陳情文書表 (平成31年2月26日受理) 受理番号 陳情第101号 件名 地方自治体における自衛官募集の取り扱いに関する陳情 提出者の住所・氏名 (注)非公開情報 付託委員会 総務委員会 最近、安倍首相は、自民党大会での演説や国会答弁の中で、6割以上の自治体が自衛官募集への協力を拒否しているとし、9条に自衛隊を明記すればこの状況が変わるだろうと述べた。首相は全ての自治体に自衛官募集のための個人情報の提供を強制し自衛官応募者をふやすために9条改憲が必要だとの認識を示したのである。 安倍首相が言う自衛官募集への協力とは具体的に何を指すのか。現在、防衛省は自衛官採用活動に役立てるため、主に18歳と22歳の住民の住所・氏名・生年月日・性別の情報を紙または電子媒体で提供するよう自治体に要請しているという。これに対し実際は90%の自治体が住民基本台帳の個人情報を何らかの形で提供しているが、そのうち紙または電子媒体で提供している自治体が全体の約36%となっている。つまり安倍首相は紙または電子媒体で個人情報を提供しない64%は協力拒否と位置づけ、その状況を変えるために9条改憲を訴えたのである。 さらに自民党本部は、安倍首相の発言に呼応して、党所属議員に「自衛官募集に対する地方公共団体の協力に関するお願い」と題する文書を配付し、選挙区内の自治体の状況を確認し募集事務の適正な執行ヘの協力を呼びかけ、国会議員の力を利用して地方自治体へ働きかけようとしている。 そもそも自衛隊法は、防衛大臣が地方自治体に協力を求めることができるとしているが、自治体がそれに応ずる義務は定められていない。その法的事実を無視して安倍首相と自民党が地方自治体に協力を強制することは、法治国家においてあるまじき行為であり、断じて許されない。 このような目的のために9条改憲をもし許すならば、第1に、地方自治体が管理する基本的な個人情報が本人の同意なしに政府に全て提供され、個人のプライバシーを守る権利が根本的に侵害されることになる。具体的には自衛官任官適齢期に当たる全ての男女青年の住所・氏名等が自衛隊に提供され、自衛官応募が強力に働きかけられる状況が生まれる。それは、戦前・戦中に市区町村の役場が全ての個人情報を管理し適齢期に達した者の徴兵検査を行い、その中から必要に応じて有無を言わさず徴兵を行った状況をほうふつとさせるものである。 第2に、地方自治体が地方自治の精神に基づき住民の暮らしと権利を守るために地域の状況に応じた自治を行う権利を奪い、地方自治体を全て国家の命令のもとに動かすことができるようになる。これまた戦中・戦時の地方政治の姿をほうふつとさせるものである。 今まで9条を変えても何も変わらないと言ってきた安倍首相のこのたびの発言は、はしなくも安倍首相の9条改憲の狙いの本音を明らかにしたものである。9条を変えても何も変わらないどころか、9条改憲が限りない個人の権利の侵害、地方自治の破壊をもたらすことが明白となった。安倍首相が狙うこのような9条改憲に強く反対する。 改憲が実現しない段階においても、個人の権利の侵害、地方自治の破壊をもたらす自衛官募集に関する地方自治体への協力強制は絶対に許すことはできない。 上記の趣旨に基づき、次のことを陳情いたします。 1 地方自治法第99条に基づき、国に対し、自衛官募集に関し地方自治体に協力を強制するような施策をとらないことを求める意見書を提出すること。 2 調布市においては、個人情報保護の原則にのっとり、自衛隊に対し住民基本台帳等に記載された個人情報の提供を行わないこと。