議員提出議案第26号 障害のある子どもに係る公的給付の所得制限撤廃を求める意見書提出について 上記の議案を提出する。 令和7年12月11日 提出者 調布市議会議員 山根 洋平 賛成者 調布市議会議員 伊藤 学 同 磯邉 隆 同 青山 誠 同 古川 陽菜 障害のある子どもに係る公的給付の所得制限撤廃を求める意見書  国は「こどもまんなか社会」の実現を掲げ,その基本理念として「全てのこども・子育て世帯を切れ目なく支援する」ことをうたった「こども未来戦略」を閣議決定している。この理念に基づき,令和6年には児童手当について所得制限を撤廃し,全ての子どもが等しく手当を受けられるよう制度改正が行われた。 しかしその一方で,最も支援を必要とするはずの障害のある子どもたちを支える公的給付(特別児童扶養手当,障害児福祉手当,障害児通所支援,特別支援教育就学奨励費)の多くに,いまだ「所得制限」が存置されている。これは「全てのこども」を支援するという「こども未来戦略」の基本理念と明確に矛盾する,看過できない深刻な事態である。 そもそも,障害のある子どもを育てる家庭は,障害のない子どもを育てる家庭と比べ,格段に重い経済的・精神的負担を負っている。多くの親は,愛する我が子の将来,特に「親亡き後の子の生活」を案じ,そのために少しでも多くの資産を残そうと懸命に働いている一方,現行制度は子どもの将来のために親が懸命に働いた結果,所得制限基準を僅かでも超えた途端,必要不可欠な手当や福祉サービスを打ち切る,あるいは高額な負担を課すものとなっている。 こうした状況は,障害児を育てる家庭の努力と心情を踏みにじる,あまりにも不条理な制度であると言わざるを得ない。特に,児童発達支援や放課後等デイサービスといった障害児通所支援においては,所得基準(市民税所得割28万円以上)を超えると,利用者負担が「一般1」世帯(月額 4,600円)の8倍以上(月額37,200円)に跳ね上がり,必要な療育を諦める「利用控え」を深刻に引き起こしている。また,所得制限を回避するための「働き控え」も発生しており,これは個人のキャリア形成を阻害するだけでなく,社会全体にとっても大きな経済的損失であると言える。 こうした中,国は令和6年度に,障害児の補装具費に係る所得制限を撤廃したが,この流れを止めることなく,障害児福祉に残る全ての不合理な所得制限の撤廃を早急に進めるべきである。 よって,国に対して,「こどもまんなか社会」の理念を真に実現するため,障害のある子どもを育てる家庭の努力が報われ,全ての子どもが等しく支援を受けられるよう,下記の事項を速やかに措置されるよう強く要望する。 記 1 障害のある子どもに係る公的給付(障害年金,特別児童扶養手当,障害児福祉手当,障害児通所支援,特別支援教育就学奨励費)について,家庭の所得状況によって不支給となったり,負担額や支給額に差異が生じたりすることのないよう,所得制限を直ちに撤廃するための法改正及び関連制度の改正を行うこと。 2 現行の所得制限制度が,子どもの療育・教育の機会(利用控え)や,保護者の就労(働き控え)に与えている影響について,早急に詳細な実態調査を実施し,その結果を公表すること。 以上,地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。 令和7年12月  日 調布市議会議長 宮本 和実 提出先 内閣総理大臣  文部科学大臣  厚生労働大臣  衆議院議長   参議院議長