陳情文書表 (平成29年5月26日受理) 受理番号 陳情第76号 件名 「テロ等準備罪」法案に反対する意見書の提出を求める陳情 付託委員会 総務委員会 「組織犯罪集団に係る実行準備行為を伴う犯罪遂行の計画罪」、略称「テロ等組織犯罪準備罪(以下「テロ等準備罪」)」法が5月19日衆議院法務委員会で強行採決され、23日に衆議院本会議で可決されて、参議院に送付されました。 この「テロ等準備罪」法案は、過去に何度も国会に提出され、市民団体や労働組合などの活動も対象とし、捜査機関による恣意的な運用の危険性や、冤罪をふやす可能性など、重大な問題が指摘され、3度にわたって廃案とされてきた「共謀罪」法案と基本的には変わりません。 我が国の刑事法における処罰の基本原則は、「既遂」「未遂」であり、「予備」や「共謀」は厳格に例外とされてきましたが、「共謀」を罪とすることによって、人と人とが犯罪を遂行する「合意」をしたかどうか、「合意」の内容が犯罪に当たるかどうかの判断が必要になり、そのため捜査機関も、「相談」や「合意」の段階から恣意的な検挙、「盗聴」「盗撮」など、日常的に国民・市民のプライバシーに立ち入って監視する必要に迫られることになります。従来の「共謀罪」法案の名称を「テロ等準備罪」法案に変更し、「団体」を「組織的犯罪集団」と定義し、処罰は「犯罪の実行のための資金または物品の取得その他の準備行為が行われたとき」と説明しても、「計画」、「相談」という「共謀」を処罰するという法案の性質は何ら変わらず、「組織的犯罪集団」を明確に定義することも極めて困難であり、「考えたこと、話し合ったこと自体を処罰の対象にするという意味で、憲法19条(思想・良心の自由)や21条(表現の自由)に反する」憲法違反の法案です。 また政府は、この法案を「国連越境組織犯罪防止条約」締結のための国内法整備に必要と説明していますが、この条約はテロを対象とするものではありませんし、我が国は既にテロ対策に関する13の防止条約を締結しており、現行法でも十分対応できる体制を既に整えていますから、わざわざ「テロ等準備罪」法を制定する必要はありません。 当の国連からは、人権委員会の委嘱を受けた特別報告者ジョセフ・ケナタッチ氏が5月18日付で安倍首相に書簡を送り、この法案が「プライバシーや表現の自由を制約するおそれがある」として,多くの問題点を指摘しています。 これらの状況にもかかわらず「テロ等準備罪」法案を成立させようとする政府の狙いは、「特定秘密保護法」や「安保法制」に反対する国 民・市民、政党,労働組合などの運動の一層の高まりと広がりを抑え込むことにあると言わなければなりません。この5月に安倍首相は「2020年までに憲法9条に自衛隊を明記する」と述べ、我が国の立憲主義、民主主義、人権をじゅうりんする姿勢をあらわにしましたが、「共謀罪」は基本的人権を制約することで、海外で戦争できる国づくりを完成させるために「平和憲法」そのものを変えようとする現代版「治安維持法」とも言うべきものです。 国会での法務大臣らの説明は大臣の資質を疑わせるほどに混乱し、衆議院法務委員会での参考人質疑では「テロ等準備罪」法案への懸念が浮き彫りになるもとで、主権者である国民・市民の多くは「よくわからない」、「必要ない」と考えている状況にあります。にもかかわらず5月19日、衆議院法務委員会で与党などは「審議を尽くした」として強行採決を行ったわけですが、この法律を制定する意義も必要性も全く明らかにされていない中での採決は不当です。 私たちは、国民・市民の生活と権利に重大な不安を及ぼす「テロ等準備罪」法案に反対するとともに、これが徹底審議抜きに強行採決で成立を見る事態は決して容認できません。 既に57の地方議会が、この法案に対する反対、あるいは慎重審議を求める意見書を提出しています(5月22日現在)。私たちは、「住民福祉の増進」を使命とする調布市議会が下記について議決されるよう陳情いたします。 記 1 調布市議会として、内閣総理大臣、衆議院議長、参議院議長及び両院法務委員会委員長に対して、「テロ等準備罪」法案に反対する旨の意見書を提出すること。