陳情文書表 (平成29年5月26日受理) 受理番号 陳情第79号 件名 「共謀罪」(テロ等準備罪)法案の廃案を求める意見書に関する陳情 付託委員会 総務委員会 (要旨) 調布市議会において、地方自治法第99条に基づき、現在国会で審議されている「テロ等準備罪」法案(組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律等の一部を改正する法律案)の廃案を求める意見書を採択し、国会に提出してください。 (理由) 現在国会で審議されているテロ等準備罪(以下「共謀罪」といいます)は、以下のとおり憲法に違反し、日本を監視社会化して国民を萎縮させ、自由を奪うものです。 「共謀罪」は、犯罪についての計画・話し合いの段階でこれを犯罪として、内心を処罰の対象とするものです。これは、思想・良心の自由を保障した憲法19条に反します。 国民には、生命・自由が保障されています(憲法13条)。国家による刑罰は、この国民の生命・自由を直接的に奪うものですから、本来謙抑的に行使されなければなりません。これは近代刑法の大原則です。 しかし、「共謀罪」は、計画・話し合いをしただけで犯罪が成立し、実際のその犯罪行為に出なくても「準備行為」があったとみなされれば処罰の対象となります。これは、極めて広範な国民の行為が捜査・刑罰の対象となることを意味します。 政府は「準備行為」を処罰の条件として対象を限定したと言いますが、行為そのものとしては全く危険性のない預金をおろす行為や電車に乗る行為などの日常的な行為までもが、捜査機関の判断次第で「資金の準備」や犯罪の「下見」としての準備行為とみなされる可能性があるのが「共謀罪」法案です。「準備行為」という条件には意味がありません。 また、政府は「一般市民は対象にならない」と言いますが、安倍首相は「まさにそもそもの目的が正常な目的だったとしても、その段階で一変しているわけでありまして、一変している以上、これは組織的犯罪集団であると認めるのは当然のこと」と述べていますから、一般市民でも「一変」したと判断されれば、「共謀罪」の対象とみなされることになります。そして、「一変」したかどうかは、捜査機関が判断するわけですから、一般市民は対象にならないという政府の言い分には何の根拠もありません。 計画があったかどうか、つまり話し合ったかどうかが「共謀罪」成立の判断基準ですから、情報収集目的で市民の生活が捜査機関により監視される危険性が高まることは明らかです。盗聴・監視カメラなどの捜査手法が広範に用いられたり、メール、LINE、ツイッターなどのコミュニケーションツールが監視の対象になったりする危険性が否定できません。 政府はテロ犯罪抑止のために「共謀罪」の成立が必要だと言いますが、日本は、テロ犯罪防止のための国連の主要な13条約全てを批准しています。また、国内法としても、既に重大な犯罪については予備・共謀罪があるなど、重大な組織犯罪、テロ犯罪は未遂以前の段階でおおむね処罰可能なのです。テロ犯罪抑止のためという政府の主張は成り立ちません。 以上のとおり、「共謀罪」法案は必要性がないだけでなく、これが成立した場合には、広範な市民の日常生活が監視の対象となり、これにより国民に萎縮効果が生まれ、物言えない社会になってしまうことは明らかです。 国連のプライバシー権に関する特別報告者ジョセフ・ケナタッチ氏からも、「共謀罪」法案について、テロと無関係の犯罪が対象とされていること、組織的犯罪集団の定義が曖昧であること、「計画」と「準備行為」の明確な定義もないこと、計画等を立証するためには事前の監視が必要であり、プライバシー侵害の懸念があることなど多くの問題点が指摘された書簡が安倍首相宛てに送られています。 また、国内でも少なくとも全国で57の地方議会が「共謀罪」に反対、あるいは慎重な審議を求める意見書を国に送っています。 調布市議会におかれましては、地方自治法第99条に基づき、「共謀罪」成立に反対する意見書を採択し、国会に提出されたく、陳情いたします。