13ページ 第3章 施策の展開 -事業計画-  「福祉3計画」の基本理念を踏まえ,「調布市障害者総合計画」では,以下の2つの視点から施策体系を構築し,各分野における取組の方向性と具体的な事業計画を記載します。  Ⅰ 障害のある方と家族への切れ目のない地域生活の支援   本人だけでなく家庭・家族全体の地域生活を支える視点に立ち,様々な分野と連携しながら,生涯にわたるどのライフステージにおいても,切れ目なく支えるための施策を展開します。   本人のニーズと自己決定,個別性を重視し,障害や疾病があっても,地域でその人らしい自立した生活を送り続けることができるよう,一人ひとりに福祉,医療,教育,雇用など日常生活及び社会生活のあらゆる分野で適切なサービスや支援が行き届く体制づくりを進めます。  Ⅱ 安心して住み続けられる地域の環境づくり   「障害」とは,社会によってもたらされるものであるという障害の「社会モデル」の視点に立ち,誰もが安心して住み続けられる地域社会をつくるために,地域の環境に働きかけ,変えていくための施策を展開します。   「必要かつ合理的な配慮」があらゆる場面において提供されることで,障害者の基本的人権や社会への参加が保障され,障害によって差別や排除を受けることのない,全ての市民が暮らしやすい「共生社会」の充実を目指します。そのために,様々な福祉サービスの基盤の充実とともに,物理的(ハード),精神的(ソフト)の両面からの「社会的障壁」の除去による地域の環境づくりを進めます。   14ページ  ■次期計画における施策体系 Ⅰ 本人と家族への切れ目のない支援 A 生涯にわたる支援 (1) 相談支援 (2) 健康づくり・医療的な支援 (3) 権利の擁護 (4) 障害福祉サービスによる生活支援   (5) 医療的ケアが必要な方への支援 (6) 経済的な支援 (7) 住まいの支援 B ライフステージに応じた支援 子ども期 (1) 発達相談と療育・子育ての支援 (2) 教育における支援 (3) 放課後等の活動の支援 成人期 (4) 働くこと・日中活動の支援 (5) スポーツ・芸術・余暇活動の支援  高齢期 (7) 高齢期の支援 Ⅱ 安心して住み続けられる地域の環境づくり C 障害福祉サービスの基盤の充実 (1) 福祉人材の育成・確保 (2) 事業者の支援 D 地域の環境づくり (1) 移動の支援 (2) バリアフリーのまちづくり (3) 情報提供 (4) 障害理解と交流 (5) 地域ネットワークづくり (6) 災害時の支援 (7) 当事者の参画   15ページ Ⅰ 障害のある方と家族への切れ目のない支援 A 生涯にわたる支援  (A-1) 相談支援  障害のある方と家族からの様々な相談に応じ,他分野の機関とも連携しながら必要な支援,サービス等へつなげます。   前計画期間の振返り  ● 平成30年度から基幹相談支援センター(障害福祉課)に医療的ケアコーディネーター(看護職)及び相談支援コーディネーター(相談支援専門員)を配置し,医療的ケアの必要な方や市内の相談支援事業所で相談支援を担っていくことが難しいケースの対応に取り組んでいます。  ● こころの健康支援センターの相談事業では,30代以下の相談者が全体の半数程度と増加傾向にあります。10代の相談者数も増加しており,子ども・若者支援を行う関係機関と連携しながら対応しています。  ● 平成31年4月から「地域生活支援拠点」の「面的な体制」による運用を開始し,相談支援事業所を中心として連絡会を設置,開催し,機能の充実へ向けた課題抽出を行い,障害者地域自立支援協議会に報告しています。  ● 精神障害者家族等シェルター事業運営費補助について,補助対象団体と協議のうえ,令和3年度よりアパート借上による運営から,民間宿泊施設等を活用した助成方式に変更しました。  ● 地域福祉コーディネーター事業として,令和元年度には市内8つの福祉圏域全てに地域福祉コーディネーターを配置しました。また,地域共生社会の充実に向けて,地域福祉コーディネーターを中心として,包括的な支援体制の構築を推進しました。(福祉総務課)  ● 複合的な生活課題を抱える世帯に適切に対応していくため,高齢,障害,健康,児童,教育など各分野の庁内所管部署,社会福祉協議会や保健所等の関係機関で構成される「相談支援包括化推進会議」を平成30年10月より設置しました。 また,令和5年度には,重層的支援体制整備事業に移行し,重層的支援会議等と一体的に開催し,具体的な支援プランに関する検討や,支援に必要な関係機関との情報共有を図りました。(福祉総務課) 16ページ  ● 調布地域精神保健福祉ネットワーク連絡会は,平成30年3月に,会の設置目的として「精神障害者にも対応した地域包括ケアシステムの構築の推進」を追加し,令和4年度からは抽出した地域課題をもとに3つのグループを作り,協議しています。  ● 毎年度,市内福祉事業所で働く職員の専門性向上と職員同士のネットワーク形成を目指し「ちょうふ福祉実践フォーラム」を開催しています。令和2年度,令和3年度においては,コロナ禍の影響によりオンデマンド配信による開催に変更し,実践からの学びあいの機会を確保するとともに,参加者数の維持を図りました。   今後の課題  ◆ 障害特性に応じた専門相談の充実  一人ひとりの特性やニーズに応じた,どのライフステージにも対応した切れ目のない支援の実現のため,その基礎となる基幹相談支援センターを中心とした相談支援体制の充実が今後も必要です。  発達障害,高次脳機能障害,重症心身障害,医療的ケアが必要な方などの相談件数も増えており,様々な障害特性に対応できる相談員の人材・体制の質的,量的な充実が今後も必要です。  ◆ 包括的・重層的な相談支援体制の整備 高齢福祉,障害福祉,児童福祉,生活困窮者支援など分野別の支援体制のみでは,複雑化,複合化する当事者や家族の抱える課題や狭間のニーズへの対応は困難です。また,令和6年4月の精神保健福祉法の改正により,市町村等が実施する精神保健に関する相談支援について,精神障害者のほか精神保健に課題を抱える者も対象になることから,分野を超えた連携体制,情報交換などの取組を進め,包括的な支援体制を構築していくことが必要です。  ◆ 家族・家庭への支援  「8050問題」,「ヤングケアラー」,「きょうだい」などの言葉を始め,障害のある当事者の家族,家庭も大きな負担を抱えており,さらにコロナ禍により介護者,家族の孤立化,休息(レスパイト)機会の減少も懸念されています。  障害のある当事者だけでなく,その家族一人ひとりもそれぞれが望む生活を送れるよう,家族,家庭にも目を向けて支援を展開していくことが必要です。福祉につながっていない人にも支援が届く体制,相談しやすい窓口づくりが求められています。  17ページ   取組の方向性 <障害特性に応じた専門相談の充実> ○ 基幹相談支援センター(障害福祉課),市内3か所の相談支援事業所,こころの健康支援センター,子ども発達センターを中心とした相談支援体制を維持,継続しながら,一人ひとりの多様なニーズや障害特性に対応できるよう,発達障害,高次脳機能障害,重症心身障害,医療的ケアが必要な方などの専門相談の充実を含め各相談機関のスキルアップを図ります。 ○ 相談窓口の市民全体への更なる周知に努め,どこにどのように相談したらよいかがわかりやすい,ひらけた相談窓口を目指します。まだ相談窓口につながっていない人にも支援を届けることができる,市民が利用しやすい環境づくりを進めます。 ○ 「サービス等利用計画」を作成する相談支援専門員の量的充実を図るとともに,市内相談支援事業所により構成する「サービスのあり方検討会」により,相談支援の質の向上に努めます。 <包括的・重層的な相談支援体制の整備> ○ 令和5年度に移行した重層的支援体制整備事業の下,高齢福祉,障害福祉,児童福祉,生活困窮者支援などといった分野別の支援体制では対応が困難な地域住民の複雑化・複合化した支援ニーズに対応する包括的な支援体制を構築するため,引き続き,組織横断的な連携の下,「相談支援」「参加支援」「地域づくりに向けた支援」を一体的に実施します。 ○ 精神保健福祉法の改正により,精神障害者のほか精神保健に課題を抱える者も対象になりますが,支援者が精神保健のニーズに気付けるよう,包括的・重層的な相談支援体制の中で取り組みます。 <家族・家庭,生活全体を支える支援> ○ 障害のある本人だけでなく,きょうだい児・者や介護者(高齢の親,ヤングケアラー等)への支援を含め,家族・家庭全体が抱えるニーズを的確に把握し,受け止め,関係機関と連携しながら支える体制づくりを進めます。 ○ 障害のある人も,結婚・出産・子育て・親の介護などのライフステージや,友人・交友関係などの生活全体において,一人ひとりが生涯にわたって充実した日常生活,社会生活を送ることができるよう支援の展開を図ります。 18ページ 重層的支援体制整備事業(補足) 国は,令和3年4月に施行された社会福祉法の改正により,地域共生社会の実現に向けて,「相談支援」「参加支援」「地域づくりに向けた支援」を一体的に実施する新たな事業として,重層的支援体制整備事業を創設しました。 市は,高齢福祉,障害福祉,児童福祉,生活困窮者支援等の分野別の支援体制では対応が困難な,地域住民の複雑化・複合化した支援ニーズへの対応を充実するため,既存の相談支援の取組等を踏まえて,令和5年度に重層的支援体制整備事業を開始しました。 今後も組織横断的な連携により,包括的な支援体制の構築に向けた取組を推進します。 資料:厚生労働省「地域共生社会のポータルサイト」   19ページ ■重層的支援体制整備事業のイメージ図   20ページ 【主要事業】 №A-1-01 基幹相談支援センター 障害福祉課 事業概要  地域における市内の相談支援事業所の中核的な役割を担う基幹相談支援センターを障害福祉課内に設置し,総合的な相談業務を実施します。 今後の 方向性  市内相談支援事業所に対してスーパーバイズを行い専門性や支援体制の強化を図ります。また,市内の特定相談支援事業所において対応が困難な事例や重複障害の事例の対応を関係機関と連携を取りながら行います。 №A-1-02 障害者相談支援事業 障害福祉課 事業概要  障害福祉課と市内3か所の相談支援事業所等がともに連携し,障害者及びその家族からの相談に応じ,必要な情報の提供及び助言を提供するとともに,障害者に対する権利擁護のために必要な支援を行うことにより,自立と社会参加の促進を図ります。 ○ 障害者地域活動支援センタードルチェ(身体障害) ○ 障害者地域生活・就労支援センターちょうふだぞう(知的障害) ○ 地域生活支援センター希望ヶ丘(精神障害) 今後の 方向性  今後も関係機関の連携を強め,相談支援専門の技量の向上を目指し,自己決定,エンパワメントの視点を重視し,その人らしい自立にむけた支援を行っていきます。 また,サービス等利用計画作成対象者の拡大に対応するための体制を整備し,一人ひとりのニーズに対応した支援をします。 №A-1-03 こころの健康支援センターの運営(相談事業) 障害福祉課 事業概要  精神障害者及びその家族の中心的な相談機関として,生活相談とあわせて就労支援,通過型の訓練事業等を行うことで,精神障害者の社会復帰の促進を図ります。 今後の 方向性  関係機関との連携を図り,精神障害者及びその家族の相談支援を行い,精神障害者の自立と社会復帰を推進します。利用者の状況に応じて子ども・若者を対象とした相談窓口との連携を図りつつ,中学卒業後や,高校生等の相談にも対応できる体制を構築します。 また,新規相談に素早く対応できる体制を構築し,相談の待ち時間解消に努めます。   21ページ №A-1-04 発達障害者支援体制整備推進事業 障害福祉課 事業概要  発達障害者が地域で自立した生活を営むことができるよう,社会生活への適応のために必要な訓練や生活支援,就労準備支援,家族等に対する相談及び助言その他の支援を実施するため,発達障害者に対する相談支援を提供する拠点をこころの健康支援センターに整備し,発達障害者に対する支援を推進します。 今後の 方向性  こころの健康支援センターを拠点として,発達障害のある方の生活相談や社会参加に関する相談に応じるとともに,普及啓発や地域のネットワーク構築を図ります。また,新規相談に素早く対応できる体制を構築し,相談の待ち時間解消に努めます。 №A-1-05 高次脳機能障害者相談支援事業 障害福祉課 事業概要  障害者地域活動支援センター「ドルチェ」へ事業を委託し,高次脳機能障害者(児)及びその家族等に対する相談支援を実施します。医療機関,就労支援センターその他関係機関との連携を図り,高次脳機能障害者(児)への支援を促進します。 関連する研修会を周知し,関係職員の知識の普及を促進します。 今後の 方向性  「高次脳機能障害」についての理解を促進するため,市民向けの講演会やサポーター養成講座等の啓発活動を継続して実施します。 研修会等の周知も継続し,関係職員の知識と能力向上を図ります。 №A-1-06 身体障害者・知的障害者相談員 障害福祉課 事業概要  市に登録された障害当事者及びその家族が,地域における身近な相談員として,心身障害者の様々な相談に応じ問題の解決や地域活動への参加などを支援します。○身体障害者相談員 5人  ○ 知的障害者相談員4人 今後の 方向性  今後も障害者福祉のしおりやホームページを通して市民に周知を図ります。登録した相談員には連絡会や研修会を通して資質の向上を図ります。 №A-1-07 【新規】重層的支援体制整備事業 障害福祉課 事業概要  高齢福祉,障害福祉,児童福祉,生活困窮者支援などといった分野別の支援体制では対応が困難な地域住民の複雑化・複合化した支援ニーズに対応する包括的な支援体制を構築するため,「相談支援」「参加支援」「地域づくりに向けた支援」の3つの支援を一体的に実施します。 今後の 方向性  「相談支援」「参加支援」「地域づくりに向けた支援」の3つの支援を一体的に実施し,多機関協働による包括的な支援体制の構築を図ります。  また,重層的支援会議と支援会議の機能を付加した相談支援包括化推進会議を通じて,多機関・多分野にわたる支援機関のネットワークの構築や具体的な支援プランに関する検討,支援に必要な関係機関との情報共有を図ります。 22ページ №A-1-08 地域福祉コーディネーター事業 福祉総務課 事業概要  制度の狭間で苦しんでいる方や既存の公的な福祉サービスだけでは十分な対応ができない方などに対し,地域福祉を育むことにより,地域の生活課題の解決に向けた取組を行います。また,主な役割として,地域の生活課題やニーズを発見し,受け止め,地域組織や関係機関と協力しながら,地域における支え合いの仕組みづくりや地域での生活を支えるネットワークづくりを行います。 今後の 方向性  複雑化・複合化した支援ニーズに対応する多機関協働による相談支援等の充実等を図るとともに,地域課題に対する住民の主体的な取組等を支援し,地域における支え合いの仕組みづくりを推進します。 №A-1-09 生活困窮者自立支援事業 生活福祉課 事業概要  就労の状況,心身の状況,地域社会との関係性その他の事情により,現に生活に困窮し,最低限度の生活を維持できなくなる恐れのある方を早期に発見し,個々の状況に応じた就労支援等を継続的,包括的に提供することで,生活の立て直しを図り,早期の自立を促進することを目的としています。  ワンストップ型の相談窓口(自立相談支援機関)を設置し,様々な相談支援や関係機関との連絡調整等を行うことにより,生活困窮者の自立を支援します。 今後の 方向性  引き続き,生活困窮者の自立に向けて支援を行っていきます。 №A-1-10 調布地域精神保健福祉ネットワーク連絡会 障害福祉課 事業概要  こころの健康支援センターを事務局として,市内の精神保健福祉に関わる医療機関,事業所等による連絡会を実施しています。情報交換及び,相互理解を深めることで連携強化を図っています。 今後の 方向性  精神障害者が地域で安定し,自立した生活を送るため,各関係機関が課題解決に向けた取組を行うとともに,情報交換及び連携することで,支援につなげていきます。 №A-1-11 調布市子ども・若者総合支援事業(ここあ) 児童青少年課 事業概要  社会生活を円滑に営む上で困難を抱える子ども・若者への支援を行うため,相談・居場所・学習支援をとおして,進学や自立に向けた支援を行います。 今後の 方向性  利用者の状況に応じて関係機関との連携を図りつつ,困難を抱える子ども・若者への支援を推進します。 23ページ 【その他関連事業】 事業名 事業概要 <№A-1-12> 地域で支える体制づくりモデル事業(あんしんネット) (障害福祉課)  知的障害者及び発達障害者を地域で支えていく体制づくりを目的としています。地域への障害理解や相談機関の普及啓発,アウトリーチ支援,地域のネットワーク体制の整備,また,緊急相談窓口を設置し,知的障害者,発達障害者の緊急時に必要に応じてショートステイやヘルパー派遣などを行います。 <№A-1-13> 精神障害者家族等シェルター事業運営費補助 (障害福祉課)  調布精神障害者家族会との協働により,家族等の一時的な避難・休息場所を確保し,相談その他の必要な支援などの応急的な支援活動を行う事業への補助を実施し,精神障害者及び家族等の社会復帰や自立の促進を図ります。 <№A-1-14> 民生委員・児童委員事業 (福祉総務課)  民生委員・児童委員として厚生労働大臣から委嘱を受け,地域の人々の生活状況を把握し,必要な人々に必要な援助を行うこと,地域の人々の生活の向上や地域福祉の向上を目指して関係行政機関と協力して様々な社会福祉活動を行うことを役割としています。  市には調布市民生児童委員協議会が組織化され,上記のような活動をするため,委員相互の連携や民生委員・児童委員として必要な勉強会など,自己研鑽を行っています。 <№A-1-15> 総合福祉センター相談事業 (福祉総務課)  対面又は電話による福祉全般に関する各種相談や問い合わせに応じ,傾聴,情報提供及び各関係機関への連絡・紹介を行います。 <№A-1-16> 相談事業(市民相談) (市民相談課)  家庭相談,心の相談の専門相談を実施し,市民の日常生活上の悩みや問題の解決のサポートを行っています。 <№A-1-17> 福祉人材育成拠点の整備(ネットワーク構築) (障害福祉課)  市が運営費補助を行う調布市福祉人材育成センターにおいて,障害福祉サービス事業所,関係機関等による情報交換や勉強会等の開催を通じて,事業所間・職員間のネットワーク構築と連携強化を図ります。