事務連絡  令和2年10月8日  各部(局)長  様                          行政経営部長 令和3年度予算編成方針について(通知) 令和3年度の市政経営及び予算編成に向けた基本的な考え方(市長通達)が示され,令和3年度は,新型コロナウイルスの感染拡大に伴う極めて厳しい財政状況を踏まえ,計画に位置付けた各施策・事業について,必要な財源対策とともに,優先度を踏まえた見直しや進捗調整等に取り組むことで,市政の第一の責務としての市民の安全・安心の確保と市民生活支援の取組を継続していく必要があるとしています。 同通達を受け,調布市予算事務規則第4条に基づく令和3年度の予算編成方針を下記のとおり策定しましたので,現下の極めて厳しい財政状況について全職員が共通認識し,この未曾有の難局に対処するため,限られた経営資源の最大限の活用や,全庁一丸となった取組により,最少の経費で最大の効果を挙げる予算の編成をお願いします。 記 1 令和元年度決算振返り(Check) 令和元年度決算を総括すると,歳入の根幹である市税収入では,法人市民税の特殊要因等による増収があったほか,収納率が平成以降で最高となるなど,市税総体で42億5000万円余の増となりました。一方,歳出では,財政調整基金積立金や庁舎免震改修事業費の増に加え,引き続き保育園関係経費や社会保障関係経費が増となったことなどから,歳出全体としては,前年度と比較して23億2000万円余の増となりました。その結果,実質収支※1は30億1000万円余となり,単年度収支※2は2年連続でマイナス,実質単年度収支※3は,市税の増収分を財政調整基金に積み立てたことなどから2年ぶりのプラスとなりました。 また,財政指標では,財政の弾力性を示す経常収支比率※4について,法人市民税の特殊要因による増等により,89.7%と,前年度から6.1ポイントの低下(改善)となりましたが,経常経費は年々増加傾向となっており,今後,比率の上昇(財政の硬直化)が懸念されます。さらに,感染症関連の新たな財政需要が見込まれるため,引き続き,市独自の財政規律ガイドライン※5の視点を踏まえ,歳入歳出両面からの不断の見直し・改革・改善により一層取り組んでいく必要があります。 2 今後の中長期的展望とその対処 国内の景気動向については,4月から6月期における実質GDPの成長率を,年率換算でマイナス28.1%とする想定が内閣府から示され,リーマンショック後の落ち込みを大きく上回るとされています。こうした影響により,市財政においては,歳入の根幹を成す市税及び各種交付金等の一般財源の大幅な減収を見込まざるを得ません。 一方,歳出については,市民の安全・安心の確保や市民生活支援への継続的な取組をはじめ,引き続き増加が見込まれる社会保障関係経費及び保育園関係経費への対応,公共施設マネジメント,都市基盤の整備などに加え,新型コロナウイルス感染症対策に適切に対応していく必要があります。 今後,新型コロナウイルスの感染拡大に伴う影響の長期化により,極めて厳しい財政環境下での市政経営が複数年にわたることが想定されます。調布市は普通交付税の不交付団体であることから,自主・自立的な財政運営が不可欠であり,今後,市税等の大幅な減収が見込まれる中,必要な財源確保のため,引き続き,財政調整基金など各種基金への積立や,国や東京都の補助金など特定財源の最大限の活用など,あらゆる角度からの歳入確保と,全ての事業の優先度の精査,事業の見直しによる経費縮減に取り組むほか,不断の行財政改革を推進していく必要があります。 3 令和3年度財政見通し 令和3年度は,税制改正に伴う法人市民税の一部国税化による減収影響の通年化に加え,新型コロナウイルス感染拡大の影響に伴う景気の急速な悪化により,市税や各種交付金の大幅な減収影響が避けられない未曾有の事態となっています。 市税については,個人市民税は前年の所得が課税対象となるため,令和3年度以降に本格的な減収影響が見込まれ,法人市民税は市内法人の収益悪化等により,本年度以降の減収が避けられないものと捉えています。併せて,主要な一般財源である各種交付金については,景気の悪化に伴う交付金の減収が見込まれ,特に地方消費税交付金については消費支出の落ち込みと連動した大幅な減収が懸念されます。 一方,歳出については,感染症対策や風水害等への対策のほか,制度改正に伴う内容など計画策定後に生じた新たな課題に係る財政需要も想定されることから,大幅な財源不足が生じることが見込まれます。 このことに対処するため,歳入確保・経費縮減の取組のほか,複数年次を見据えた基本計画事業等各種事業の大幅な見直しや進捗調整が不可欠な状況です。 4 令和3年度予算編成手法(Action) 令和3年度予算編成では,市財政を取り巻く極めて厳しい環境を踏まえ,計画に位置付けた各施策・事業をはじめとする各種事業について,必要な財源確保とともに,優先度を踏まえた見直しや進捗調整等に取り組むことで,市政の第一の責務としての市民の安全・安心の確保と市民生活支援の取組を継続していく必要があります。そのため,行政経営会議・企画会議における協議,課題整理や,行政経営部と各部で懸案課題等の個別協議,意見交換を行うなど,緊密に情報共有を図りながら,全庁一丸となった予算編成に取り組みます。 令和3年度の財政見通しを踏まえ,大幅な財源不足に対処するため,各部のマネジメント機能をより一層発揮しながら,全ての経費の精査,検証をはじめ,「選択と集中」の視点から,事業の優先度を厳しく精査することとします。また,新規拡充事業は,制度改正に伴う内容のほか,市民の安全・安心の確保,市民生活支援の観点から緊急性が高い事業以外は,原則実施しないこととします。経常経費については,義務的な経費を除き,例年以上に厳しい仕様の見直しや事務の効率化等により,更なる縮減を図ることとするほか,各種補助金等については,補助金等の交付基準及び評価・見直し基準を用いた精査・検証を行い,見直し・改善につなげることとします。 5 令和3年度予算編成における基本姿勢(Action⇒Plan) 極めて厳しい財政環境の中にあっても,市民の安全・安心を守り,市民生活を支える取組を継続するため,次の3点を基本姿勢として,令和3年度予算編成に当たることとします。 一 新型コロナウイルス感染症への対応など,市民の安全・安心の確保と市民生活支援への継続的な取組 二 市税・各種交付金の大幅な減収が見込まれるこの未曾有の難局に対処するため,全庁一丸となった不断の事業の見直し・改革・改善の実践 三 現下の厳しい財政環境の長期化も見据えた,財政構造の改善と経常経費縮減の取組 6 全般的事項 ・ 基本的項目 (1) 「令和3年度の市政経営及び予算編成に向けた基本的な考え方について」を踏まえ,各種基金や市債の活用を含むあらゆる角度からの財源確保と併せて,市民の安全・安心の確保や市民生活支援の観点から緊急性が高い事業,法令に基づく事業以外の経費は,全て縮減を図ること。 (2) 計画事業については,現行基本計画の枠組は継承しながら,予算編成の過程において,複数年次を見据えた進捗調整や事業費の縮減等の必要な時点修正に取り組むこと。 (3) 感染症拡大に伴う様々な影響の的確な把握に努め,引き続き,緊急対応の3つの柱「感染症拡大防止に向けた取組」「市民生活及び子どもたちへの支援」「地域経済への支援」を基軸として,適切な対応を図ること。 (4) 開催延期となった東京2020大会については,新型コロナウイルス感染症の状況や,組織委員会及び東京都の大会簡素化などの方針を踏まえ,必要な対応を図ること。 (5) 通年予算として編成することとし,令和2年度における各事務事業の進捗状況や国の政策動向等を踏まえた年度間調整とともに,歳入歳出両面から不用額等の過大・過少が生じないよう,令和元年度決算及び令和2年度上半期契約実績等を踏まえた予算を編成すること。 (6) 監査委員からの決算審査における審査意見や例月出納検査の指摘事項については,具体的な見直し・改善方策を講じ,予算に反映すること。また,市民・議会からの意見について,適切な改善方策を講じること。 (7) 基本構想に掲げた「みんなが笑顔でつながる・ぬくもりと輝きのまち調布」の実現に向け,決算振返りによる事務事業単位の行政評価と一体となった総合調整を行うとともに,各部のマネジメントのもと,最少の経費で最大の効果を挙げる予算編成に取り組むこと。 (8) 部を横断する重要課題への取組等,複数の部課と関連のある事業については,関係部課との調整・協議を図ること。 (9) 国や東京都からの補助金等を最大限活用するため,制度改正等に十分留意するとともに,市長会をはじめ各種財団法人等からの助成金の活用についても積極的に検討すること。なお,令和3年度の国や東京都の補助金等については,感染症拡大の影響により,例年以上に変更される可能性もあるため,制度の新設や改正,廃止等の動向に注視すること。また,庁内連携や他団体との共同事業,民間活力の活用により,新たに対象となる補助金等もあることから,情報収集に努めるほか,補助金等に限らず,新たな枠組みによる財源確保等も検討すること。 (10) 義務的経費を除く経常経費については,令和2年度当初予算から10%の縮減を基本とすること。更に,令和元年度の決算額を勘案した縮減を図り,見積もること。そのため,見積入力段階から仕様の見直しや事務の効率化などによる対応に取り組むこと。併せて,行革プラン2019のプラン29「事務事業等の見直し,改善による経常経費の縮減」に取り組むこと。 (11) 公共建築物維持保全や増築・改良工事等は,基本計画書の資料編に記載の公共建築物維持保全等一覧(328~331)に記載の工事等を基本とするが,仕様,機能,グレード等の精査によるコスト縮減のほか,国や東京都等の補助金の最大限の確保や,進捗調整(令和2年度補正予算前倒し,令和4年度以降へ先送り)により,令和3年度の総事業費,市負担額を抑制すること。 (12) 一般財源の減収に対し,新たに減収補?債の借入も検討するため,市債借入予定事業についても経費縮減・事業の見直し,先送り等の進捗調整の取組により借入額の縮減に努めること。 (13) 制度改正に伴う内容のほか,市民の安全・安心の確保,市民生活支援の観点から緊急性が高い事業以外の新規拡充事業は,原則実施しない。 なお,新規・拡充事業(基本計画に位置付けのある新規・拡充事業も含む)については,「新規・拡充事業一覧表」を提出することとし,必ず部内で優先順位を明確に付けること。 (14) 補助金等制度については,予算見積の段階から,補助金等の交付基準及び評価・見直し基準に掲げる6つの視点からの精査・検証を行うこと。そのため,要綱等の例規の制定・改正を伴う補助金等については,「補助金等評価シート」を提出すること(新型コロナウイルス感染症対策を除く)。 また,行革プランに基づき,平成28年度以降,補助金等評価を実施した補助金については,その評価結果を踏まえた見直し・改善に取り組むこと。 (15) 各部における予算の総合調整については,これまで培ってきたコスト意識を最大限発揮する中で,最少の経費で最大の効果を挙げるべく,各部の自主的・自立的な取組により実施していくこと。 特に,現下の極めて厳しい財政状況の中,各部において,全ての経費の精査,検証をはじめ,「選択と集中」の視点から,事業の優先度を厳しく精査するなど,部次長の統括による各部のマネジメント機能をより一層発揮すること。 ・ 具体的項目 (16) 経常的に市が単独で実施している事業については,厳しく精査し,最少の経費に縮減するとともに,新たな歳入の確保(特定財源の適用)や受益者負担の適正化等に努めること。 同様に,国及び東京都の補助制度に上乗せしている事務事業についても,他団体事例等も参考に,その効果,負担割合等を再検証のうえ,最小限の経費を見積もること。  併せて,スクラップ・アンド・ビルドの視点から,市民生活への影響も考慮しながら,制度の改廃についても検討すること。 (17) 公金の適正執行及び経費縮減の観点から,これまで特命随意契約としてきた業務委託等については,契約制度の原則である競争性の導入に努めること。また,長期継続契約の対象となる契約は,その活用を検討すること。併せて,業務委託等の仕様内容(範囲,回数,グレード等)を改めて再検証し,最適化を図ること。 (18) 各種基金については,事業実施に当たっての一般財源の負担を軽減し,年度間の平準化を図るための財源として有効な活用を図るとともに,寄附者の意向を踏まえた活用方法を検討すること。 また,令和2年度における事業未実施や進捗調整等に伴う不用額等執行見込額については,本年度の減収対策として活用するほか,令和3年度の大幅な減収影響に対処するため,令和2年度に財政調整基金等の基金に積立て,令和3年度当初予算において基金から繰り入れる年度間調整財源として活用するため,留意すること。 併せて,基金の趣旨を踏まえた具体的な活用事業をPRするなど,市民の一層の協力が得られるよう積極的かつ分かりやすく周知を図り,寄附の促進につなげること。 (19) 各特別会計が独立した会計であるとの再認識に立ち,会計間の均衡を失することがないよう,一般会計と同一基調での予算編成を行うこと。特に,収納率の向上,収入未済額の縮減による歳入確保や,医療給付費等の縮減方策(ジェネリック医薬品の利用促進やレセプト点検の強化)を講じて,一般会計からの財源補?的な繰入金の縮減を図ること。 (20) 財政援助団体等に対して,例年とは異なる極めて厳しい財政環境について十分説明し,所管部課が予算の見積段階から市と同一基調の精査・検証を行う中で,収入確保・経費節減等の経営改善を要請し,自主・独立の経営に向けた取組を求めること。特に収入確保においては,団体等が直接交付を受ける補助金のほか,企業等からの協賛金や広告料収入などについて検討を促すこと。 (21) 税,使用料,手数料,その他収入については,適切な債権管理の推進により,収入未済の防止を図り,安定的な収入の確保に努めること。 (22) 地方消費税交付金については,地方消費税率の引上げによる社会保障財源分の増収が通年化するが,引き続き,社会保障の充実・安定化に活用し,市民福祉の増進を図る制度としての趣旨を踏まえ,関係部署のマネジメントにおいても意を用いるとともに,その活用状況を分かりやすく明示していく。 (23) 会計年度任用職員の報酬額及び期末手当の支給等については,人事課作成の見積要領等を参照のうえ,適切に見積もること。なお,各課における会計年度任用職員については,業務量等を踏まえた適切な配置とすること。 (24) 限られた人材で,効果的・効率的に事務を執行するためには,日常業務の見直しが不可欠であることから,事務事業やシステムの整理・統合などと併せ,他団体との事業の共同化や官民連携,民間活力,AI・RPA(※)等の活用など,費用対効果を再検証し,改善につなげること。   ※AI:人工知能,RPA:人が行う定型的なパソコン操作を自動化するソフトウェア (25) 「調布市職員の意識改革・働き方改革推進に関する方針」に位置付けた3つの視点に基づく取組(「意識改革・働き方改革の促進」,「マネジメント力の強化」,「全庁推進体制の継続」)を踏まえ,ワーク・ライフ・バランスをさらに推進すること。 (26) 「地球温暖化対策実行計画」等に基づく取組を推進するとともに,既存経費の内容について再点検し,環境に配慮した予算を編成すること。 (27) 予算見積りに当たっては,歳入・歳出の計上節ごと,予算編成事務要領に記載の「令和3年度見積指針」を踏まえた積算を行うこと(行政経営部(財政課)と各部(課)の予算ヒアリングは見積指針を基準に実施する)。 【参考】 実質収支※1  歳入歳出差引額(形式収支)から,繰越事業に伴う翌年度へ繰り越すべき財源を控除した決算額  《参考》H28/34.7億円余  H29/39.8億円余  H30/38.2億円余  R1/30.1億円余    単年度収支※2  実質収支から,前年度の実質収支を差し引いた額  《参考》H28/▲19.4億円余 H29/5億円余  H30/▲1.5億円余  R1/▲8.1億円余 実質単年度収支※3  実質単年度収支に,財政調整基金積立額と地方債繰上償還額を加え,財政調整基金取崩し額を差し引いた額  《参考》H28/▲21億円余  H29/10.7億円余  H30/▲22.5億円余  R1/5.2億円余 経常収支比率※4 市税など毎年度経常的に収入できる一般財源が同じく経常的に支出する経費にどのくらい充てられているかを示す指標 《参考》H28/90.9%     H29/90.8%    H30/95.8%   R1/89.7% 財政規律ガイドラインを見据えた取組※5 令和3年度予算編成についても「財政規律ガイドライン」に基づく3つの視点から進行管理し,市独自の財政規律を保持した自主・自立的な取組を推し進めます。 1 財政構造の見直しの視点 ・ 収納率向上に向けての取組(市税及び国民健康保険税) ・ 未収金の縮減・解消に向けた取組(組織の横断的・適時な取組) ・ 自主財源・特定財源の両面からの積極的な財源確保 ・ 監査委員からの決算審査の審査意見や例月出納検査の指摘事項等の改善 ・ 経常的な事務事業(物件費・補助費等)の総点検 ・ 歳入歳出両面からの不断の見直し・改革・改善の取組 2 財政基盤の強化の視点 ・ 公共建築物維持保全への対応や中心市街地をはじめとする街づくりなどの特定目的,年度間調整としての基金の利活用のほか,財源確保と経費縮減の取組成果とも言える実質収支や財政効果額の活用による財政基盤の強化等 3 連結ベースでの債務残高縮減の視点 ・ 後年度負担に留意した適切な市債の活用 ・ 国や東京都の特定財源確保による債務残高の解消等