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ページ番号:3510

掲載開始日:2021年3月5日更新日:2021年3月5日

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令和2年度 市長コラム「手をつなぐ樹」(第358号から第379号まで)

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コラム一覧

第379号 10年が経(た)ち、そして

 東日本大震災からちょうど10年が経過した。発災直後の被災地の状況を伝える報道や自分自身が地震発生4カ月後に現地を訪れた際の記憶を思い起こすとき、今更ながらに当時の極めて悲惨な激甚災害の情景が脳裏に浮かび言葉を失ってしまう。
 ただ、その後の地域復興の現状を見るにつけ、やはり日本はたいした国だと思う。
 今から30年ほど前に出張で赴いた中米(註)のある国では、驚くことに、首都の中心部の広大な面積が荒れ果てた空地になっていた。聞けば、その20年ほど前の大地震後における復興が全く進んでいないとのこと。長期化した内戦の影響もあるとはいえ、破綻した国家財政のもとではとても再建などおぼつかないとの説明だった。
 それに比較すれば、この10年間に東北3県を中心とした復興は目覚ましく進展したと言えるのかもしれない。しかし、きれいに整地、造成された区画に、今後人々の新たな営みがどのように生まれてくるのかと考えるとき、先行きに対する地元の皆さんのお気持ちはどのようなものかと思わざるを得ない。人々が温かい交流のもとに日々を楽しく過ごし、互いに助け合う癒しに満ちたコミュニティーが生まれるにはそれなりの時間が必要であろうし、また以前の生活空間に戻れない方も少なくないと聞く。
 10年経過した現状を正確に理解した上で、効果的な今後の支援を国全体でなお継続的に考えていかなければならない。

調布市長 長友貴樹

(註)中米とは、狭義の意味ではカリブ海諸国を含まず、北米と南米の間のブリッジのような地域を指し、7カ国(パナマ、コスタリカ、ニカラグア、グアテマラ、エルサルバドル、ホンジュラス、ベリーズ)が存在する。

(市報ちょうふ 令和3年3月5日号掲載)

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第378号 もう一つの問題

 森喜朗氏の発言が物議を醸している。私は、この発言の女性を意識した観点への評価に対しては大多数の方と同意見で異論はないが、同発言のもう一つの問題点を指摘したい。
 森氏は(女性の発言を引き合いに出しながら)、「会議が不必要に長引くことは問題だ」との見解を示された。確かに、議論百出の会合においては、ときに本質をはずれた意見が飛び出すこともあり得るだろう(もちろん、発言者の性別に関係なく)。しかし、それを封じることが是という見方はどのような思いに基づくものだろうか。
 ある時、企業に勤める友人がこんなことを教えてくれた。「企業の役員会においては、大部分はトップの意思伝達と報告事項だけで、激しい議論が展開されるようなことはほとんどないんだよ。他の会社でも同様のようだけどね」。それを聞いて多少驚いた。いわゆる「シャンシャン大会(会議)(註)」である。そのような社会を形作ってきたのは概ね男だが、「出る杭は打たれる」、「長いものには巻かれろ」的な風潮のもとに、わが国では予定調和に徹することが常態化し過ぎてきたのではないだろうか。そして、多くの人がそのことに根源的な疑問を持たなかったことが、今回の発言を招いた要因の一つではないだろうか。
 この機会に、そのような風土に対する議論を深めることが必要ではないかと問題提起したい。もちろん、女性も含めた場で。

調布市長 長友貴樹

(註)すべての議題が異議なく採択され、短時間で終了する大会(会議)。シャンシャンは手締めの音を表す。

(市報ちょうふ 令和3年2月20日号掲載)

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第377号 半世紀の時を経て

 今から53年前、私は公立中学3年で高校に挑んだ。結果は1勝1敗。第1志望校には入れなかった。今から50年前、高校3年で大学に挑んだ。結果は0勝3敗。手も足も出なかった。
 私の場合、人生で初めての大きな試練ともいえる高校入試に失敗したショックは、かなり深刻だった。だが、自分の弱さに起因するとはいえ、後遺症を引きずって3年間をほとんど無為に過ごしたことは、今振り返ってやはりとても残念に思う。大阪と東京で2校に通ったが、高校時代の友人はほぼ皆無に近い。
 それに比して、大学入試の結果に関する心の動揺はなかった。合格する可能性が全くないことを自覚していたから。むしろあまりのお粗末さに苦笑を禁じ得ないほどだった。ただ、浪人後のリカバリーの可能性について考えるとき、当然ながら心は曇った。
 受験生の皆さん、いよいよ本番が近づき大変だね。特に昨年来のコロナ禍により、健康状態の維持については例年以上に苦労が多いことと思います。ただね、そのことを不安に思うのは決してあなただけではないはずだよ。
 どうか、頑張った日々を思い起こして最後の1秒まで粘り強く戦ってほしい。私は一浪して2勝2敗。結局、受験のトータルではかなり負け越したが、それでも目標をもって努力することは、すごく尊いことだったと思っている。
 全員に心からのエールを送らせて下さい。

調布市長 長友貴樹

(市報ちょうふ 令和3年2月5日号掲載)

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第376号 成果を信じて

 1月4日のサッカー・ルヴァンカップにおけるわがFC東京の3度目の栄冠(註)には多くの市民が快哉を叫ばれたことだろう。コロナ禍でともすると市内全体の雰囲気も沈みがちになる中、本当に久しぶりの朗報だった。
 しかし、コロナ感染の波はさらに深刻度を増し、今月7日には昨年4月に続き2度目の緊急事態宣言が政府から発令された。飲食店等対象となった業種の方々のご苦労は察するに余りある。また、在宅勤務や時差出勤の増加により家庭内にさまざまな問題が生じてくる可能性もあろう。さらに、何が不要不急かと言えば厳密な線引きが難しい場合もあろうが、午後8時以降の外出についても自粛を心掛けなければならない。とにかく、対象とされた地域の全住民が一体となって取り組まなければ事態の好転が見込めない以上、一人ひとりが最大限の協力をしていくしかない。
 市としても、宣言の要請内容を正確に把握した上で、それに沿った措置をとることになり、時間制限などにより、一部の公共サービスの縮小を余儀なくされている。
 一カ月を経過したのちに感染者数が減少に転じていることを心から期待することは当然だが、その間の生活においてお困りの事がらについては市としても、ともに考えさせて頂きたい。

調布市長 長友貴樹

(註)ルヴァンカップの前身であるヤマザキナビスコカップを含む。

(市報ちょうふ 令和3年1月20日号掲載)

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第375号 曙の光を待ち望みながら

 大変な年が暮れようとしている。この1年間どのご家庭も例外なく、家族の健康維持や仕事の円滑な展開において、多くの困難に直面されたことだろう。そして、未だに曙光(しょこう)の兆しを確実に感じられないことが人々の心に暗い影を宿している。
 しかし、この世界中を震撼させた未曽有の災厄に対して、これからもずっと、ただ首をすくめているわけにはいかない。今はまだアフターコロナの社会を声高に論じることは憚(はばか)られるが、徐々に展望を持ち得ることを期待したい。
 まず、今春以降あらゆるイベントや会合が中止のやむなきに至っているが、それぞれの催しに関して、改めてその開催意義を痛感された市民の方も大勢おられることだろう。来年復活が可能になれば、一層内容を充実させた上で再開されることをお祈りし、我々もそれを支援させて頂きたい。
 また、市役所業務についても、コロナ禍への対応を通して学んだ事柄を必要な変革へと建設的につなげていくつもりだ。テレワークの拡大などによる働き方改革の進展やデジタル化の推進によってもたらされる諸手続きの簡素化および市役所外で完結する手続きの拡大などに取り組んでいく。コロナに蹂躙(じゅうりん)されるだけで終わってたまるかとの強い反転攻勢の思いのもとに。

 「禍福は糾(あざな)える縄の如し」。来たる年、すべての方がご多幸に包まれることを心からご祈念申し上げます。

調布市長 長友貴樹

(市報ちょうふ 令和2年12月20日号掲載)

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第374号 スクラムを組んで

 先月22日に5市連携シンポジウム(註)を開催した。テーマは、「新型コロナウイルス感染症に対するこれまでの取組と今後の展望・課題」。
 この意見交換をより有意義なものにするために、基調講演の講師およびパネルディスカッションのコーディネーター役として、地方自治に関する専門家である片山善博早稲田大学教授(前鳥取県知事、元総務相)にも参加頂いた。
 まず片山教授から法に基づく行政と地方自治のあり方に関する基本的な取組姿勢が説明された。そして今回のテーマに関連しては、感染防止対策と社会経済活動を地域の実情に応じて考えることの大切さおよび取組の具体例としてコロナ禍における教育行政体制に関する見解が示された。
 その後、各自治体のプレゼンテーションに移り、私も調布市の実情として、感染防止と経済活性化および市民生活支援に関する諸施策を紹介するとともに、コロナ禍の影響により歳入の大幅減少が予想される来年度予算編成につき、その困難さを強く訴えた。
 シンポジウムを終えて、片山教授からは本件に関する基礎自治体の実情を知ることができてよかったとのお言葉を頂いた。また各市にとっても、コロナ禍への対応についての共通認識が深まるとともに、今後の施策のヒントを得ることができ有益なイベントだったといえよう。

調布市長 長友貴樹

(註)正式名称は、「5市市長が語る地域自治体連携シンポジウム」。平成22年に始まり本年で10回目。構成市は調布以外に、武蔵野、東村山、福生、東久留米。毎年、その時点における重要な行政案件をテーマとして、各市の取組を紹介し合うとともに自由な意見交換を行っている。今回は、コロナ禍への対応として、各市が感染症対策および社会・経済活動支援について、その取組状況を報告して議論を深めた。

(市報ちょうふ 令和2年12月5日号掲載)

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第373号 深い考察を自らの言葉で

 明治は遠くなりにけり。昭和40年代頃にこのフレーズがよく人々の口にのぼったことを覚えている。その時分私は10代半ばぐらいだったから、無論その子ども達の学力を国際比較する調査としては、OECD(経済協力開発機構)(註1)のPISA(学習到達度調査)(註2)がよく知られている。最新の調査は2018年に実施され、日本は調査対象79カ国・地域中、読解力15位、科学的リテラシー5位、数学的リテラシー6位であった。前回15年はそれぞれ、8位、2位、5位だったので若干順位は下降したが、依然上位の成績だ。ちなみに、各分野最上位は中国、シンガポール、香港、マカオなどのアジア勢が占めている。
 順位に過度に一喜一憂する必要はないと思うが、同調査とは異なる視点で、わが国の子ども達が個々にどれだけ多くの情報量を蓄積し、それをもとにさまざまな事象について、いかに理解、応用を深めることができているかは知りたいところだ。
 換言すれば、単純な記憶や浅い理解に留まらず、ものごとを深い洞察に基づき突き詰めて探求する思考力が徐々に備わっているだろうか。
 突飛な例を出すようだが、フランスの高等学校修了認証国家試験バカロレアの受験科目に哲学が含まれるのは有名だ。高校で哲学を学ばせた上で、試験において人の生き方や社会のあり方についての考察を課す(註3)。
 そのことの妥当性に関しては当然さまざまな意見があるだろうが、かたや日本の大学入試共通テストにおける記述式問題の導入について、8割以上の大学が否定的なことはあまりにも対照的であり、今後広範な議論が必要ではないだろうか。

調布市長 長友貴樹

(註1)国際経済全般について協議することを目的に設立された国際機関。欧州を中心に日米など37カ国が加盟。
(註2)義務教育を終えた15歳を対象に、2000年から3年に一度、「読解力」「科学的リテラシー」「数学的リテラシー」の3分野で実施されている。
(註3)たとえば、2019年の哲学の問題は、「芸術作品を解釈することは何になるのか」「義務を認識することは、自由を捨て去ることなのか」など。小論文執筆の制限時間は4時間。

(市報ちょうふ 令和2年11月20日号掲載)

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第372号 道路陥没への対応

 10月18日日曜日に東つつじケ丘2丁目の市道で道路の陥没が発生した。
 私もその一報を受け現場に赴いたが、閑静な住宅地に開いた縦横深さいずれも数メートルほどの不気味な穴を確認して本当に驚いた。同日の午前8時台に発見された道路のくぼみが時間を追うごとに亀裂から小さな陥没に進み、昼過ぎに大規模な陥没に至ったという。
 現場直近の数軒を訪問し、お見舞いかたがたお話しさせて頂いたが、当然のことながら皆さん先行きに大きな不安を感じておられた。当該地域では東京外かく環状道路工事が進行中であり、地下40メートルの地中を掘削するシールドマシンと呼ばれる4基の機械が7市区(註1)の地下を南北双方向から掘り進んでいる。そのうち南から北上する2基のマシンは世田谷区、狛江市をすでに通過し現在いずれも調布市の地下に存在する。先行する1基が陥没地点の真下を通ったのは約1カ月前とのことだ。
 市は、本件発生後速やかに事業者(註2)に対し、徹底的な原因究明を求めるとともに、不安解消のためにも中途段階を含めた行政および住民に対する丁寧な説明を強く要請した。
 地下工事と今回の陥没の因果関係はまだ確定していないが、原因調査の間、当然掘削工事は中断される。
 今後、関係自治体と連携を保ちながら、しっかりと対応していく。

調布市長 長友貴樹

(註1)練馬区、杉並区、武蔵野市、三鷹市、調布市、狛江市、世田谷区
(註2)国土交通省、東日本高速道路株式会社、中日本高速道路株式会社

(市報ちょうふ 令和2年11月5日号掲載)

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第371号 生涯、さまざまな薫陶

 先日、たまたま懐かしい方のお名前を耳にした。武井正教先生(註)。
 約半世紀前、浪人して通うことになった予備校で、教科ごとの履修申告を提出する際、社会科は歴史を2科目選択することにして、世界史の授業に選んだのが武井先生だった。
 履修案内に記された文章が大変格調高く強い関心を抱いたように記憶するが、授業はその期待を遥かに上回る素晴らしいものであった。常に背筋の伸びた凛とした姿勢から、一言一言確信に満ちた壮大な地球史のスペクタクルを滔々と語られる先生の講義は大変迫力に満ちたもので、終了後も毎回興奮の余韻が冷めやらぬほどであった。先生は都立高校でも教鞭をとられていたが、予備校の講義には大学や高校教員の聴講生もおられたと聞く。
 残念ながら、その講義内容を詳細に覚えているわけではないが、初回の厳命ははっきりと記憶している。先生は、「1年間の勉学に臨むにあたり、本日帰宅したらまず両親に感謝の念を伝えよ」と仰った。私は、そのような言葉にあまり素直に頷くような人間でもないのだが、その時は得心して教えに従った。
 私が後年、海外に仕事の場を求めたいと思うようになったのは、少なからず武井先生の講義が影響している。
 今回調べると、先生は4年前にすでにご逝去されたとのこと。改めてご遺徳を偲び心から感謝申し上げたい。

調布市長 長友貴樹

(註)武井正教(1922-2016年) 山梨県出身。1942年から旧制東京府立第六中学校(後の東京都立新宿高等学校)で教諭を務める。また、1957年からは予備校の講師を兼任。歴史学のみならず、広範な学識を背景に、世界史に構造的で包括的な独自の創造的体系を樹立。著書として「武井の体系世界史」がよく知られる。

(市報ちょうふ 令和2年10月20日号掲載)

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第370号 一人ひとりが国を

 7年8カ月ぶりに新政権が誕生した。最優先課題として、コロナ対策と経済再活性化に取り組まれるとのことだが、どなたが首班指名を受けたとしても当然のことだろう。全国の自治体においてもその対応は同様であり、国とよき連携を保ちながら、この国難に全力で立ち向かっていかなければならない。
 ただ、事態を打開するための現在の緊急的な諸対応の必要性には異論ないが、それと並行して今後わが国の進むべき道、たとえば安定した経済成長の確保などについても、多くの国民が参加した遅滞なき議論が必須であることを敢えて指摘しておきたい。コロナ問題が終息してからというわけにはいかない。
 政権と言えば、海の向こうの世界一の大国においても4年に一度の国のリーダーを選出する戦いが進行中だ。それに関して、二人の候補の個々の政策について論評することは差し控えるが、私は常々現職大統領の行動様式については大きな違和感を覚えている。自己の理念、政策を堂々と主張することは当然だが、ひとたびそれに他者が異論を唱えようものなら、即座にその相手を小馬鹿にする、威嚇する、徹底的に罵倒する。彼が45代目とのことだが、果たしてそのような対応に終始した米国大統領が以前にも存在したのだろうか。少なくとも、私の記憶するジョン・F・ケネディ以降には見当たらない。
 大統領選挙を通して、米国民のリーダー像に対する評価にも関心を寄せていきたい。

調布市長 長友貴樹

(市報ちょうふ 令和2年10月5日号掲載)

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第369号 未曾有の困難を乗り越えて

 若い頃に職場の先輩から質問された。「あのな、仕事が集中してにっちもさっちもいかない時、誰に助けを求めるのがいいと思う」。意味を理解しかねていると、「そんな時はな、周囲で一番多く仕事を抱えて忙しくしている奴に頼むんだ」。「???」。「そいつはきっと、『冗談じゃないよ。このくそ忙しい時に』なんて言いながら、あっという間に頼んだ仕事を片付けてくれるはずだ」。
 45年ほどの社会生活の中で、本当に寝る間もないほど忙しいと思ったことが二、三度はあった。ただ、検算や推敲の暇もないほど時間に追われ一心不乱に作業に集中していると、不思議なことに、普段思いつかない仕事上のいいアイデアや、業務効率化の手立てが不意に頭に浮かんでくることがある。それを懸案が一段落した時にその後の仕事にすぐに生かせばよいのだが、ハハハ、人間なかなか息継ぎもせずに勤勉さを維持することはそう容易ではない。
 意味はかなり異なるが、コロナ禍の影響で今年は春以来、小学校から大学に至るまで、どの学校もかなり変則的な授業体制を余儀なくされた。教える側も教えられる側もどれほど大変なことだっただろうか。
 ただ、このような事態だからこそ、学校再開を待つ間に、大人も子どもも、学業にまた学校生活全般に関して改めて思うことがいろいろあったのではないだろうか。それが今後何らかの改善につながっていけば多少は救われる気もするのだが。

調布市長 長友貴樹

(市報ちょうふ 令和2年9月20日号掲載)

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第368号 語り部の言葉を永遠に

 先月9日、長崎市の招待を受けて、被爆75周年長崎原爆犠牲者慰霊平和祈念式典に渡辺市議会議長とともに参列させて頂いた。安倍首相を含めて国内外からの多くの参列者を迎え、式は厳粛な中にも不戦および核兵器廃絶への強いメッセージを発信しつつ進行した。
 出席させて頂き本当に良かったと思う。式典のみならず、原爆資料館および追悼平和祈念館の見学や爆心地公園の視察を通して、改めて75年前の悲惨な状況に思いを致し心が痛んだ。私は、広島市には住んでいたこともあり何度も同市の平和記念公園などを訪れているが、今後も多くの人々が、広島および長崎に足を運んで頂きたいと思う。
 ただ、気掛かりなことは、現地でお会いした方の多くが異口同音に指摘しておられた「語り部」の高齢化だ。原爆を含めた戦争の真の姿を語り伝える体験者が極めて少なくなってきた。
 私事にわたるが、過去数年間に亡くなった私の両親は、現在存命ならちょうど100歳ぐらいになる。出征した父は、生前折に触れ、非人道的な戦いや極寒のシベリア抑留生活についての怒りを語り、宮城県人の母は仙台空襲の中を逃げ惑った際の恐怖を口にした。
 古希に近い私が、親が従軍したほぼ最後の世代であることを思うにつけ、記憶を風化させないこと、また絶対に戦争をしないという強固な意思を全国民が共有し続けることの困難さを思わずにはいられない。

調布市長 長友貴樹

(市報ちょうふ 令和2年9月5日号掲載)

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第367号 新聞のもたらす効用

 昨今、若者が独立した生活を始めるために住居を確保する際、昔と異なる判断が二つあるという。それは、固定電話を設置しないことと新聞を取らないことだそうだ。電話に関しては、これだけ携帯電話が普及した時代においてはそれも理解できる。
 しかし、自宅で新聞を取らないことに関しては、私は大いに異論がある。取らない理由としては、インターネット情報の氾濫などにより日々の出来事を極めて即時的かつ容易に知り得るようになったことがあげられるだろう。私だって毎日何度もインターネットニュースを見ている。
 しかし、新聞から得られる情報や知識は日々の社会の出来事に関することだけではない。文化・芸術のみならず、幅広い教養を身につける手立てとして、新聞の果たす役割は大きいと断言できる。
 私が新聞になじんだのは、小学生時代、毎朝父親が読んでいる新聞のうちプロ野球報道のみを見せてもらったことが始まりだが、それ以来約60年間一日も欠かさず読み続けてきて、どれだけ多くのことを知識として吸収してきたことだろうか。そして、正しい日本語を自然と学べたこともまた新聞のもたらす大きな効用だったと思う。じっくりと文章を把握するような読み方なしに、そのようなメリットを享受することは不可能だ。月に千円札何枚かを節約することにより失うものは決して小さくない。

調布市長 長友貴樹

(市報ちょうふ 令和2年8月20日号掲載)

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第366号 困難とは思えども

 7月16日午前9時5分、本来であればこの時刻に深大寺から聖火リレーがスタートする予定だった。コースは武蔵境通りを南下したのち甲州街道を東に向かい、三鷹通りを経由したのちUターンして甲州街道旧道から調布駅前に至る経路。そして、そのあと聖火は調布飛行場から島嶼(しょ)部に運ばれることになる。今のところコースには変更がない見込みであり、来年、コロナ禍を気にせずに沿道に多くの市民が集うことを期待したいものだ。
 そして、24日はいよいよ待望のオリンピック開会式。開催されていればどれほどの盛り上がりを見せたことだろうか。それを思うとき、私はどうしても小学校6年生で迎えた前回大会1964(昭和39)年10月10日の開会式を思い起こしてしまう。まだ戦後20年足らず。古関裕而作曲のオリンピック・マーチにのって各国選手団が次々に入場してくるさまを見て、戦争で辛酸をなめた世代は感極まって涙されたという。私も、子ども心に鳥肌の立つような興奮の中で言いようのない誇らしさを感じたことを記憶している。
 思えばこの半年余り、やむを得ぬこととはいえ、屈託なく笑い合える場面が誰にとってもあまりに少なすぎた。あのラグビーW杯の熱狂を忘れてしまいそうにもなるほどに。コロナ対策が劇的な進展を見せ、来年日本列島が、調布市が、再び歓喜の渦に包まれることを願わずにはいられない。

調布市長 長友貴樹

(市報ちょうふ 令和2年8月5日号掲載)

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第365号 今年も出水期を迎えて

 今月の九州および中部地方の豪雨被害は実に甚大なものでした。お悔みとお見舞いを申し上げるとともに、わが市としても昨年10月の水害を想起して緊張せざるを得ません。
 多摩川も、近年では平成19年と昨年の2回、一気に水量が増して河川敷が水没し、両年とも堤防が洪水に耐えられる目安である計画高水位(5.94メートル)を上回りました。そして昨年の増水以降、残念ながら1年では浚渫等の抜本的な工事を完了することは不可能で、降水量によっては、依然として多摩川が氾濫する危険性があります(註1)。
 昨年氾濫した根川雨水幹線については、狛江市と連携して国の許可がおり次第カメラを設置して水位を常時監視するとともに、適切な水門開閉を行います。その他当然ながら、行政として出来得る限りの手立てを講じますが、皆さんも家屋への浸水を防ぐために可能な備えを心がけて頂くようお願いします。
 さらに、避難勧告は豪雨下の夜間などには、避難経路が危険すぎて発令しにくい場合もあり得ます。高齢者や乳幼児等避難に支障が予想されるご家族がおられるご家庭は、豪雨の予報がある場合においては、当日早めの避難を心がけて頂くか(註2)、あるいは前日までに、親類、友人宅等を含め、市内外の安全な場所へ避難することをあらかじめご検討頂くようお願いします。

調布市長 長友貴樹

(註1)石原水位観測所の氾濫危険水位は約5メートルですが、避難勧告発令には、その他、降雨量の推移、小河内ダムの放水量などの条件を加えた総合的判断が必要となります。
(註2)避難勧告発令前に、避難準備・高齢者等避難開始を発令し、避難所を開設する場合もあります。

(市報ちょうふ 令和2年7月20日号掲載)

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第364号 先達の言葉

 大学を卒業して今まさに社会に出ようという時に、親と同年配の方からこのように言われた。「この瞬間以降、君たちの社会に対する見方が今より革新的になることはあり得ないよ」。そのときは、そんなもんかなあと思った。
 時代は1970年代半ば。ベトナム戦争や70年安保、はたまたロッキード事件と国内外の情勢は混沌としていた。その渦中にあって社会変革を求める若者の活動は活発であり、私も世の不条理を正す必要性は強く感じていた。暴力的な手段に賛同する気持ちはまったくなかったが。
 爾来40年以上の歳月を振り返ってどうだろう。社会の見方は自分自身ではあまり変わっていないように思う。そして、社会をより良い方向に変革していきたいという気持ちは持ち続けているつもりだ。しかし、その目的が日常生活における平凡な幸せを確保するためだとしみじみ思うようになったのは、比較的最近のことかも知れない。
 また、同時期に他の年配の方からはこうも言われた。「どんな人間の一生も、死後50年、100年経てば誰も覚えてなんかいないんだよ」。その言葉を最近とみに反芻する。その方がどのような意味で仰ったのか、今となっては確かめるすべもないが、「誰も覚えてなんかいない」からこそどう生きるべきということなのか。今後も考え続けていこうと思っている。

調布市長 長友貴樹

(市報ちょうふ 令和2年7月5日号掲載)

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第363号 ご遺徳を大切に

 6月3日、深大寺の張堂完俊山主(さんす)が逝去されました。
 私自身は、張堂様の謦咳(けいがい)に接する機会を二十年近く得させて頂き、その年月を振り返るとき、あらためて大きな幸運をしみじみと感じるものです。
 まず思い起こされるのは、大変月並みな表現で恐縮ですが、その温かいお人柄でしょうか。張堂様が自ら企画して、もしくは企画に関与して立ち上げられた集いは一体どれほどの数になるのでしょう。ナンジャモンジャ防災コンサート、薪能(たきぎのう)、こども薪能発表会、三多摩は一つなり交流事業、十三夜観月会。蕎麦については、師走の深大寺そばを味わう集いと7月の夏そばを味わう集い。その他枚挙にいとまなく、市内外の多くの方をさまざまな縁で結び付けて頂きました。そしてどの会合においても、その中央にはいつも慈愛に満ちた笑みを湛えた張堂様がおいでになりました。
 まださほど実感がわきませんが、もう二度とお会いできないと思うとやはりたとえようのない寂寥(せきりょう)感を禁じ得ません。
 釈迦如来像(白鳳仏)が国宝に指定されたときは当然のことながら大変お喜びでしたが、私には張堂様の高徳がこの僥倖(ぎょうこう)を招来したように思えたものです。
 張堂様、長年にわたる調布市に対する多大なるご貢献、誠に有難うございました。今後ともご遺徳を大切に、魅力あるまちづくりに全力を傾注することをお誓い申し上げます。

調布市長 長友貴樹

(市報ちょうふ 令和2年6月20日号掲載)

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第362号 もしも可能であれば

 コロナ禍への対応として外出自粛が続く中で、大阪の老舗料理店から暖簾分けされ半世紀近く営業を継続してきたうどんすきの名店が突如、首都圏内全6店の閉店を決めた。
 今回の営業自粛だけが閉店の原因ではないとのことだが、長年その味に舌鼓を打ち、店のたたずまいに心の安らぎを覚えてきた身としてはなんともやるせない。父の勤務により関西在住が長かった我が家は一家で同店を愛好し、さまざまな知人と折に触れ鍋を囲んできた。両親を含めご一緒した多くの方がすでに鬼籍に入られたが、今回、過ぎ去った日々が改めて偲ばれ、ひととき言いようのない哀惜の念が胸に迫ってきた。
 調布市に目を転じても同様に、この未曽有の経営環境悪化の中で多くの店舗が事業継続に苦慮しておられる。調布駅前のグリーンホール内で市民を始め多くの洋食ファンを魅了してこられたレストランの閉店も多数のマスメディアで報道された。私もさまざまな会合やイベント後の懇親会、また私的な集いで数えきれないほど同店を訪れ、至福の時を過ごさせて頂いてきた。私のみならず閉店を惜しむ声が極めて多いことを承知している。
 立ち入ったことを申し上げるのは大変恐縮ながら、まちの宝がたとえ形を変えてでも市内で今後も存続し続けることが可能であれば、まことに嬉しい限りなのだが。

調布市長 長友貴樹

(市報ちょうふ 令和2年6月5日号掲載)

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第361号 PCRセンターを開設します

 新型コロナウイルス感染防止対策の一環として、調布市はPCR検査センター(以下、センター)の開設を決定しました。
 現在、政府はPCRの検査件数を増加させるために各種施策を展開しており、それに呼応して東京都医師会も都内で47カ所のセンター設置を目指すと明言しておられます。
 そのような状況下、わが市も、1カ月以上前から早期のセンター設置を目標に関係機関との協議を重ねてきました。その過程で、東京都および多摩府中保健所には懇切丁寧な対応を頂きました。そしてそれに加えて、なんと言っても調布市医師会の献身的なご協力なくしては、本件が実現に至ることは不可能だったと申せます。繁忙を極める診療業務の寸暇を割いた、数次にわたる会議への出席や複数の候補地視察などを通じて詳細な検討を頂きました。事業開始後も運営主体として活動頂くことになり、心から感謝申し上げる次第です。また、今後は歯科医師会、薬剤師会の皆様にもお世話になる場面があろうかと存じます。どうぞよろしくお願いいたします。
 センターは、週に平日3日間、ドライブスルー方式で実施し、医療機関を通じた完全予約制。開設時期は5月中旬を目指しております(註)。
 全市民をコロナ禍からお守りするために、当然ながらさまざまな安全体制を万全に整備した上で運営にあたってまいります。どうかご理解ご協力をお願いいたします。

調布市長 長友貴樹

(註)厚生労働省の要請により開設場所は非公表としますが、近隣にお住まいの方のご理解を得るため、口頭および書面での説明を5月上旬から実施させていただいております。
 (注)本稿は5月11日に執筆したものです

(市報ちょうふ 令和2年5月20日号掲載)

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第360号 故郷に身を捧げて

 前岐阜市長の細江茂光氏が亡くなられた。常々健康には自信があると言っておられたのだが、ご本人も全く予期せぬ突然死だったと聞く。私にとっては、20年近くご交誼頂いた同世代のいわば戦友とも呼ぶべき存在で、思い出は枚挙にいとまなく深い寂しさが胸に迫ってくる。
 細江さんは10年以上の海外勤務を含め約30年間経済界で活躍された元商社マンで、その経験に裏打ちされた、効率的な市政経営を徹底的に追及する諸施策には大変多くのことを学ばせて頂いた。
 我々は、全国各地の延べ数十人の市長で構成される勉強会のメンバーでもあり、毎年意見交換の機会を設けていた。行財政改革、地方創生、教育、福祉、観光とテーマは多岐に渡ったが、常に細江さんが冷静沈着な口ぶりの中で、極めて論理的に自説を展開しておられた姿を昨日のように思い起こす。
 そのような多年に及ぶ交流の中で、細江さんがぽつんと漏らされたことがある。「人生なんてわからんものですね」。彼は古くからの友人たちの強い要請を受けて、愛する故郷の発展に後半生を捧げる決意を固め、50代前半でビジネスの最前線から転身されたのだ。
 細江さん、これからも長くお付き合いさせて頂きたかったです。本当に残念です。有難うございました。

調布市長 長友貴樹

(市報ちょうふ 令和2年5月5日号掲載)

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第359号 頑張ろう、調布

 4月7日、政府は緊急事態宣言を発出して、新型コロナウイルス撲滅に対する国民の協力を強く要請しました。それを受けて東京都も同日以降に緊急事態措置を公表し、都民の具体的行動指針を明確化しています。そのような状況下、市としての思いを皆様にお伝えいたします。
 一人暮らしを含め高齢者のみでお住まいの方、もともと何らかの基礎疾患が存在した方、事業継続の困難さに悩んでおられる方、雇用の先行きに不安を抱えておられる方、就職や進学で上京したもののすぐに自宅待機を余儀なくされた方、乳幼児を含めお子さまのケアに大変ご苦労しておられる方、現在妊娠中の方。その他、今回の非常事態の中で、すべての市民が日常生活上の何らかの困難な問題に直面しておられます。
 耐え忍ぶしかないとはいえ、展望の見えない濃霧、猛吹雪の中に身を置いて言いようのない不安感にさいなまれておられるすべての方々に申し上げたく存じます。一緒に頑張りましょう。どうか、一人で悩みすぎないで下さい。市役所は、でき得る限りの手立てを尽くして皆様をお支えいたします。ご相談をお寄せ下さい。
 視界が開け、みんなで快哉(かいさい)を叫ぶことができる日まで、「頑張ろう、調布」。

調布市長 長友貴樹

(注)状況は日ごとに変化していますが、本稿は4月10日に執筆したものです。

(市報ちょうふ 令和2年4月20日号掲載)

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第358号 ご協力をお願いします

 本紙3面にて記載の通り、先月15日、市職員が海外渡航から帰国(同月7日)後に新型コロナウイルスに感染していたことが判明いたしました。本件に関し市民の皆様に多大なるご心配をおかけいたしましたことにつき、改めてお詫び申し上げます。
 その後も残念ながら世界中で感染が蔓延し、わが国においても感染者数は増加の一途をたどっております。それを受けて、国は3月13日に成立した「改正新型インフルエンザ等対策特別措置法」に基づき政府対策本部を26日に設置しました。また、東京都もその前日25日に小池知事が緊急記者会見を開き、イベント等への参加自粛に加えて、在宅勤務を促すとともに、不要不急の外出を平日、週末を問わず避けるよう都民に強い要請を行っております。
 このような状況下、調布市は国、東京都の方針を踏まえ、市主催の各種イベントを中止または延期するとともに、期間を限定して公共施設の休館やサービスの一時停止を決めました。
 市民の皆様の健康を第一に考えた上の苦渋の決定であり、ご理解いただくようお願いします(註)。
 また通常であればこの季節に行われる各種懇親会、歓送迎会が多く取りやめになっています。妥当な判断と存じますが、市内経済を下支えするためにも、今後実施が可能になる時点で改めて開催をご検討頂きたくよろしくお願いいたします。

調布市長 長友貴樹

(註)状況は日ごとに変化していますが、本稿は3月27日に執筆したものです。

(市報ちょうふ 令和2年4月5日号掲載)

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調布市行政経営部広報課 

電話番号:042-481-7301・7302

ファクス番号:042-489-6411

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