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掲載開始日:2023年7月14日更新日:2023年7月14日
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好きを貫け!「蛾の帝王」に会ってみた
「蛾の帝王」と呼ばれる解説員(石川 和宏氏)が、多摩川自然情報館にいるのをご存知でしょうか。普段、好きなことを反対されたり続ける意味があるのかなど思ってしまうこともあるかもしれません。そこで、好きなことを貫き通してきた「蛾の帝王」に見えた世界や子どもたちに伝えたいメッセージを伺いました。
蛾を好きになったきっかけは何でしょうか。
蛾に限らず全ての生物が好きで、その中でも昆虫類と身近に接することが多かったので詳しくなりました。小学生になる前くらいに、キャンプに出掛けた際「ゴマフボクトウ」と「クスサン」という蛾を採集し、名前を調べたのが最初の記憶です。また、中学校が山の上にあり夜には窓や室内に多くの虫が集まり、その影響で蛾も覚えるようになりました。とどめは、大学に入った時のサークルの恩師と「六虫会」という中国地方の虫屋の会を開くので一緒にどうかと誘っていただき、その後、本格的に鱗翅目(りんしもく)について分類するようになりました。
蛾の魅力について詳しく教えてください。
実は、蝶と蛾に厳密な区別はなく、蛾の仲間の一部が昼行性にシフトし、進化したものが蝶と呼ばれるだけなので、蝶は蛾の一部といっても過言ではありません。鱗翅目全体を見ても、外部形態や生態の多様性は素晴らしく構造色による綺麗な光沢をもつ種もあり正直飽きることは無いです。また、シャクガ科やスカシバガ科に代表される擬態など、生態的にも興味が尽きません。
「蛾の帝王」のキャッチフレーズはインパクトがありますね。
就職後、テレビ東京の「テレビチャンピオン」という番組から学会宛てにオファーがあり、そこで私が参加したところ、その番組中で「蛾の帝王」というありがたい二つ名をいただき、今に至りました。
好きなことを続けてみて、周囲の方はどのような反応でしたか。
あまりにも思いが深すぎて、家族を含め周りの人たちは、反対というより諦めに近い感じだったのではないかと思っています。ただ、小学1年生の時に夏休みの自由研究でアゲハ蝶の羽化をテーマに発表した際、市の教育委員会から「小学校1年生が羽化とかふ化とか知っているはずがない、親が代わりにやったのではないか」という指摘があり、当時の教頭先生がその場に同席してくれて、見守っていただけたのは子ども心に心強かったです。ちなみにこの時は、教育委員会の方からの質問に、ほぼすべて自分で回答したのですが、自分が好きなことだからこそ、自然に知識が身についたのではないかと思っています。
祖母からは、反対こそされませんでしたが「そんなに虫ばっかり取って将来どうなるのか」と心配されていました。社会人になって、図鑑など何冊かの出版に関わるようになり「やっと虫で飯が食えるようになった」と言ったらとても喜んでくれました。
好きなことを貫き通して、今の子どもたちにメッセージをお願いします。
私は正直、精神的には、子どもの頃の自分と全く変わっていない気がします。ですが、一つだけ、得意なものと興味の対象が一致したということは、運が良かったのかもしれません。私は、興味の対象がたまたま生き物でしたが、「好きこそものの上手なれ」というのは至極名言だと思っています。自分が好きなこと、興味を持ったものなどをとにかく深く掘り下げる、それも義務感とかではなく、自然に単に本当に心から好きだから苦にならない、3度の飯より好きといったものを見つけられると同時に、本当に好きなことは、途中ブランクを空けてでもあきらめないでいると、将来輝けると思います。