通達第2号 令和6年9月26日 各部(局)長  市 長 令和7年度の市政経営に関する基本方針について(通達)  市はこれまでも,市民の安全・安心の確保と市民生活支援を市政の第一の責務とする中で,市民に最も身近な基礎自治体として,市民に寄り添いながら,各種の施策展開を推進してきた。近年は,新型コロナウイルス感染症や,その後の物価高騰に伴う市民生活及び地域経済への影響に対し,状況を的確に把握しつつ,国や東京都が行う施策と連動した取組に加え,市独自の取組を適時適切に実施することで,市民生活に安心感をもたらすきめ細かな支援に努めている。こうした取組を基調としつつ,令和7年度は,前期基本計画の3年次目として,引き続き,重点プロジェクトを基軸に施策・事業を着実に推進していかなければならない。  他方,ハード面のまちづくりにおいてはこの10年余,京王線の地下化を契機として,調布のまちの様相は躍動的な変貌を遂げている。そうした中で,多くの関係者の協力の下,長年にわたり市民と共に取り組んできた中心市街地の都市基盤整備が,調布駅前広場の完成により歴史的な節目を迎える。そのため,令和7年度以降は,わが市におけるまちづくりの段階が,新たな局面へ移行していく転換期となることを念頭に置きつつ,令和9年度からの後期基本計画の策定に着手することとなる。  あわせて,令和7年度は,市制施行70周年に加え,木島平村との姉妹都市盟約40周年や,国際交流平和都市宣言35周年など,市政運営にとって重要な時期を迎える。これを機に市政の歴史を振り返り,改めてまちの発展に尽力された先人に敬意と感謝の念を持つ中で,これまでのまちづくりの成果を生かし,利便性や快適性を兼ね備えた夢のあるまちの未来を展望した取組を進めていく必要がある。  このような中,市政を取り巻く状況として,地震や風水害をはじめとする災害に関する平常時からの対策及び発災時における対応能力の強化や,様々な事情により日常生活に困難を抱える市民に対するきめ細かな支援,さらには,長引く物価高騰が市民生活や地域経済に及ぼす影響への対応など,市民の生命と暮らしの安全を守る基礎自治体としての責務を果たしていかなければならない。加えて,共生社会の更なる充実のほか,脱炭素社会の実現やデジタル化の推進,市内経済の活性化などに向けた取組を進めていく必要がある。  財政運営については,近年堅調に推移している市税収入に支えられる中で,多岐にわたる各種施策を展開しつつ,健全性を維持している。しかしながら,社会保障関係経費をはじめ,公共施設・インフラマネジメントや都市基盤整備などの財政需要の増大が引き続き見込まれる一方で,ふるさと納税に伴う減収影響は年々増大の一途をたどっている。さらに,今後予測される人口減少に伴う税収への影響が懸念されることから,市財政を取り巻く環境は決して楽観視することはできず,厳しさを増していくことを認識しておかなければならない。  こうしたことから,この先に想定される様々な行政課題へ適切に対応するに当たっては,引き続き,市独自の財政規律を保持し,歳入確保と経費縮減の両面からの取組と併せ,中長期的な将来への備えに意を注ぐ必要がある。  これらのことについて,全ての職員が共通認識を持ったうえで,これまでのハード面でのまちづくりの成果を生かすとともに,市内のみならず,多摩地域全体の振興も視野に,近隣自治体との協調・連携による対応も含めたソフト面での取組をさらに充実させていくことで,調布のまちの明るい将来展望につなげていくことが重要となる。  まちの将来像「ともに生き ともに創る 彩りのまち調布」を市民と共に実現していくため,わが市におけるまちづくりの新たな局面に向けて,重要な節目となる令和7年度の市政経営に関する基本方針を定め,全庁一丸となって,市民福祉の一層の増進に資する市政経営に取り組むこととし,この旨通達する。 記 1 市政経営の基本的な考え方   市政経営の2つの基本的な考え方である「参加と協働のまちづくり」と「効果的・効率的な行財政運営」を踏まえ,不断の行政改革を推進する中で,質の高い市民サービスの持続的な提供に取り組む。 (1) 参加と協働のまちづくり   ア 市民の自主的な活動への支援や,多様な主体との連携に取り組むことを通じて,共創のまちづくりを推進する。   イ 産学官民の連携により市における社会課題を解決するため,調布スマートシティ協議会の活動と連携した取組を進める。   ウ 参加と協働の前提となる市民との市政情報の共有を推進するとともに,市民参加手法の創意工夫に取り組む中で,子ども・若者の意見を市政へ反映する機会の確保等に努める。 (2) 効果的・効率的な行財政運営   ア 「どこでも市役所」の実現に向け,オンライン手続等の拡大を一層推進するとともに,既存の取組の検証に基づく事務の簡素化・効率化に取り組む。   イ 民間に委ねることが妥当な業務における民間活力の活用等により,簡素で効率的な組織人員体制を整備する。   ウ 生産性向上に向けた働き方改革の推進と併せ,職員の誰もが活躍できる職場環境づくりを進める。   エ 歳入確保と経費縮減の取組を徹底することで,財政需要の増大に適切に対応しつつ,財政の健全性を維持する。   オ 新たな総合福祉センターの整備やグリーンホールの建替えに向けた検討のほか,若葉小学校・第四中学校・図書館若葉分館の一体的整備などの公共施設及び各種インフラの整備に当たっては,経費の適正化及び全庁的な議論を踏まえ,取組の調整を図る。 2 前期基本計画の推進   基本計画に位置付けた重点プロジェクトを基軸に,施策の推進,成果向上の視点を踏まえ,各施策・事業を推進するとともに,市民生活の状況等を的確に把握する中で,適時適切な対応を図る。 (1) 重点プロジェクトの取組   ア 安全・安心に暮らせるまちをつくる     各地で頻発している地震や風水害を踏まえた他自治体との連携による対応の検討や,避難行動要支援者の支援に関する取組を進める。また,関係機関や地域の協力の下,特殊詐欺をはじめとする犯罪被害の未然防止を図る。   イ 調布の宝である子どもたちを応援するまちをつくる     妊娠期からの切れ目ない支援をはじめ,医療費等に関する保護者負担の軽減,保育サービスの充実など,子育て環境の充実を図る。また,不登校やヤングケアラーなど困難を抱える子ども・若者への支援のほか,母子保健と連携した児童虐待防止等に取り組む。さらに,部活動の地域連携・地域移行に向けた取組などへの対応を進める。   ウ 誰もが自分らしく安心して住み続けられるまちをつくる     重層的支援体制整備事業の推進により,関係機関との連携や施策横断的な対応による包括的な支援につなげるほか,孤独・孤立対策や手話言語条例及び障害者の多様な意思疎通に関する条例の制定を契機として,共生社会の一層の充実に取り組む。   エ にぎわいと交流のある活気に満ちたまちをつくる     調布駅前広場の整備完了に向けた取組に加え,都市基盤整備による利便性向上や地域公共交通の課題への対応を進める。あわせて,東部地域における交通環境については,国への踏切道改良計画の提出に向け,京王線の連続立体交差化の具体的な協議を前進させる。そのほか,文化芸術・スポーツ振興を図るとともに,まちの賑わい創出や魅力発信を通じた地域経済の活性化などにより,まちの活力を高めていく。   オ 人と自然がおりなすうるおいあるまちをつくる     脱炭素社会の実現,循環型社会の形成,生物多様性の保全を取組の軸とし,自然環境が有する多様な機能の活用や,環境人材・市民団体への支援,気候変動の影響への対応など,環境分野における個別計画を推進していく。あわせて,次期環境基本計画・地球温暖化対策実行計画(区域施策編・事務事業編)の策定等に取り組む。 (2) 施策の推進及び成果向上に向けた視点   ア デジタル技術の積極的な活用     デジタル化やDXに関する国や東京都などの動向を注視するとともに,デジタルデバイド対策にも留意する中で,調布市デジタル化総合戦略に基づき,市民サービスの向上をはじめ,業務の効率化やデジタル人材の育成などの取組をさらに推進していく。   イ 共創のまちづくりの推進     多様化・複雑化する市民ニーズに的確かつ迅速,柔軟に対応していくため,大学や企業等の多様な主体と連携し,目的の共有と適切な役割分担の下,市における社会的な諸課題の解決につなげる。   ウ 脱炭素社会の実現に向けた行動     ゼロカーボンシティ調布の実現に向けて,国内外の動向を踏まえつつ,市が積極的かつ施策・組織横断的に率先行動を実践する。あわせて,広報・啓発の充実と多様な主体との連携・協働を通じて,市民・事業者の環境配慮行動を一層促進し,各種取組を前進させていく。   エ フェーズフリーの視点を踏まえた取組     市民サービス向上や施設機能の利便性確保等に関して,それらを災害発生時等においても役立たせる視点を踏まえて取り組む。