(答申第2号) 答 申 1 審査会の結論  処分庁が,令和3年9月2日付け3調都街発第1550001号で「調布市との協議事項(2021年7月27日)」を全部公開決定とした処分及び同日付け3調都街発第1550002号で「沿線都区市打合せ資料(7月5日開催)」を一部公開決定とした処分は,妥当である。 2 本件の経緯 年月日  経緯 令和3年 8月12日  審査請求人は,調布市情報公開条例(平成11年調布市条例第19号。以下「本条例」という。)第6条第1項の規定により,市政情報公開請求書を処分庁に提出し,「調布市が保有する東京外環道事業に関する文書,写真,Eメール等で2021年6月11~8月12日の期間に調布市が作成したり外部から入手したり,外部に提供した情報一式 電子データを含む」の公開請求(以下「本件請求」という。)を行った。  処分庁は,同日付けで本件市政情報公開請求書(以下「本件請求書」という。)を受理した。   同年 8月26日  処分庁は,本件請求について,本条例第12条第2項の規定により公開決定等期間延長の通知を行った。   同年 9月 2日  処分庁は,本件請求について,本条例第11条第1項の規定により市政情報公開決定処分及び市政情報一部公開決定処分(以下「本件処分」という。)を行った。   同年11月30日  審査請求人は,本件処分を不服とし,審査請求書(以下「本件審査請求書」という。)を審査庁に送付し,行政不服審査法(平成26年法律第 68号。以下「法」という。)第2条の規定により,審査請求(以下「本件審査請求」という。)を行った。  審査庁は,同日付けで本件審査請求書を受理した。   同年12月28日  処分庁は,法第29条の規定により,弁明書(以下「本件弁明書」という。)及び証拠物件等を審査庁に提出した。  審査庁は,同日付けで本件弁明書及び証拠物件等を受理した。 令和4年 2月 3日  審査請求人は,法第30条の規定により,反論書(以下「本件反論書」という。)を審査庁に提出した。  審査庁は,同日付けで本件反論書を受理した。   同年 3月18日  審査庁は,期限内に処分庁から再弁明書の提出がなかったことから審理を終結し,本条例第19条の2第1項の規定により,調布市情報公開審査会(以下「当審査会」という。)に諮問(以下「本件諮問」という。)を行い,諮問書とともに本件審査請求書,本件弁明書及び本件反論書の写し(以下「本件諮問書等」という。)を当審査会に提出した。  当審査会は,同日付けで本件諮問書等を受理した。 3 本件審査請求の内容 (1) 本件審査請求の趣旨  調布市長が審査請求人に対し行った本件処分を取り消すとの採決を求める。 (2) 本件審査請求の理由   ア 本件審査請求書における主張     審査請求人の本件審査請求書における主張はおおむね以下のとおりである。    (ア) 文書の特定について  審査請求人が行っている,対象とする期間の異なった本件請求と同様の請求件名での市政情報公開請求において,公開される電子メールはほとんどなく,公開される電子メール以外の文書も非常に少ないことから,処分庁において請求に該当する文書のすべてを特定し,処分の決定が行われていたか疑わしい。公開された文書以外にも公開すべき文書があるはずである。    (イ) 公文書管理について  処分庁からの説明によると,電子メールについては「メールサーバの容量に限りがあるため,すぐに削除している」という取扱いをしており,公文書管理上問題がある。    (ウ) 一部公開における非公開部分について      審査請求人は,一部公開決定とした文書における非公開部分について争っていない。   イ 本件反論書における主張     審査請求人の本件反論書における主張はおおむね以下のとおりである。 (ア) 文書の特定について  全部公開された「調布市との協議事項(2021年7月27日)」という文書は,市民団体が作成し,令和3年7月20日頃に市民団体から処分庁へ電子メールに添付されて送信されたようであるが,電子メール本文については公開されていない。また,令和3年7月30日頃に「調布市と住民連絡会との面談記録(概要)」という文書が,電子メールに添付され市民団体から処分庁の面談出席者に届くように複数のアドレス宛に送られているようであるが,この文書及び電子メールについても公開されていない。さらに,前記の文書以外にも公開対象であるべき文書がある可能性はある。特に,東京外環道事業者や沿線自治体等とやりとりをしている情報ははるかに多いものと推測する。  また,本件弁明書では「本件情報公開請求の対象となる文書の存否を確認するため,執務室等の行政文書を保管する場所及びコンピュータ上の電子ファイルを改めて探索したが,新たに見つかったものはなかった。」とあるが,本件弁明書が作成される時点で「改めて探索」し,新たに見つかった文書等がなかったとしても,その間に削除された電子メール等が存在する可能性があり,本件処分が適切にされたとまでは言えない。 (イ) 公文書管理について  前記「調布市と住民連絡会との面談記録(概要)」は,重要な内容を含む文書であり,それがデータでも,紙に印刷された形でも保存されてないことは問題である。  また,本件弁明書では「改めて探索したが,新たに見つかったものはなかった。」とあるが,前記(ア)のとおり令和3年7月30日頃に市民団体から電子メールが送信されていたと思われる職員のコンピュータ上の電子ファイルを探索されたのかが明確にされていない。   ウ 本条例第24条に基づく口頭での意見陳述における主張     審査請求人の口頭での意見陳述における主張はおおむね以下のとおりである。 (ア) 文書の特定について  令和3年度第4回調布市個人情報保護審査会において配付された資料4-2「外環事業における令和2年度以降の市民(個人・団体)からの問合せ,相談及び要望等(以下,「資料4-2」という。)」に記載された「外環被害住民連絡会:27日の面談記録のご送付」という文書の存在は,本件弁明書に述べられている「執務室等の行政文書を保管する場所及びコンピュータ上の電子ファイルを改めて探索したが,新たに見つかったものはなかった。」ことと相違している。「執務室等の行政文書を保管する場所及びコンピュータ上の電子ファイルを改めて探索したが,新たに見つかったものはなかった。」という本件弁明書の記述は信頼することができない。  さらに,本件反論書で指摘している文書以外にも,資料4-2中の「(6月16日付)住民対応メモ」及び「210727 面談メモ」も対象とされるべき文書である。 (イ) 公文書管理について  個人情報をマスキングしていない市政情報公開請求書を関係事業者に送っていた事案において,該当の送信メールは既に削除したとのことだが,本件請求以降に削除しているとしたら,意図的な隠ぺいである。 4 処分庁による本件弁明書等の趣旨   本件弁明書等による処分庁の主張を要約すると,おおむね以下のとおりである。 (1) 弁明の趣旨   「本件審査請求を棄却する」との裁決を求める。 (2) 本件審査請求に対する主張要旨  本件審査請求は,本件処分にかかる文書の特定が不当なものとして処分を取り消すよう求めていることから,次のとおり反論する。   ア 文書の特定について  審査請求人からは,現在に至るまで複数年にわたり,定期的かつ継続的に同様の件名で情報公開請求を受けている。それらの請求を受けてきた中で,対象文書の特定をするために審査請求人に「どういう文書が必要か」という確認をしてきた経緯がある。その経緯の中で,審査請求人が希望している情報は東京外環道事業のうち特に事業主体である国土交通省,東日本高速道路株式会社及び中日本高速道路株式会社の3事業者(以下「3事業者」という。)とのやりとり,または他の自治体とのやりとりに関する情報であり,個人から寄せられた意見等については請求の対象から除くという調整が図られていると認識してきた。本件請求受付時に改めて確認はしていないものの,本件請求においてもその認識の下で対象となる文書を特定した。文書の特定作業については,執務室内の行政文書を保管している場所やコンピュータ上の電子ファイル等を確認している。なお,審査請求人が本件審査請求書等で指摘している文書等については,個人から寄せられた意見等であると判断したため,対象とはしていない。  また,本件審査請求がなされた以降においても,本件請求については請求日時点における判断として前述の認識を前提として請求の範囲を特定しており,対象となる文書の存否を確認するため,執務室等の行政文書を保管する場所及びコンピュータ上の電子ファイルを改めて探索したが,本件処分において対象となったものを除き,対象文書とすべき文書は見つけられなかった。   イ 公文書の管理について  電子メールのメールボックスは,データを長期的に保存するための機能としてではなく,通信手段としての事務処理を行うための一時的な作業領域として運用をしている。このため,メールボックスの容量が限度を超えた場合には,電子メールの送信ができなくなることから,保存・管理する電子メールを選別し,処理が完了した電子メールは随時削除するなどの運用をしている。  ウ 一部公開における非公開部分について  一部公開決定とした文書について,本条例第7条第2号に該当するために非公開とした箇所は,事業者一般社員の氏名及び役職であり,同号に規定する「特定の個人が識別され,又は他の情報と照合することにより識別することができることとなるもの」に該当することから,非公開とすることは適切である。 5 審査会の判断  当審査会は,審査請求人の本件審査請求書,本件反論書及び口頭での意見陳述における主張並びに処分庁の本件弁明書及び理由説明における主張を具体的に検討した結果,以下のように判断する。 (1) 請求の範囲について  本件審査請求では,特定の文書が請求の対象とされるべきであったかという文書の特定について争点となっていることから,請求の範囲について検討する。  まず,本条例第6条では市政情報の公開の請求の方法を定めており,同条第2項第2号に市政情報公開請求書に記載する必要がある事項として「公開を請求しようとする市政情報を特定するために必要な事項」と規定していることから,請求の範囲は,市政情報公開請求書に記載された内容に基づき判断するものである。  次に,市政情報公開請求は,特定の事件関係者に限らず請求できる制度であるから,基本的には,先入観を持たずに通常人の読解力を基準として市政情報公開請求書の記載内容を解釈すべきであって,市政情報公開請求を受けた実施機関で独自に市政情報公開請求書を理解してそこに特定の意味付けを行うことは適当ではない。逆に,文書の存在を応答したことに対して,市政情報公開請求者が独自の解釈に基づく独自の意味付けをしたとしても,それをもって当該請求者の当該解釈ないし意味付けが直ちに是認されるものでもない。  本件の請求する市政情報の件名又は内容は,「調布市が保有する東京外環道事業に関する文書,写真,Eメール等で2021年6月11~8月12日の期間に調布市が作成したり外部から入手したり,外部に提供した情報一式 電子データを含む」である。前述のとおり,市政情報公開請求書の内容は通常人の読解力を基準として解釈すべきであることから,「事業に関する情報」といった場合,「事業自体に関する情報」と解するのが自然であり,「事業自体に関する情報」とは,一般的に事業の計画や進捗,協議,意思決定,結果等,事業の実施に関する情報を指すものと考えられ,事業に付随して実施機関に寄せられた個人からの相談や意見等までをも当然に含むものと解することはできない。  また,本件請求が事業に付随して実施機関に寄せられた個人からの相談や意見等までを含むものであるという意味付けのされた請求であったことを推認するような事実も認められなかった。  以上により,本件請求における請求の範囲は,「東京外環道事業自体に関する情報」であり,事業に付随して実施機関に寄せられた個人からの相談や意見等を含むものではないと判断する。 (2) 本件請求にかかる文書の特定について  本件処分において一部公開された文書は,「沿線都区市打合せ資料(7月5日開催)」であり,その内容は3事業者及び関係自治体との打ち合わせに関する文書であることから,「東京外環道事業自体に関する情報」といえる。また,本件処分において全部公開された文書は,「調布市との協議事項(2021年7月27日)」である。その内容は,市民団体が作成し処分庁に送付した東京外環道事業の計画や進捗に関する市への質問をまとめたものであり,その性質は「東京外環道事業自体に関する情報」に準ずる情報とみなすことができる。  また,審査請求人が本件審査請求書及び本件反論書等で本件請求の対象文書であると主張している文書は,東京外環道事業に附随した個人からの相談や市民団体との面談の記録等であり,その内容は事業の計画や進捗,協議,意思決定,結果等,事業の実施に関する情報ということはできないことから,いずれも「東京外環道事業自体に関する情報」又はそれに準ずる情報とはいえず,本件請求の対象であったと認めることはできない。  さらに,本件請求時における電子メールの運用に関する処分庁の説明等を踏まえると,前記の文書のほかに本件請求に該当する文書は保有していないとする処分庁の説明に,特段不自然,不合理な点があるとはいえず,これを覆すに足りる事情は認められない。  よって,本件請求にかかる文書の特定は,妥当である。 (3) 一部公開における非公開部分について  処分庁は,本件処分の非公開部分のうち,事業者一般社員の氏名及び役職については,本条例第7条第2号に該当すると主張しているので,以下同号について整理する。  原則公開を基本的な考え方とする情報公開請求において,同号は,「個人に関する情報(事業を営む個人の当該事業に関する情報を除く。)であって,特定の個人が識別され,又は他の情報と照合することにより識別することができることとなるもの。」を例外的に非公開とする規定である。しかしながら,同号ただし書ア,イ及びウにおいては,個人の利益保護の観点から非公開とする必要のないものや公益上公にする必要性の認められるものについて,公開することを規定したものである。  その内容としては,同号アにおいて「法令等の規定により又は慣行として公にされ,又は公にすることが予定されている情報」について,同号イにおいて「当該個人が公務員等(国家公務員法(昭和22年法律第120号)第2条第1項に規定する国家公務員(独立行政法人通則法(平成11年法律第 103号)第2条第4項に規定する行政執行法人の役員及び職員を除く。),独立行政法人等(独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律(平成13年法律第140号)第2条第1項に規定する独立行政法人等をいう。以下同じ。)の役員及び職員並びに地方公務員法(昭和25年法律第261号)第2条に規定する地方公務員をいう。)である場合において,当該情報がその職務の遂行に係る情報であるときは,当該情報のうち,当該公務員等の職及び当該職務遂行の内容に係る部分」について,同号ウにおいて「人の生命,健康,生活又は財産を保護するため,公にすることが必要であると認められる情報」について,以上を非公開情報から除くと規定している。非公開箇所は事業者一般社員の氏名及び役職であり,本条例第7条第2号の個人情報に該当するため,非公開とするのが相当である。同号ただし書ア,イ及びウに該当するものではない。  以上のことから,本条例第7条第2号の個人情報に該当するため,非公開とするのが相当である。 (4) 公文書管理について  本件諮問は本条例第19条の2第1項に基づきなされた公開決定等の処分に関する審査請求に係るものであり,当審査会における審査は処分庁の行った本件処分が妥当であったか否かを審査するものである。電子メールの取扱い等の市における公文書管理に関する事項は,調布市文書管理規則(平成16年調布市規則第12号)等において規定されており,その内容や運用については行政において検討されるべきものである。 (5) その他 その他,審査請求人は縷々主張しているが,当審査会の判断に影響を及ぼすものではない。  (6) 結論     よって,「1 審査会の結論」のとおり判断する。 6 当審査会の処理経過   当審査会は,本件諮問について以下のように審査を行った。 年月日 処理経過 令和4年 3月18日 審査庁から提出された本件諮問書等を受理   同年 5月18日 情報公開審査会(令和4年度第2回) 本条例第24条の規定による審査請求人の口頭での意見陳述   同年 7月15日 情報公開審査会(令和4年度第3回) 処分庁の事情聴取   同年 9月29日 情報公開審査会(令和4年度第4回) 審査   同年11月17日 情報公開審査会(令和4年度第5回) 審査 7 調布市情報公開審査会委員 職名 氏名 備考 会長 草川 健 弁護士 副会長 井上 寛 弁護士 委員 稲益 和子 弁護士 委員 佐藤 惠子 市民 ※佐藤委員は,令和4年10月1日に任命を受け,令和4年度第5回情報公開審査会より審議に加わった。 1