陳情文書表 (令和3年6月1日受理) 受理番号 陳情第49号 件名 福島原発におけるALPS処理水海洋放出に関して意見書の提出を求める陳情 提出者の住所・氏名 (注)非公開情報 付託委員会 建設委員会 (注)原文のまま記載 東日本大震災が起こってから10年。大震災にともなって発生した、東京電力福島第一原子力発電所(福島第一原発)の事故からも10年になります。 政府は、「復興と廃炉の両立」を方針として、さまざまな取り組みを進めてきましたが、課題のひとつである「ALPS処理水」の処分方法を海洋放出とすることに決定いたしました。 福島第一原発の原子炉内には、原発事故により溶けて固まった燃料である「燃料デブリ」が残っており、冷却するために水がかけられています。この時、燃料デブリに触れた水は、高い濃度の放射性物質を含んだ「汚染水」になります。これらの汚染水には、多核種除去設備「ALPS(アルプス)」と呼ばれる除去設備など、いくつかの設備を使用した浄化処理がおこなわれています。こうした浄化処理を経て、放射性物質の大部分を除去した水が「ALPS処理水」です。 しかし、ALPSをもってしても、「トリチウム」という放射性物質は取り除くことはできません。 このALPS処理水の処分方法について、今後どうするべきかについて検討が始められたのは、2013年のこと。以降6年以上にわたって、専門家や有識者が、技術的観点と社会的観点から議論を重ねてきました。議論は2020年2月に「報告書」のかたちで取りまとめられ、国際原子力機関(IAEA)から、ALPS処理水海洋放出が「科学的な根拠に基づくものである」という評価を受けています。 トリチウムとは水素の原子核にさらに中性子1個が加わり、質量数が3となるのがトリチウム(T)で三重水素とも呼ばれています。地球環境においては一定量が酸素と結びついて水中や大気中に存在しています。例えば体重60キロの人の場合50ベクレル程度のトリチウムを保有しています。 現在地下水が毎日150㎥発生しALPS処理水115万6千㎥が保管され、ALPSでの処理前等を含めると総計で128万㎥となります。それらを貯め置くタンクの92%がすでに埋まっておりなお増え続けるため年間およそ100基(2019年121基2020年80基)が新設されています。 敷地拡張も限界でタンク保管を永久に継続拡大することは不可能であり、また仮設タンクは耐震性は担保されているが、もう一度同じ規模以上の災害が起きて万が一破損すればその災禍からの復旧は今よりさらに困難な状況を作り出しかねない状況です。 アメリカにおける事例:スリーマイル島原発事故においては、約2.43×1013Bq(24.3兆ベクレル)のトリチウム(約8,700㎥)が大気中への水蒸気放出により処分されました。 フランスにおける事例:ラ・アーグ再処理工場におけるトリチウムの放出量は、液体で年間約1.2×1016Bq(1.6京ベクレル)と気体で約7.0×1013Bq(70兆ベクレル)です。 もちろんその他の国でも、原発の通常運転時に排出されるトリチウムは、海洋放出されています。 国内の事例:東海再処理施設では30年間で総計4500兆ベクレルを海洋放出しています。 過去の事例:福島原発も事故前の2009年には年間2兆ベクレルを海に放出していました。 アメリカの原発事故後の放出やフランスの再処理施設での放出と今回決定した海洋への放出とはどう違うのでしょうか? 原発の通常運転でもトリチウムが発生するため、基準値以下に薄めて海に放出するのが世界一般のやり方です。韓国では総量として、毎年約50兆Bq(ベクレル)~150兆Bqのトリチウムが液体・気体状態で原子力発電所から安全に排出され、国民の理解を得られています。 特に古里原発(釜山中心部から約30キロ)では2016年にトリチウム約36兆ベクレルを海洋放出しましたが、みんな釜山でとれた魚の刺身を食べており、風評被害も起きていません。 フランスの再処理施設でも福島のタンクにある総量860兆ベクレルの15倍の量のトリチウムを1年間に放出していますが問題は生じていません。 このように国内外の原子力施設では普通に放出している処理水を、さらに2年も溜め続けるのか、とは思いますが、方針が明確化されたことは評価するところです。 いまだに、「処理水」を「汚染水」と呼ぶ政治家や報道機関や国があることは、嘆かわしい限りであり、根拠なき風評の温床となっています。また、国内外の原子力施設では普通に放出している処理水放出を、福島原発の場合のみを声高に叫ぶことは、明らかな差別であり愚の骨頂と言わざるを得ません。 声高に叫ぶ理由はわかります。いくら科学的には安全であろうとも、「事故を起こした原発からの処理水」に対して素朴な不安や疑念を感じてしまうのは自然な感情の一面です。そうした感情を科学的な安全性で否定されることに、「冷たい」「不愉快だ」と感じる方も少なくないかもしれません。 しかし一方で、客観的事実に耳を塞ぎ続け、感情に過剰に「寄り添う」ことは、不当な差別や風評の正当化と固定化につながりかねない危険なものです。 どんなに対策を重ね、事実や成果を積み重ね、科学的な事実が明らかにされようとも「福島は事故を起こしたから汚染されている」と否定されることは、過去の歴史のあらゆるところで差別を容認、緩和してきたことを繰り返すことになります。 科学、ひいては客観的な事実や証拠を「振りかざす」などとネガティブに捉えて、人間の「素朴な感情」の正当性や無謬性を過信するべきではありません。 すでに事実がほぼ明らかになっています。 これからも、終わらせるべき議論を終わらせず、「誰もが納得し安心できるまで念のため警戒すべき」と保留し続けること自体が、当事者をさらに苦しめ、偏見を長期化・固定化し、損害をますます大きくします。 このままでは、処理水問題は莫大なリソースを浪費した末に、その代償は国民へとかかってくることが避けられません。「なんとなく不安だから」という根拠で、処理すべきものを処理せず溜め込むことにより、数十兆円規模にまで今後膨らむと言われるコストを、国民が電気料金や税金などで全て負担することにもなりかねません。 健康リスクを上昇させない「処理水」を海洋放出することで懸念されるのは、科学的に観測できる「汚染」ではなく、人の感情の問題、偏見と風評被害の拡大です。 今一番になすべきことは、「説明が不十分」「風評被害がおきる」など、不安や風評被害を煽る事ではなく、問題解決に向けて冷静に知恵を出し合うことです。 よって本陳情では、下記の事項を国に求めます。 記 1、漁業者・国民に対して今まで以上に責任ある説明を継続すること。 1、風評被害に対して、その対策を講じると共に、保障に対しても真摯に取り組むこと。 1、ALPS処理水放出の安全性を厳格に担保すると共に、新たな技術探求も推進すること。 1、正しい知見や客観性に基づいた報道や発言を、関係機関や関係者に求めること。 1、IAEAの協力のもと、世界各国に対しても丁寧に説明すること。 以上 福島原発におけるALPS処理水の海洋放出に関して、国に対して意見書を提出していただくよう陳情いたします。