陳情文書表(令和5年8月28日受理) 受理番号 陳情第10号 件名 家庭教育支援法を制定しないことを求める意見書についての陳情 提出者の住所・氏名 (注)非公開情報 付託委員会 総務委員会                (注)原文のまま記載 (趣旨) 調布市議会は平成30年の6月議会において、「家庭教育支援法の制定を求める意見書」を賛成多数で採択して、内閣総理大臣、総務大臣、法務大臣、文部科学大臣に対して提出した。この意見書は「家庭教育支援法」の具体的な内容は示さずに、「家庭は、社会と国の基本単位であり、家庭倫理が社会倫理の基盤」という極めてあいまいな主張が中心となっている。この意見書の提出の後にも、この「家庭教育支援法」の内容について深い議論は行われていない。 令和4年10月10日の朝日新聞に、この「家庭教育支援法」は、宗教法人の世界平和統一家庭連合(旧統一教会)が望む法制定であり、旧統一教会とその関連団体が全国で組織的に地方議会に働きかけて政府への意見書の提出を働きかけていたという記事が掲載された。同時にこの内容の意見書を提出した地方議会の一覧が示されているが、この時点では東京都では調布市だけということも紹介されている。その後、この意見書を提出する地方議会が大幅に増えて、「家庭教育支援法」の制定運動が広がったということはない。 本年1月3日の朝日新聞では、この旧統一教会と関連団体の「家庭教育支援法」の制定に向けての活動が詳しく報道された。そこには旧統一教会と関連団体の国際勝共連合が全国の地方議員に対して行った働きかけの内容が生々しく紹介されている。大規模な「全国地方議員研修会」が平成27年から昨年までに6回開催されたことが証言されていて、そのうちの4回は国会内で開かれている。旧統一教会と国際勝共連合は組織の名前を出さずに地方議員に近づいて研修会に勧誘していたという。国の教育の基本にかかわることが、このような特定の宗教団体による姿を隠した活動の主導で行われていたことに私たちは驚きを禁じ得ない。調布市議会が意見書を提出したのも、この研修会の開催と同じ時期である。 旧統一教会と関連団体はかねてから、選択的夫婦別姓制度、同性婚、LGBTへの理解の促進などと激しく対立する主張をしてきたことは広く知られている。この「家庭教育支援法」は柔らかい表現ながらも、その裏にはこれらの社会的弱者や少数者を尊重すること、また男女平等、男女共同参画などに反対する鎧をまとっているといわざるを得ない。 産経新聞は、令和4年9月10日に社説である『主張』で、「旧統一教会と関連団体による「霊感商法」や「合同結婚式」が社会問題化したのは、昭和50年代後半から平成初頭にかけてがピークだったとはいえ、被害は今も続いている。彼らが引き起こした問題への認識が甘過ぎた」と述べて、政権与党である自由民主党に対して、「旧統一教会と自民はきっぱり手を切れ」と主張している。日本社会が旧統一協会とどのような関係であるべきかを示唆する意見としてたいへん重要である。 現在国会では、所得制限のない子育て支援の導入について議論されている。子育てを家庭だけに押し付けるのではなく、社会全体の責任としての子育てが必要だという議論である。またLGBT理解増進法案についても議論されており、家庭のあり方の多様性の尊重が重要になりつつある。旧統一教会と関連団体が推し進めてきた「家庭教育支援法」は、この流れに逆行するものといわざるをえない。 このように政府をあげて「関係を絶つ」と宣言した特定の宗教法人による政治活動であり、その反社会的な宗教活動のために宗教法人の認証の取り消しが検討されている団体が推進してきた「家庭教育支援法」について、調布市議会が政府に対して推進の意見書を提出するのはあまりにも拙速だったといわざるをえない。本来なら「撤回」されるべき意見書だが、制度上それができないので新たな意見書の提出をもって代えたい。 よって、私たちは調布市議会に対して以下の件について陳情いたします。 地方自治法第99条の規定によって、以下の「家庭教育支援法を制定しないことを求める意見書」を、内閣総理大臣、総務大臣、法務大臣、文部科学大臣に対して提出してください。 (家庭教育支援法を制定しないことを求める意見書案) 政府および関係省庁は、国民的な議論がなされていない「家庭教育支援法」を制定しないでください。