第5章 計画の推進 1 計画の進行管理 この計画で定めた各年度のサービスの必要見込み量及び目標値に対する達成状況については,毎年,調布市障害者地域自立支援協議会に報告し,点検・評価を行います。 障害福祉計画におけるPDCAサイクルイメージ P:計画(Plan)。計画の作成を障害福祉計画作成委員会が行います。 PからDへ進む。 D:実行(Do)。計画の内容を踏まえた事業の実施。 DからCへ進む。 C:評価(Check)。実績の把握及び分析・評価を障害者地域自立支援協議会が行います。 CからAへ進む。 A:改善(Act)。評価等の結果を踏まえ,必要に応じて計画の見直し等。 AからPへ戻り、PDCAのサイクルになります。 また,計画の根拠となる「障害者総合支援法」は,平成25年4月の施行後3年を目途に見直しを行うとされていることから,その状況にあわせて本計画の期間中に計画の内容等を見直すことも想定されます。 調布市障害者地域自立支援協議会の構成 全体会が,以下4つの組織とそれぞれ連携をしています。 ・ ドルチェワーキング ・ ちょうふだぞうワーキング ・ 希望ヶ丘ワーキング ・ サービスのあり方検討会 2 計画の推進体制(重点事業) これまでに述べた障害者総合支援法及び児童福祉法に基づくサービスのほか,現行「調布市障害者総合計画」を策定した平成24年3月以降の障害者福祉制度改革にも対応し, 「調布市障害者総合計画」を補うものとして,以下に掲げる事業を第4期計画期間中の 調布市における障害者福祉の総合的な推進に係る重点事業とし,一層の施策の推進を図ります。 (1)相談支援体制の整備 年齢やライフステージの切れ目なく障害者が安心した地域生活をおくれるよう,基幹相談支援センターを中心に,地域における総合的な相談支援体制の強化を図ります。 ・基幹相談支援センター(障害福祉課) 役割:相談支援の中核的な役割,地域の相談支援専門員のスーパービジョン,人材育成, 広域的な調整,ネットワーク構築 ・こころの健康支援センター(精神障害,発達障害) ・子ども発達センター(障害児,子どもの発達相談) 障害者相談支援事業所(地域生活支援事業) ・ 障害者地域活動支援センタードルチェ(身体障害,高次脳機能障害) ・ 障害者地域生活・就労支援センターちょうふだぞう(知的障害) ・ 地域生活支援センター希望ヶ丘(精神障害) (2)福祉人材育成拠点の整備 調布市障害者地域自立支援協議会のワーキンググループ(ドルチェワーキング)において「障害者の在宅支援」について検討し,市内の事業所訪問やアンケート調査の実施を経て,福祉人材の確保・育成の課題の整理及び課題解決に向けた議論を行いました。 これらを踏まえ,市民が一人ひとりの特性に応じて福祉サービスを利用し,豊かな地域生活を送れるよう,専門性を備えた良質な福祉人材の確保及び育成を総合的に推進するため,以下の5つの基本方針をもとに,福祉人材育成拠点を平成27年度に整備します。 拠点での人材育成を通じて,福祉サービス等の量的な確保と質の向上を図ります。また,運営にあたっては,障害のある当事者や家族を含めた運営委員会を設置し,市民ニーズに沿った事業展開を図るとともに,事業全体を通じて当事者の参画を推進します。 ○ 福祉人材の養成 ・ 福祉人材養成による人材の量的確保 ・ 専門資格取得ほか多様な人材養成 ・ 事業所とのマッチング等,人材とサービスを結びつける取組 ○ 専門性の向上 ・ 事業所職員に対する専門研修 ・ キャリアアップの仕組み構築 ○ 市民参入に向けた普及啓発 ・ 福祉・介護サービスの周知,理解促進 ・ 潜在的有資格者の掘り起し ・ 高齢有資格者・定年退職者の活用 ・ 市民の生きがい創出 ○ 事業所間,職員間のネットワーク形成 ・ 情報交換・共有できる場の提供 ・ 従事者同士が支え合う体制構築 ○ 障害者参画による事業推進 ・ 運営への参画 ・ 養成研修講師としての参画 ・ 障害当事者対象研修の実施 (3)障害者の就労支援 障害者が一般就労し,安心して働きつづけることができるよう,市内2か所の障害者就労支援センターを中心に,身近な地域において就労面及び生活面の支援を一体的に提供し,障害者の就労の促進を図ります。 調布市内の障害者就労支援センターは以下の2つです。 ・ 障害者地域生活・就労支援センターちょうふだぞう(主に身体障害,知的障害) ・ こころの健康支援センター 就労支援室ライズ(主に精神障害,発達障害) また,就労移行支援事業所との定期的な連絡会の実施等の連携によるネットワーク強化や,企業向けセミナーの実施など,企業への働きかけによる職場開拓にも努めます。 一方で,就労支援は就職した時点で完結するものではなく,安定した就労を継続していくための支援も重要です。本人の支援だけでなく,職場を訪問し,企業へ本人の障害特性の理解や支援方法の助言を行うなど,職場でのトラブル等を未然に防止または早期に解決するための「職場定着支援」も推進していきます。 障害者就労支援センターの利用者数は年々増加しており,「職場定着支援」を行っている利用者も増えています。今後も必要な支援を継続していけるよう,必要な人員の確保等, 障害者就労支援センターの支援体制の充実を図っていきます。 (4)入所施設等から地域生活への移行 地域生活への移行を希望する施設入所者や精神病院の長期入院患者に対し,移行を円滑に支援するため,グループホーム等とのマッチングや移行後のアフターケアの仕組みづくりを促進します。 調布市障害者地域自立支援協議会では,障害者の地域生活への移行について,「ちょうふだぞうワーキング」では入所施設で生活する知的障害者の地域移行,「希望ヶ丘ワーキング」では精神科病院に長期入院している精神障害者の退院促進・地域移行をテーマに議論を進めてきました。 グループホームの整備による地域における居住の場の確保とともに,障害のある人が暮らしやすい地域づくりを進めるために,法に基づく障害福祉サービスなど,福祉分野の社会資源だけでなく,生活の幅を広げる余暇活動の充実のため,図書館,公民館や地域のサークル活動など,地域の資源(ソーシャルリソース)について,障害者がより多様な活動に参加できるための検討を行っていきます。 (5)工賃向上への取り組み 平成25年4月に「障害者優先調達推進法」(国等による障害者就労施設等からの物品等の調達の推進等に関する法律)が施行され,地方公共団体では,障害者就労施設等の受注機会の増大を図るための措置を講ずるよう努めることとなりました。 調布市では,平成25年10月より,同法に基づき,障害者就労施設等からの物品等の調達方針を作成し,特に市内の障害者就労施設を優先して全庁的に物品などを調達しています。平成25年度には,全庁で合計141件,1億4,600万円円の調達実績がありました。調達方針は年度ごとに作成し,平成26年度も同様に調達方針を作成しています。 また,市内の作業所等が共同して製品販路,受注先開拓,製品受注及び製品開発等に取り組むネットワーク(作業所等経営ネットワーク)の構築やその活動に対して補助を行い,就労意欲と工賃水準の向上の支援を行っています。 今後も障害者就労施設等の受注の機会の増大を図り,作業所等で働く障害者の就労意欲と工賃水準の向上を通じて,地域で自立した生活を実現するために,これらの取り組みを一層推進していきます。 (6)障害者虐待の防止 平成24年10月に障害者虐待防止法(障害者虐待の防止,障害者の養護者に対する支援等に関する法律)が施行されました。調布市では,障害者虐待の未然防止や早期発見,迅速な対応,その後の適切な支援を行う「障害者虐待防止センター」を障害福祉課内に設置しています。 障害者虐待防止センターにて,障害者虐待に関する知識・理解の普及啓発,養護者支援による虐待防止,虐待防止ネットワークの構築など障害者虐待防止の体制整備の強化を図ります。 また,障害福祉サービス等を提供する事業所に対して,虐待の防止を含めた適切な支援の質の確保のため,助言,指導等を行っていきます。 (7)障害理解の促進 平成25年6月に「障害者差別解消法」(障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律)が国会で成立し,平成28年4月1日に施行されます。「第4期調布市障害福祉計画」は,この法律の成立後初めての調布市の障害者福祉に関する計画となります。 調布市では,障害者に対する理解の促進と法の普及に向けて,職員の意識改革に取り組むほか,関係機関との連携を図るとともに,市民に対する啓発活動を行っていきます。   コラム この調布で生きる 第4期調布市障害者福祉計画策定に今回も参加させて戴いて,嬉しく思います。参加委員の実生活に基づいた発言に,私も改めて学べさせて戴いた委員会でした。また,パブリックコメント1つ1つ丁寧に答えるなど,誠実な対応の市に敬意を表します。今回の計画は,日本が障害者権利条約を批准して初めての調布市の障害者関係の計画です。障害者が,この調布で,同年代の市民と同じ権利を持って暮らせているか,障害者権利条約は,その規範を示したものです。そうした意味からは,課題も残りました。いわゆる「65歳問題」介護保険と障害者福祉制度の関係は数値には表れませんが,高齢化社会が進むにあたり大きな課題です。グループホームも数だけの問題でなく,いろいろな形態が用意されるべきです。自分にあった住まいを選ぶことが出来る,障害者権利条約に照らせば,当然の事です。しかし,調布では,数が足りないのが現状です。その他,残された課題は沢山あります。3年後,障害者計画改定とともに見直される時は,数値だけでなく,より障害者の実生活を反映した計画を期待します。障害者権利条約を批准した日本で,調布で,生活する障害者ひとりひとりが,権利の主体者として生きる実践を積み上げて。 市橋 博(本計画作成委員)  「障害者差別解消法」(共生社会の実現へ向けて) この法律は,すべての国民が,障害の有無によって分け隔てられることなく,相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会(共生社会)の実現に向け,障害を理由とする差別の解消を推進することを目的としています。 この法律において,「差別」とは大きく分けて次の2つを意味します。 @不当な差別的取扱い 障害を理由として,正当な理由なく,サービスの提供を拒否したり,制限したり,条件を付けたりするような行為を言います。 A「合理的配慮」を提供しないこと 障害のある人がそれぞれの場面で必要とする場合に,負担になり過ぎない範囲で,社会的障壁を取り除くためにその人の障害に応じた適当な変更や調整,サービス提供などの配慮(必要で合理的な配慮)を行うことが求められます。 例:段差解消のためのスロープ等の設置, 障害特性に応じたコミュニケーション手段(筆談,読み上げなど)での対応, 知的障害者向けにルビをふった書類の作成 ・ どのような配慮が「合理的配慮」にあたるかは,個別のケースで異なります。 ・ 負担が大きくなりすぎる場合には,できる範囲で他の方法ややり方を考えます。 これらの差別が,行政や民間事業者で禁止されます。 対応について,以下のようにまとめます。 国の行政機関・地方公共団体等では,不当な差別的取り扱いが禁止され, 障害者への合理的配慮については法的義務として行わなければなりません。 民間事業者では,不当な差別的取り扱いが禁止され, 障害者への合理的配慮については努力義務として行うよう努めなければなりません。 ※民間事業者には,個人事業者,NPO等の非営利事業者も含みます。 ○ 「障害者の権利に関する条約」の批准について 平成18年に国連で採択された「障害者の権利に関する条約」について,日本国内では, 同条約の締結に先立ち,国内法制度改革を進めていくこととされました。その後, 障害者基本法の改正(平成23年8月),障害者総合支援法の成立(平成24年6月), 障害者虐待防止法の成立(平成24年8月)などを経て,この障害者差別解消法の成立をもって,締結のためのひととおりの国内法の整備がなされたことから,日本でも平成26年1月に条約が批准されました。日本は140番目の締約国となります。