第3章 障害者施策の理念・基本的考え方 障害者施策を推進していくにあたって,その推進の目標(ゴール)となる「あるべき姿(理念)」や施策推進の考え方を,次のように定めます。これは前障害者計画を継承しています。 1 障害者施策の理念 ノーマライゼーションと社会参加の推進 市民一人ひとりが,尊重され,社会・経済・文化活動などあらゆる分野の社会活動において参加や利便が配慮されている地域社会の実現を図ります。 (注)ノーマライゼーションの理念は1950年代に北欧で提唱された考え方で,障害のある方,高齢者や児童など,なんらかの支援を要する人たちが,地域の中でともに生きていく社会があたりまえの社会であるという理念をいいます。 権利の擁護 市民一人ひとりが,生きがいを持っていきいきと健康に暮らし,社会の役にたちたい,楽しいことをしたいなど主体的な生活者として様々な要求を持ち,その実現を望むことを基本的な権利として擁護します。 自己決定の尊重と選択性の保障 自分の暮らし方やその人生のありようを自らが決める,いわゆる自己決定の権利を最大限に尊重します。またこれを実現するためには,決定するための多様な選択肢が用意されていることが重要であり,そのうえで,本人自身が望むサービスを選択し,決定することができるよう支援します。 生活の質の向上を図るサービスの確保 人が,その人生をより豊かに,充実したものとするためには,安全,快適,人間らしさなど一人ひとりの生活の質が問われます。市民一人ひとりが豊かさを実感できるよう,公的なサービスだけでなく,企業やボランティア等,多様なサービスを総合的かつ効率的に提供できる体制の構築を図ります。 2 障害者施策推進の基本的考え方 「その人らしい自立した生活の充実」 障害の種別や程度に関わらず,その人にとってかけがえのない人生を,自らがその主人公として,地域社会の人々とともに暮らす中で,充実させていくことを意味します。 視点1 一人ひとりのニーズに応じた支援 人は皆,それぞれ違う生活スタイルや価値観を持っており,多様な個性を持った存在です。その人にとっての適切な支援を追求していかなければなりません。またニーズとは,他の誰でもない利用者本人のニーズを出発点とすることが重要です。 視点2 どのライフステージにも対応した生涯支援  乳幼児期,学齢期,成人期,高齢期等,ライフステージのどの段階でも,その人にとっての適切な支援を展開していかなければなりません。一人ひとりのかけがえのない人生を支えていくためには,特に,ライフステージの転換のときに,もれなく制度の切れ目がないように(シームレスに),しっかりと支えていくことを基本に,様々な施策を展開します。もちろん,乳幼児期からの障害だけではなく,ライフステージのどの段階で障害を持った場合(中途障害)でも,その生涯支援を考えていく視点を持ちます。 視点3 ともに暮らす地域社会の実現  市民全体が,互いの人格と個性を尊重しあう社会を構築していかなければなりません。今日の世界的な動向として,「生活のしづらさ」をもたらす大きな要因に「社会的な障壁」の存在があることが着目されています。それは段差などの物理的な障壁だけではなく,文化・情報面での障壁,意識上の障壁(心の壁)等,ハード・ソフト合わせた障壁です。このような環境によっても「障害」が発生するのであれば,まさに「地域の環境づくり」が重要となります。「まちが変わる,人と人とがふれあう」,これを障害者施策推進の大きな方向性とします。 (注)改正された障害者基本法では,社会的障壁とは「障害がある者にとつて日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のものをいう」とされます。また法では、社会的障壁の除去について、「必要かつ合理的な配慮」がなされることを求めています。  なお「合理的配慮」とは難しい概念ですが,例えば「障害者の権利に関する条約」の外務省仮訳によれば,「障害者が他の者と平等にすべての人権及び基本的自由を享有し、又は行使することを確保するための必要かつ適当な変更及び調整であって、特定の場合において必要とされるものであり、かつ、均衡を失した又は過度の負担を課さないものをいう」とされます。