最新の情報収集に努めることはもと   より,NPO等との連携も視野に入れ対応を図ることも有効な方策と考え   ています。    5 アレルギーや過敏症の不安等で一時避難した場合の児童・生徒の健康    面・学習面    施設整備等が行われた当該校の児童・生徒が,アレルギーや過敏症の不   安等で他校等へ一時的に避難された場合は,健康面や学習面のケアーが必   要であり,在籍校との密な連携やスクールカウンセラーの活用など行政と    してできる限りの対策を講じていきます。 Ⅱ シックハウス症候群回避対策  1 施設整備時における留意点   (1) 計画・設計段階    ア 建材・資材等の選定      室内の容積と建材や家具等の施工面積などとのバランスを考慮し,     発生源となる可能性のある建材や家具を極力持ちこまないような計画 ・設計をさらに推し進めます。また,使用する建材等については,室 内空気を汚染する化学物質の放散量の最も少ないものについて,各種     種情報を基に選定します。         合板やパーティクルボードなどについては, 日本農林規格(JAS)     及び日本工業規格(JIS)のなかで,ホルムアルデヒド放散量により     区分され,一定以下の放散量となるように規定されております。      学校施設整備に当たっては,合板類をJAS規格の最上位のFc0を,     パーティクルボード類をJIS規格の最上位のE0タイプを指定します。      遊具や建築物の下塗り錆止め塗料及び上塗り塗料等については,鉛フ     リー塗料を指定します。      また,トルエンやキシレン等のVOC(揮発性有機化合物)につい      ても同様,メーカー等の情報収集に努め,より少ないものを選定して     いきます。    イ 施工方法に配慮した設計      壁や床などの施工に際して,室内空気を汚染する化学物質の発生を      抑えるような工法を検討します。      例えば,施工現場において,塗料や接着剤等を使用しない工法(工        場のプレフィニッシュ品,釘やボルトだけで締結)などについて,設      計段階で十分検討します。    ウ 施設内の空気の流れに配慮した設計      施設の平面計画・断面計画に当たっては,施設の風の流れに配慮し,      淀みを作らないように計画することを原則とします。      平面計画としては,春,夏,秋の卓越風向(出現頻度が高い風向)     を考慮して,開口部等を計画し,また,教室単位や各階単位での風の     流れにも配慮します。      断面計画では,温度差による空気流動を促進するため,高窓や小窓・      ガラリを設置するなど工夫します。    エ 換気計画      室内の空気を良好に保つためには,中間期の季節,冷暖房設備の運      転,利用人数や利用内容等に応じて,適切な換気方法を計画します。   (2) 工事の施工段階    ア 使用材料等の確認      ホルムアルデヒドやトルエン,キシレン等のVOCについては,各     業界の規格を参考にするか,建材メーカーからの製品安全データシー     ト(MSDS)等を取り寄せるなどして,使用材料等を確認します。    イ 化学物質放散濃度低減に配慮した工事計画      工事時期・工事期間の設定においては,化学物質の蒸散しやすい時期     (一般的には,気温が高い時期)や,引渡しまでに長期間(十分な養     生期間や乾燥期間等)確保できる時期とするなど,引渡し時の化学物     質の放散濃度をできるだけ抑えられるように配慮します。      また,施工中や施工後も,仕上げ等への影響に留意しながら,通風     や換気に配慮します。    ウ 子ども達や教職員等への影響に配慮した工事計画      既設学校内の新増改築・改修に当たっては,工事実施に伴い,子ど     も達や教職員等に室内空気を汚染する化学物質の放散による影響を及     ぼさないように,工事実施時期や工事区域の設定等に配慮します。ま     た,仮校舎等の仮設建物についても,同様とします。   (3) その他     学校用備品類の購入に当たっては,構成している材料の仕様を把握し,    室内空気を汚染する化学物質の発生のない,若しくは発生の少ない材料    を使用したものを選定します。  2 日常生活における留意点    教室等の室内環境については,「学校環境衛生の基準(文部科学省)」に   より,良好な状態が維持されているかどうかを定期的にチェックすること   となっております。このチェックを確実に行うとともに,室内空気を汚染 する化学物質に対してはできるだけ発生源を室内に持ち込まないことはも   ちろん,室内に溜まった汚染物質を低減させる(濃度を高めない)ことが   大切です。    自然換気の励行や機械換気を有効に利用して,室内空気の安全性の維持   に努めることが必要と考えます。    一方,室内の濃度が学校環境衛生の基準値を上回った場合は,室内の必 要な換気量が確保されているか,また,発生源は何かなどについて確認す ることが必要です。発生源が特定でき,かつ撤去等の対策を直ちに行うこ とができる場合以外は,室内空気中を汚染する化学物質の濃度を低減でき るよう換気に努めることが重要であります。    なお,状況に応じて,機械換気設備の設置・改善や空気清浄機の設置な   どについても検討します。