PUBLIC INFORMATION CHOFU みんなが笑顔でつながる・ぬくもりと輝きのまち調布 市報 ちょうふ 【1】 No.1573 平成29(2017)年3月28日 深大寺白鳳仏国宝指定臨時号 ■発行:調布市(毎月5日・20日発行) ■所在地:〒182-8511 東京都調布市小島町2丁目35番地1 ■編集:行政経営部広報課 ■調布市ホームページ http://www.city.chofu.tokyo.jp/ 問い合わせ/郷土博物館電話042-481-7656 電話の掛け間違いにご注意ください 深大寺白鳳仏「銅造釈迦如来倚像(どうぞうしゃかにょらいいぞう)」が国宝指定へ  3月10日、国の文化審議会は文部科学大臣の諮問に対し、深大寺所蔵の銅造釈迦如来倚像(通称白鳳仏)を国宝(美術工芸品・彫刻)に指定することを答申しました。  今後、国の官報告示をもって正式に指定されます。 銅造釈迦如来倚像の文化財的価値  深大寺の「銅造釈迦如来倚像」は、椅子に腰かける姿のお釈迦さまで、明るい表情を浮かべた少年を思わせるお顔に、着衣は衣文(えもん)が流れるように美しく表現されています。7世紀後半の飛鳥時代後期(美術史上の区分では白鳳時代)に造られたと推定される、いわゆる「白鳳仏」の特色がよくあらわれた仏像の代表作です。製作技法も高い水準であることが分かっており、関東に伝来した数少ない白鳳仏の名品です。  その作風などから、法隆寺の国宝・銅造観音菩薩立像(かんのんぼさつりゅうぞう)(夢違観音(ゆめたがいかんのん))や、今では右手首以外所在が確認できない新薬師寺の重要文化財・銅造薬師如来立像(やくしにょらいりゅうぞう)(香薬師(こうやくし))と同じ工房で鋳造された可能性が指摘されています。 関東最古の国宝仏  関東における国宝の仏像のうち、長く同じ場所、寺に伝来したという点では、鎌倉大仏といわれる高徳院の銅造阿弥陀如来坐像(あみだにょらいざぞう)に次いで2例目となります。また、深大寺の銅造釈迦如来倚像の製作時期は、13世紀中頃の鎌倉大仏よりさらに550年以上前であり、“関東最古の国宝仏”ということになります。  都内の国宝仏としては、大倉集古館(おおくらしゅうこかん)(港区)所蔵の木造普賢菩薩騎象像(ふげんぼさつきぞうぞう)(平安時代)に続き2体目です。 ◆白鳳仏の展示  銅造釈迦如来倚像は、4月18日(火曜日)から5月7日(日曜日)に東京国立博物館で開催される「平成29年新指定国宝・重要文化財」展で公開されます。  深大寺での本像の拝観は、同展示終了後の5月中旬以降になる予定です。 No.1573 平成28(2017)年3月28日 【2】 深大寺白鳳仏国宝指定臨時号 像の伝来と深大寺との関係  深大寺は、満功上人(まんくうしょうにん)が奈良時代の天平5(733)年に開創したとされていますが、釈迦如来倚像が造られた飛鳥時代後期は、さらに半世紀ほどさかのぼります。  深大寺はかつて、奈良市興福寺(こうふくじ)などと同じ法相宗(ほっそうしゅう)の寺であったことから、畿内(注)とのつながりが推測されます。像の優れた造形や高度な鋳造技法、夢違観音・香薬師との類似から、深大寺の開創より前に文化の中心であった畿内地域で製作され、その後、深大寺の本尊として迎えられたとも考えられています。 (注)古代の行政区分。現在の近畿地方の中央部にあたる、奈良県全域、京都府の一部、大阪府のほぼ全域、兵庫県の一部が該当  釈迦如来倚像の発見と重要文化財指定  釈迦如来倚像が発見されたのは、慶応元(1865)年に深大寺が大火災に見舞われて諸堂の多くを焼失してから44年後の明治42(1909)年のことでした。深大寺元三大師(がんざんだいし)堂内の須弥壇(しゅみだん)の奥に横たえて置かれていたところを偶然発見されました。  そして、大正2(1913)年に国宝指定されましたが、昭和25年8月29日の文化財保護法の施行に伴い国宝がすべて重要文化財になったため、同像も重要文化財となり、現在に至りました。  深大寺所蔵の文化財  深大寺は、釈迦如来倚像の他に、国指定重要文化財の梵鐘(ぼんしょう)をはじめ、市指定有形文化財の山門・深沙大王堂内宮殿(じんじゃだいおうどうないくうでん)・河鍋暁斎(かわなべきょうさい)の天井画・木造慈恵大師坐像(じえだいしざぞう)・木造毘沙門天立像(びしゃもんてんりゅうぞう)・木造阿弥陀如来坐像(あみだにょらいざぞう)・深大寺縁起など多くの文化財を所蔵しています。平成27年度には、釈迦如来倚像が納められていた厨子(ずし)が工芸品としての価値を認められ、調布市教育委員会の諮問に対する調布市文化財保護審議会の答申を経て、市の有形文化財に指定されました。  多摩地域の国宝  国宝とは、重要文化財のうち、世界文化の見地から特に価値の高いものを国(文部科学大臣)が指定したものです。  現在、国宝となっているすべての文化財は、文化財保護法施行後に指定されたもので、戦後の国宝第1号は、京都市太秦広隆寺(うずまさこうりゅうじ)の木造弥勒菩薩半跏像(みろくぼさつはんかぞう)です。平成29年3月1日現在、国の重要文化財に指定されている彫刻は2,699件、国宝は131件です。  多摩地域では、赤絲威鎧(あかいとおどしよろい)(青梅市御嶽神社蔵・平安時代・美術工芸品)、円文螺鈿鏡鞍(青梅市御嶽神社蔵・鎌倉時代・美術工芸品)、紙本墨画禅機図断簡(しほんぼくがぜんきずだんかん)(町田市石橋財団蔵・中国元時代・美術工芸品)、正福寺地蔵堂(しょうふくじじぞうどう)(東村山市・室町時代・建造物)が国宝指定されています。 深大寺・張堂(ちょうどう)完俊(かんしゅん)住職  いま深大寺は、寺中も地域社会も、栄えある国宝指定の高揚感に包まれています。今回の件で取材の新聞記者の「以前とは境内の雰囲気が変わっています」という一言が印象に残っていますが、それは国宝仏の尊格というものだと思います。何しろ寺伝来の仏像では東京で唯一、関東でも二体だけなのです。  今にして思えば、昨年ローマの日本仏像展では、わが国を代表して出陳、その時の白鳳仏の満面の微笑は、国宝になる予感を私に感じさせてあまりある輝きでした。  やがて深大寺は開創千三百年の記念の年(注)を迎えますが、今般の国宝指定は、この上ない象徴になることと思っています。 (注)深大寺開創1300年=2033年 調布市教育委員会・郷土博物館から  深大寺白鳳仏の重要性が名実ともに高く評価され、大変喜ばしく誇りに思います。市内には、史跡や天然記念物などを含め71件の指定文化財があります。  今後も、地域の宝である文化財を守り、後世に伝えて参ります。 ◆今後の市の取り組み  深大寺と共催で、「国宝白鳳仏展(仮称)」の開催、その他随時講演会・見学会の実施などを予定しています。