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掲載開始日:2022年3月5日更新日:2022年3月5日
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令和3年度 市長コラム「手をつなぐ樹」(第380号から第401号)
コラム一覧
- 第401号 功労者との別れ(令和4年3月5日号)
- 第400号 他国とは違えども(令和4年2月20日号)
- 第399号 可能な限りの前倒しを(令和4年2月5日号)
- 第398号 交歓の輪の中で(令和4年1月20日号)
- 第397号 マフラーを幾重にも(令和3年12月20日号)
- 第396号 叡智を信じて(令和3年12月5日号)
- 第395号 油断はできないが(令和3年11月20日号)
- 第394号 コロナ効果の行方(令和3年11月5日号)
- 第393号 10月の木槿(むくげ)(令和3年10月20日号)
- 第392号 多くの方に支えられて(令和3年10月5日号)
- 第391号 英断の延長線上に(令和3年9月20日号)
- 第390号 達人を喪って(令和3年9月5日号)
- 第389号 愛する人を守るために(令和3年8月20日号)
- 第388号 五輪を真の平和の象徴に(令和3年8月5日号)
- 第387号 今、願うこと(令和3年7月20日号)
- 第386号 一日も早い完了を(令和3年7月5日号)
- 第385号 季節の移ろいは同じでも(令和3年6月20日号)
- 第384号 会うことができないままに(令和3年6月5日号)
- 第383号 最優先で取り組みます(令和3年5月20日号)
- 第382号 独自方式で(令和3年5月5日号)
- 第381号 かくなる上は(令和3年4月20日号)
- 第380号 春(はーる)よ来い(令和3年4月5日号)
第401号 功労者との別れ
コロナ禍により心ならずも多くの方と疎遠になる中で、自治体の発展に多大な貢献を果たされ、私にとってもかけがえのない恩人がまた二人逝去された。
一人は林貞夫さん。元調布市社会福祉協議会会長でわが市の福祉事業全般の骨格作りに寄与された大きな功績は万人が認めるところだ。また、共同募金事業に関して、人口一人当たりの募金額では調布市が多摩全域で毎年最上位に位置するのも林さんのリーダーシップによるものだ。さらに保護司としても28年もの長きにわたりお務め頂いた。
加えて、40年以上統率頂いた少年野球連盟の活動が、今日に至るまでどれほど多くの小学生球児に夢と希望を与えたことか。彼らのはつらつとしたプレーをバックネット裏から見守る林さんの慈愛に満ちたまなざしが目に浮かぶ。
林さんからは、私自身もことあるごとに温かい激励を賜った。
今一人は、元三鷹市長の安田養次郎さん。市長同士としてご一緒させて頂いたのは僅か1年足らずだったが、その後も最近まで毎年二人だけの懇親の場を持たせて頂いて、楽しい談論風発の中で心に沁みるご高説を拝聴してきた。
中でも忘れられないのは、最初にお会いした時、まだ何の土台もない新米市長の私に、ご出身の東北弁で、「とにかくまじみ(真面目)にやれ。まじみにやりんなば道は開ける」と力説して頂いたことだ。
お二人のお言葉の数々は、生涯、拳拳服膺(けんけんふくよう)させて頂きます。本当に有難うございました。
調布市長 長友貴樹
(市報ちょうふ 令和4年3月5日号掲載)
第400号 他国とは違えども
もう40年以上前になるが、海外に初めて住んだ時、先輩駐在員から、「交通事故を起こしたとき、絶対に自分から先に謝るな」と言われた。日本では、とかく周囲の人の感情を深く慮(おもんぱか)ったり、潔く身を処することを美徳とする風潮がある。しかし、それは他国では理解されないばかりか、下手をすると非を認めたとたん、全面的に責任を取らされることになりかねないとのことだった。
北京五輪スキージャンプ混合団体で、使用したスーツが規定違反となり失格した高梨沙羅選手が、競技後チームの同僚および応援していたすべての人に対して深い謝罪の念を表した。それに対して、日本サイドからは高梨選手を温かく擁護する言葉が次々に寄せられた。
しかし、海外メディアの報道ぶりを見ると、「高梨は(同様に失格した)他国の選手が大会関係者を批判したのに対し、責任を負うと謝罪した」と、他選手との対応が異なったことを客観的に伝えるに過ぎない、もしくはどう評価していいのか戸惑うような論調も見受けられた。
でも、日本人としてはたとえ他国から感傷的と言われようがよくわかる。高梨選手、あなたは本当によく頑張りました。有難う。
3回目のワクチン接種についても前回までと同様に電通大の体育館を使用できることとなり、18歳以上の全希望者に対する6カ月間隔での接種が可能となっています。接種券到着後、なるべく早めの接種をお願いします。
調布市長 長友貴樹
(市報ちょうふ 令和4年2月20日号掲載)
第399号 可能な限りの前倒しを
先月以来オミクロン株の感染急拡大が続く中で、当然ながらワクチンの3回目早期接種に対する要請が強まっています。
調布市は、2回目までの接種については都内で最も早い自治体に属し、希望者の大半に昨年9月までに打ち終えることができました。3回目についても、全希望者に対して可能な限り早く接種して頂くために計画の前倒しを図り、順次接種券を発送しています(註)。当初政府が目安としていた2回目完了から8カ月後の接種予定を1から2カ月早めることができる見込みです。なお、3回目の使用ワクチンは、原則として集団接種会場ではモデルナ、個別の医院における接種ではファイザーとなります。
また、1月下旬現在、ニーズに対応しきれない状況にあるPCR検査については、3月下旬まで、東京都事業として、グリーンホール小ホールに検査会場が設置されています。
さらに、昨年、地元6市連名で東京都に要請し、9月に味の素スタジアム内に開設された新型コロナウイルスに対応する酸素・医療提供ステーションは大変有効に機能しており、抗体カクテル療法等が実施されています。全体のベッド数は84床でまだ余力があると聞いています。
今後とも、さまざまな関係機関との連携のもと、あらゆる対策を講じて、全力で難局の打開に取り組んでまいります。
調布市長 長友貴樹
(註)接種券発送日(1)1月19日(当初の1月下旬予定を前倒し)。対象者は昨年6月末までに2回目接種を完了した2万3200人。以下同様。(2)1月26日(当初2月下旬予定)。対象者は7月末までに完了した4万2200人。(3)2月7日発送予定(当初3月末予定)。対象者は8月末までに完了した4万人。
(市報ちょうふ 令和4年2月5日号掲載)
第398号 交歓の輪の中で
迎えた年初め、市が関与する行事が一部2年振りに開催の運びとなった。
1月9日の日曜日に、多摩川河川敷で調布市消防団の出初式が行われた。麗らかな日和のもとに、関係者以外にも親子連れの市民の皆さんに観覧頂きながら、消防ポンプ車のパレードに始まり、北多摩睦消防組によるはしご乗りの演技、ポンプ車から多摩川に向けた一斉放水、調布市青少年吹奏楽団による演奏と続き、厳正な規律の中にも心楽しい内容だった。
そして、翌10日にはグリーンホール大ホールで出身中学校別に分けた2部制の成人式を挙行した。今年度、新成人となる市民は2235人であり、当日はそのうち1185人が出席した。出席率は53%と例年より高く、加えて市外からも91人が参加してくれた。式後も再会を懐かしむ交歓の輪がいくつもできたそうで、参加者にとってはコロナ禍の中で旧交を温める貴重な機会となったようだ。我々も、日常生活における触れ合いの場の必要性を改めて痛感した。
ただ、当然のことながら両イベントとも感染防止対策を講じた上で開催にこぎつけたものだが、現在、オミクロン株のまん延が急速に拡大しつつあり事態は予断を許さない。その推移を見ながら今後もイベントを含めた事業展開の可否を慎重に判断していくことになる。
調布市長 長友貴樹
(市報ちょうふ 令和4年1月20日号掲載)
第397号 マフラーを幾重にも
先月までは、例年と比較しても割合と温暖な日々が続いていたが、さすがに師走ともなると身体の芯まで凍えるような寒さを感じる日が多くなってきた。特に早朝の冷え込みはときに頬がこわばり、指先の感覚がなくなるほど厳しいものがある。
その中を毎朝6時台に、首に幾重にもマフラーを巻いて自転車で登校していく高校生と思しき女子生徒がいる。おそらく授業開始前のクラブ活動か補習に向かうのだろう。思わず、「頑張れ」と心の中で応援の言葉をかけたくなる。
目標を持って一つのことに打ち込むことは尊い行為だし、それがあってこそ日常生活に気持ちの張りを持ち続けることが可能になる。そして、長い間の努力が実を結んだ時には人生の喜びをしみじみ感じることができる。
ただ、人生を通じて誰しも数多くの目標を自らに課すものの、その達成率は果たしてどの程度だろう。当然ながら、その目標が高ければ高いほど成し遂げることは困難になる。
懸命にペダルをこぐ女子生徒にささやかなエールを送りながら、自分も常にわが身に対して士気を鼓舞する気持ちを持ち続けねばと思う。
コロナ禍の中で、皆様には今年も1年間さまざまなご苦労がおありだったことと存じます。来たる年においては、すべてのご家庭が多くの明るい話題に包まれますことを心からご祈念申し上げます。
調布市長 長友貴樹
(市報ちょうふ 令和3年12月20日号掲載)
第396号 叡智を信じて
調布市商工会が創立60周年を迎えられ、先日記念式典が開催された。昭和36(1961)年11月の発足以来、商工会が調布市の経済発展に中核的貢献を果たして頂いた功績は誠に顕著であり、歴代の役員および全会員企業の皆様に深く感謝申し上げたい。
今後も商工会が、会員企業のみならず、調布市全体のために大きな役割を担って頂くことを心から期待するところだが、その前提として、これからの調布市、また日本社会全体において、コロナ禍後にどのような変化が発生すると考えられるのだろうか。
NEDO(註)が現在までに公表された多くの識者の見解をまとめた調査によると、まずテレワークやオンライン授業、遠隔診療などあらゆるコミュニケーションにおけるオンライン化が急速に進展する。また、職住は接近から逆に分散化し、業種の消長としてはオンライン化や新たなライフスタイルに伴う新ビジネスが生まれる一方、飲食業や観光業の一部は産業規模の縮小を迫られる可能性があるという。さらに、技術開発や企業行動における指針にも人間中心の視点や自然との共存意識がより重要視されるようになるとしている。
それらの予測がどれほど現実のものとなるかはわからないが、これだけ大きな困難に見舞われつつも、その中から何かを前向きに学び取る人間の叡智を信じたい。
調布市長 長友貴樹
(註)国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構
(市報ちょうふ 令和3年12月5日号掲載)
第395号 油断はできないが
日本とは1万キロメートル前後の距離があるので実感しにくいが、ヨーロッパ諸国の主要都市はわが国と比較すると意外と北に位置している。ローマで青森市とほぼ同緯度。パリは北海道の北端、稚内市よりもかなり北にあり、ロンドンに至っては樺太の中央よりさらに北に位置している。
そのような緯度にもかかわらず、それらの国々が春から秋にかけては概ね温暖であり冬の寒さも多少和らぐのが、偏西風とメキシコ湾流のもたらす恩恵であることは中学校で習った。
とは言え、12月も間近になると、さすがに人々は厚手のコートを身にまとい、白い息を吐きながらうつむき加減で枯木立の中を行き交っていることだろう。ただ、その直前の10月から11月中旬あたりには、思わず息をのむような色づく木々による絶景を楽しむことができる。もっとも、東欧や北欧などと異なり、私が住んだ中欧諸国の景色では、紅葉はほとんどなく黄葉が主であったが。
そのようなことに思いを馳せるとき、以前にも書いたが、身近な秋の潤いに浸ってみたい思いが急速に募ってくる。高尾山や奥多摩の山肌を彩る極彩色の絨毯(じゅうたん)、もしくは300メートルにも及ぶ神宮外苑の銀杏並木など。果たしてまだ間に合うのだろうか。
やっとこうしたことに少しずつ関心が及んできたと言えようか。依然として油断はできないが。ただ、諸会合については、まだまだ慎重論が多いのだろうか。多くの方のご意見を伺ってみたいと思う。
調布市長 長友貴樹
(市報ちょうふ 令和3年11月20日号掲載)
第394号 コロナ効果の行方
「企業戦士」や「モーレツ社員」などという1960年代から70年代の高度経済成長期を象徴するかのような言葉はもう死語に近くなったのだろうか。
ひょっとすると、私が就職した70年代半ばにおいてもすでに、社会の風向きは人生におけるゆとりを求める方向に多少変容しつつあったのかもしれないが。しかし、新人研修の際に講師を務めたさる著名な経済評論家に、今で言うワークライフバランスについて恐る恐る問うたところ、言下に「20代の頃はそんなことを考える必要はない。ひたすら仕事にだけ取り組め」と一喝され、強い違和感を持ったことは未だに鮮明に覚えている。
ただ、その回答に反発はしたものの、その後仕事以外の時間を極めて有意義に過ごしたとはかりそめにも言い難く、30年近いサラリーマン生活の間、有給休暇を取得した記憶もほとんどない有様だ。お粗末なことに。現代の社会人がときに仕事を休んで、趣味や社会貢献に時間を費やす度合いが増えているとすれば、それは誠に好ましい傾向だと思うのだが、今後は果たしてどのように推移していくだろうか。
加えて、一気に拡大したテレワーク等の働き方改革がコロナ収束後も組織に定着すると仮定すれば、それはこれからの我々の生活様式に、また日本社会の構造にいかなる変革をもたらすのだろうか。新規感染者数の急減に戸惑い、さらなる感染者の増大に変わらぬ警戒感を抱きながら漠然と思いを巡らせている。
調布市長 長友貴樹
(市報ちょうふ 令和3年11月5日号掲載)
第393号 10月の木槿(むくげ)
若い人には信じられないだろうが、今から半世紀以上前の昭和30年代から40年代の日本においては、各テレビ局にドラマを自主制作する能力がまだ十分には備わっておらず、その代替としてゴールデンタイムに極めて多くのアメリカのテレビ映画が放映されていた。
多かったのは西部劇、刑事ものやホームドラマだったが、一時期、病院における療養を通した人道的なメディカルドラマが流行ったことがある。その代表作「ベン・ケーシー」の中で不治の病に侵された患者がこのように述懐する場面があった。「人間は生きているだけでこんなにも幸せなんだ」。人は日々の営みに忙殺される中で、ともすれば大切なことに思いが至らないままに時を過ごしてしまいがちだ。
10月に入ったというのに、木槿の花が咲き誇っていることにふと気がついた。目に突き刺さるような厳しい夏の盛りの陽光の時期にも、その鮮やかな花弁の色合いが我々に心の安らぎを与えてくれていたはずだが、今年は正直言ってあまりそのような強い印象がない。今からわずか2カ月前には、東京都のコロナ感染者がなんと連日5000人を超えていたのだ。
コロナに関してはまだまだ、喉元過ぎて熱さを忘れるというわけにはいかないが、秋の深まりとともに季節が移ろう情景を目のあたりにして心底癒される、そんな瞬間を大切にしていきたいとしみじみ思う。
調布市長 長友貴樹
(市報ちょうふ 令和3年10月20日号掲載)
第392号 多くの方に支えられて
コロナワクチンに関しては、12歳以上の希望する全市民に対して2回の接種を先月末までに概ね終了しました(註1)。8月に新聞社が実施した調査によると、9月までにほぼ打ち終えると回答した都内基礎自治体は23区中3区(註2)。26市では調布市のみでした。
これほど順調に接種が進んだことについて、医療関係者をはじめとする多くの方のご協力に改めて厚くお礼申し上げます。
ただ正直に言えば、今春以降、ワクチン配給量など常に不確定要因が多く、最も効率の良い接種体制をどうつくるか対応を模索する日々が続いていました。そして、今振り返れば6月が一つのヤマだったと思われます。同月後半に河野太郎大臣に求めた面会において、調布市に対し、それまでのファイザーに加えて、新たにモデルナを8月末までに6万人分供給する予定だとの言質(げんち)を直接得てようやく戦略が定まりました。しかし、そのモデルナワクチンの有効活用は、電気通信大学が集団接種会場とするために広い体育館を快く提供下さったことにより初めて可能になったものです。心から感謝いたします。
また、9月18日に味の素スタジアム内にコロナ対応の「酸素・医療提供ステーション」が開設されました。これは、我々の要望(註3)に基づく、今後の感染再燃をも視野に入れた東京都による施設整備です。機能を最大限発揮できるよう運営に可能な協力をしていきたいと思います。
調布市長 長友貴樹
(註1)9月末時点の推定接種率は、12歳以上の全対象者が約75%。65歳以上の高齢者では約89%。なお、当然ながら10月以降も希望される市民の接種は継続して可能です。
(註2)港区、台東区、墨田区。
(註3)8月26日に、北多摩南部医療圏6市(武蔵野、三鷹、府中、調布、小金井、狛江)の全市長連名で、新型コロナウイルスに対応する同医療圏内における臨時医療施設の早期開設に関する要望書を小池知事に提出。同ステーションでは、酸素投与と抗体カクテル療法が実施されます。
(市報ちょうふ 令和3年10月5日号掲載)
第391号 英断の延長線上に
東京パラリンピック最終日の9月5日、バドミントン女子ダブルス(車いす)で、世界ランキング1位の山崎悠麻、里見紗李奈ペアが堂々の金メダルを獲得した。決勝で第1ゲームを落としながら2ゲームを奪い返しての見事な逆転優勝に日本中が湧き立つ中、調布市役所の全職員はことさら大きな感慨に浸った。
なぜなら、山崎さんは4年前まで7年半の期間わが職場に勤務した元同僚であり、まさに今回の快挙は「身内の星」が打ち立てた金字塔だったからだ。彼女は市役所時代からすでに国際的に活躍する名選手だったのだが、東京パラリンピックにおける栄冠という至高の目標を立て、それを実現させるためにより良い練習環境を求めて民間企業に移籍されたのだ。退職の意向を伺った時には多少淋しい気もしたが、人生を賭けた大きな決断を受けて、我々は組織を挙げた全力の応援を続けていこうと誓い合った。
シングルスの銅メダルを併せた素晴らしい結果に心からの祝意を伝えさせて頂くとともに、今後の更なる活躍を期待し、新たなエールを送らせて頂きたい。
今回、調布市は応援アスリートと名付けてパラリンピックではもう一人、ボートの有安諒平選手。またオリンピックでは、バドミントンの桃田賢斗選手とサッカーの相馬勇紀選手という調布にゆかりのある方々に、市を挙げて声援を送らせて頂いた。
各選手にはそれぞれ全市民に大きな感動を与えて頂き深謝申し上げます。
調布市長 長友貴樹
(市報ちょうふ 令和3年9月20日号掲載)
第390号 達人を喪って
「市長、何か協力できることはないか。やれることは何でもやるから」。今から10年前の3月11日、東日本大震災が発生した直後に私の携帯に怒声のようなメッセージをくれた人がいた。鍛治真起さん。老若男女が愛好するパズル「数独」を世界中に広め、「数独のゴッドファーザー」の異名を持つ人物だ。
私にとっては、羨ましいほど奔放な生き様を体現された、まさに人生の達人とでも呼びたくなる素晴らしく魅力的な方だった。出会いのキューピッドは15年前の京王電鉄の広報誌「あいぼりー」。調布のまちを題材にした郷愁に満ちた彼のエッセイに共感するとともに、インタビューを通じた彼の人生観に強く惹かれ、不躾にも私から彼の会社ニコリに突然連絡して「押しかけ友人」になることを許してもらったのだ。
冒頭の震災時には、即座にニコリの社員数名が調布に来られ、同社の発行物を販売してその利益全額を被災地支援にあてるべく市に寄付して頂いた。
博識に裏打ちされた談論風発の楽しい会話と、遊興百般を極めるような素敵な余暇の過ごし方。自由人的な生き方だけが印象的にも思えるが、人生において最も大事なことについては絶対譲らないという鍛治さんの強固な意思を私は常に感じていた。
体調不良は昨年来だったそうだが、新聞によるいきなりの訃報。本当に寂しい。コロナ禍で心ならずも人づきあいが疎遠になる中、またしても長嘆息を禁じ得ない別れが訪れた。
調布市長 長友貴樹
(市報ちょうふ 令和3年9月5日号掲載)
第389号 愛する人を守るために
昨年来、言うまでもなく市の関与の有無を問わず、あらゆるイベントが中止のやむなきに至っている。そして、そのことについてのやるせない思いを述べることさえも憚られるような空気が社会全体に漂っている。なんと残念なことだろう。
たとえば「パラハートちょうふ」。ご記憶に留めて頂いているだろうか。「市内外の多くの方々がさまざまな障害に対する理解を深め、一人ひとりが寄り添う心を持ち、手を取り合って暮らせる共生社会の充実を図る」。そのキャッチフレーズのもとに、昨年1年間だけでも、福祉、健康、教育、文化、環境、スポーツ、まちづくりなどの多岐にわたる分野で100近い事業を展開する予定だったが、大部分が実施できないことになってしまった。
ただ、事業の中止はやむを得なかったとしても、もちろん共生社会充実の旗を降ろしたわけではない。東京パラリンピックの機会に、日常以上に、今一度その意義を強く確認したいと考えている。
ワクチン接種は順調に進展しており、市内で希望された高齢者はほぼ接種を終えていますが、次の重要ポイントの一つは若者の接種率を上げることです。
若い世代に申し上げます。ワクチンの効果により自身の罹患率が低下し、それにより周囲の方が感染する確率を下げることができます。愛する方を守るために、どうか早期の接種をお願いします。
調布市長 長友貴樹
(市報ちょうふ 令和3年8月20日号掲載)
第388号 五輪を真の平和の象徴に
7月23日、オリンピック東京大会が始まった。
開会式において、200を超える国・地域等の選手団が次々に入場してくるさまをテレビで長時間視聴しながら、改めて世界の広さを実感する。それとともに、行進する国々個々の国情に思いを致す時、世界最大のスポーツの祭典が平和裏に開催されるその瞬間にも、武力による威嚇に怯える人々が世界各地に存在する現実が脳裏をかすめる。
今大会は第2次世界大戦後19回目の夏季五輪となるが、果たしてその間に恒久的平和への体制づくりは間違いなく進展してきたと言い切れるだろうか。
世界を二分するような大戦争には至っていないが、大戦後も局地的紛争は絶え間なく発生し続けている。そして、その大きな要因の一つである大国の覇権争いは、互いに相手を非難し合いながらエスカレートし、軍縮においても容易に本格的な歩み寄りを見せようとしない。個別の紛争発生時における国連の対応の際にも、ミャンマー国軍の国民弾圧に対する制裁決議には中国が、ガザ停戦の順守呼びかけには、イスラエルを擁護する米国がそれぞれ反対するありさまだ。
3度目の日本における夏季五輪がいつ開催されるか分からないが、もう私が自分の目でそれを見ることはできないだろう。しかし、今よりはるかに安定した国際情勢の中で、感染症の懸念もなく穏やかに開催されることを心から期待したい。
調布市長 長友貴樹
(市報ちょうふ 令和3年8月5日号掲載)
第387号 今、願うこと
「市長、私は前の東京オリンピックの時は、小学校4年生だったんだ」。「そうですか、それじゃあ、私とほぼ同世代ですね」。
「それでね、前の年あたりから本当に開幕を楽しみにしていて、大会期間中は甲州街道のマラソンに駆り出されて優勝したアベベや日本選手に夢中になって声援を送ったり、国立競技場に連れて行ってもらったりしてね」。
「私は、当時関西に住んでいたので、東京の子どもたちが本当に羨ましかったですよ。友だちと『どの競技でもいいから、生で見てみたかったなあ』と言い合ったものです」。「そうだろうね。だから、今回また東京でオリンピックが開催されると聞いたときに、自分の家族、特にあの時の自分と同じ年頃の孫たちにぜひ見せてやりたいと思ったよ。自分が強い衝撃を受けたと同様の、一生心に残る大きな感動を与えてやりたいと思ったね。それがまさかこんなことになるとは」。
その方のお気持ちは痛いほどよくわかる。コロナ禍の中、万やむを得ないとは言え、せっかく東京に、そして調布にオリンピックがやってきたにもかかわらず、それに肌で触れる機会を子どもたちに提供できないことは、とても残念の一言で表現できるものではない。
かくなる上は、安全確保に徹した大会運営のもとで、たとえテレビ観戦からでも子どもたちが、選手たちの全力で戦う姿に、あるいは競技後の健闘を称え合うまなざしに何かを感じ取ってもらえればと願うばかりだ。
調布市長 長友貴樹
(市報ちょうふ 令和3年7月20日号掲載)
第386号 一日も早い完了を
高齢者へのワクチン接種は順調に進んでいます。予約率は8割を超え、接種を希望される方のほとんどがすでに予約されたと言えるかもしれません。目標とする7月末までには、間違いなく希望者全員に2回の接種を受けて頂くことが可能ですのでご安心下さい。
高齢者対応と並行して、当然ながら、市は64歳以下の市民に対する接種体制の整備にも取り組んでいます。16歳から64歳までの対象者に対する接種券はすでにお手元に届いていることと思います(註1)。
64歳以下の対象者数は高齢者の3倍以上であることから、6月初めより新たな集団接種会場の選定に全力であたってきましたが、このほど電気通信大学のご好意により、大学内の体育館などの大変広いスペースを提供頂けることとなりました。
我々の試算では、既設の調布駅前の接種会場に加えて同大学内にも会場を確保し(註2)、それに市内の多数の病院における個別接種を併せると、16歳以上の希望者に対するワクチン接種を政府が目標とする11月末よりかなり早く、9月末までには完了することが可能な見込みです。
ただし、言うまでもなく、それにはあくまで必要なワクチン量が国から安定的に供給されることが大前提となります。現在、そのことに対する確認を行っており、目途がつき次第、予約受付けを開始しますのでご理解をお願いいたします。
調布市長 長友貴樹
(註1)12歳から15歳に対する接種については、現在検討中です。
(註2)文化会館たづくり内での集団接種は、7月末で終了します。
(市報ちょうふ 令和3年7月5日号掲載)
第385号 季節の移ろいは同じでも
先月半ばの近畿および東海地方の入梅からなぜか1カ月近く遅れて、6月14日に関東地方にもようやく梅雨入りが宣言された。
その間に、この季節の代名詞ともいえる紫陽花はすでに咲き誇り、雨滴に光り鮮やかな彩りを身にまといながら、それに目を留める人々の心を和ませてくれている。
そのようなときに自分自身も一瞬ほっとするような感覚を覚えながら、「やはり昨年来、当たり前の潤いに自然に浸る心の余裕が不足しているかなあ」と自問する。桜の開花に春の訪れを実感して心浮き立ち、赤やピンクが新緑とのコントラストに映える満開のつつじに初夏の匂いを嗅ぎとり思わず深呼吸したくなるような。毎年誰しも、そのような情景に癒されながら季節の移ろいを感じてきたはずだったが。心のゆとりを取り戻すためにも、現在進展しているワクチン接種をより加速させていかなければ。
なお、私のワクチン接種について、これまで市民の方から時折ご質問を頂いておりましたので、現状を報告します。前期高齢者として今月初めに接種券を受け取り、それに基づき予約しました。その後、集団接種会場においてすでに1回目の接種を済ませ、来月前半に2回目を予定しております。
調布市長 長友貴樹
(市報ちょうふ 令和3年6月20日号掲載)
第384号 会うことができないままに
昨年、40年を超える親交があった同年配の友人を失った。先月その一周忌を迎えて再度寂しさを感じるとともに、コロナ禍の中での別れの切なさを改めて意識した。
諸活動の自粛が求められる社会状況下にあって、昨年初めから会う機会が無いまま彼が体調を崩しているとの情報がもたらされたのだが、結局入院先への見舞いもかなわぬままに永遠の別離となってしまった。脳裏に浮かぶまだ元気だった最後の姿から約半年後の訃報が未だに信じられない思いだ。
今年に入ってからも、市政に多大なる貢献を果たされた方々の突然のご逝去の報に接するたびに同様の感覚にとらわれている。まだまだお話しさせていただきたいことは数多くあった。平凡な日常生活におけるさまざまな方とのご交誼をより大切にしていかなければとつくづく思う。
市報6月2日臨時号および本号でお知らせした通り、75歳以上の方に加えて、65歳以上の方についても新型コロナワクチン接種の予約受付を開始します(註)。
65歳以上の高齢者の方に2回接種するためのワクチンは、6月中に全量確保できることがすでに確定しており、全高齢者に7月末までに2回の接種を終えて頂く準備が整いました。今後、順次予約を受け付けていきますので、どうか安心してお待ち下さい。
調布市長 長友貴樹
(註)予約開始日/75歳以上 6月3日(木曜日)午前9時から 65歳以上 6月7日(月曜日)午前9時から
(市報ちょうふ 令和3年6月5日号掲載)
第383号 最優先で取り組みます
各自治体に対する国からのワクチン配布については、当初の予定からは遅れがあったものの、65歳以上の高齢者分につき、全高齢者に2回接種する量が6月中には確保できることが確実な情勢となりました。
接種スケジュールおよびそれに伴う予約システムに関しては、先日の市報5月16日臨時号と本号を含めて、決定次第市報やホームページにてお知らせします。
予約受付については、4月に開始した際、予想をはるかに上回る電話による申し込みがあり、回線が飽和状態となり多くの皆様に多大なるご迷惑をおかけし、申し訳ありませんでした。今回、電話回線を増やしたほか、新たにインターネット予約も開始しました。
75歳以上の後期高齢者を対象として、4月に続き今回第2弾の集団接種を受け付けることに加えて、新たに各医療機関での個別接種も開始します。そして、その後に接種券を発送する65歳から74歳の前期高齢者分と併せて、政府が目標とする7月末までの全高齢者への完了を目指して、今後順次接種を継続していきます。
ただその際、必要な接種スペースの確保が最大の課題であり、場合によっては予定されていた公共施設の利用につき、中止や延期をお願いせざるを得ないケースが生じてきます。平穏な日常を取り戻すために、最優先でワクチン接種に取り組む現状をご理解頂きますよう、よろしくお願いいたします。
調布市長 長友貴樹
(市報ちょうふ 令和3年5月20日号掲載)
第382号 独自方式で
4月22日、いよいよ調布市においても、75歳以上の高齢者を対象にした新型コロナウイルスワクチンの集団接種が開始された。
それに先駆け前週15日に模擬訓練を行い、調布駅前広場に設営された約600平方メートルの集団接種用プレハブ施設において、市内の高齢者や医療従事者等の参加を得て、本番同様に接種態勢を綿密に確認した。
「調布方式」については、すでにテレビや新聞でかなり紹介されている。通常の場合は当然、被接種者が集団接種会場内で自ら移動して医師のもとに赴き接種を受ける。しかし、今回調布市においては、調布市医師会の先生方のご意見をもとに、接種を受ける市民はそれぞれの指定されたブース内で椅子に座ったまま、予診からワクチン接種、そして接種後の副反応確認まで終えることができる、という独自方式を採用した。言うまでもなく、被接種者、特にご高齢の方には身体的に非常に楽なシステムだ。また、巡回して接種して頂く医師の皆さんにはご負担をお掛けするが、国の想定よりかなり効率よく接種することができると見込んでいる。
22日はまず、大変順調に対象者への接種を終えることができた。今後、国からワクチンが順次届き次第、迅速に接種を進めていくことになるので、市報、市のホームページ等による情報を注視頂きたい。
調布市長 長友貴樹
(市報ちょうふ 令和3年5月5日号掲載)
第381号 かくなる上は
4月9日に小池知事から私の携帯に連絡を頂いた。「来週12日から東京都に新型コロナウイルス対策の「まん延防止等重点措置」が適用され、23区に加えて調布市を含む多摩地域の6市が対象となります。6市は飲食店の数や電車の乗降客数などに基づき選定しましたが、対応をよろしくお願いします」。私からは、「重点措置に沿った市の取組に全力を尽くします」と応じたのちに、「事態打開には都と市町村との一層の連携が不可欠であるため、これまで以上によく市町村と意見交換するよう、都庁の担当部局に改めて指示をお願いいたします」と依頼させて頂いた。
昨年来2度の緊急事態宣言発令などにより、厳しい行動制限が課されるなど日常生活上のあらゆる事柄に不便が生じる中で、全市民が大変困難な日々をお過ごしのことと存じます。ただ、残念ながら情勢はいまだ好転の兆しを見せず、今回、重点措置が適用されることとなりました。
かくなる上は、市内全域でウイルスのまん延防止をさらに徹底し一刻も早く通常の生活を取り戻すために、市民全員で努力を継続しなければなりません。具体的内容については本紙1・3面でご説明しますが、それぞれのご家庭において、5月11日までのご協力をお願いいたします。
調布市長 長友貴樹
(市報ちょうふ 令和3年4月20日号掲載)
第380号 春(はーる)よ来い
今年ほど啓蟄(けいちつ)(註1)を待ち侘びた年があっただろうかと、これまでの人生を振り返ってしみじみと思う。
年明け早々に、コロナウイルス感染者の爆発的増加を受けて2度目の緊急事態宣言が発令された。その後2月に当初予定した宣言解除には至らず、それから3月21日まで結果的に1カ月以上期間延長されることとなったのはご存知のとおりだ。その間に季節は移ろい、徐々に春の訪れが実感される中で桜も例年より早く開花のときを迎えたものの、それをもろ手を挙げて歓迎するという気分にもなりきれない。桜にとっても不憫なことだ。
赤い鼻緒のじょじょ履いておんもへ出たいと待っているのは、歩き始めたみいちゃんだが、昨年来、日本全国で何万、何十万人のみいちゃんが恨めしそうに窓の外を見つめていたことだろう。いや、みいちゃんとは全国民を指すと言えるのかもしれない。
年度が改まり、市役所においても新体制がスタートしましたが、変わらずコロナ禍における市民の皆様の感染予防、市民生活への支援、市内経済活性化に全力で取り組んでいきます。
ワクチンについても、接種に関する諸情報を順次、分かりやすく提供してまいりますが、ご質問に関しては既設のコールセンター(註2)をご利用下さい。
調布市長 長友貴樹
(註1)二十四節気の一つ。冬ごもりしていた虫が春の訪れを感じ、穴から這い出てくる頃。今年は3月5日。
(註2)調布市新型コロナワクチンコールセンター 電話042-444-7707(令和3年5月6日から、電話 0570-053127 に変更)
(市報ちょうふ 令和3年4月5日号掲載)