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掲載開始日:2018年3月5日更新日:2018年3月5日
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平成29年度 市長コラム「手をつなぐ樹」(第297号から第318号まで)
コラム一覧
- 第318号 ご苦労様でした(平成30年3月5日号)
- 第317号 3桁の不思議(平成30年2月20日号)
- 第316号 ノーマライゼーション(平成30年2月5日号)
- 第315号 素晴らしい企画に感謝(平成30年1月20日号)
- 第314号 帰りなんいざ(平成29年12月20日号)
- 第313号 武蔵野の森に(平成29年12月5日号)
- 第312号 あの日、あの時(平成29年11月20日号)
- 第311号 余暇を名画とともに(平成29年11月5日号)
- 第310号 あと1000日を祝して(平成29年10月20日号)
- 第309号 両国の絆をさらに(平成29年10月5日号)
- 第308号 調布100日まつり(平成29年9月20日号)
- 第307号 バトンの重み(平成29年9月5日号)
- 第306号 黒く溶けた舗道(平成29年8月20日号)
- 第305号 ドローンに期待をのせて(平成29年8月5日号)
- 第304号 訓練を通じて(平成29年7月20日号)
- 第303号 一世紀の歩み(平成29年7月5日号)
- 第302号 爽やかなフィナーレ(平成29年6月20日号)
- 第301号 ワールドカップを思い描いて(平成29年6月5日号)
- 第300号 「学生時代」(平成29年5月20日号)
- 第299号 多摩全域の振興を(平成29年5月5日号)
- 第298号 決して風化させない(平成29年4月20日号)
- 第297号 日々を大切に(平成29年4月5日号)
第318号 ご苦労様でした
平昌オリンピックにおける日本選手団の活躍は、改めて物事にチャレンジすることの尊さを我々に教えてくれた。
羽生選手のブランクを全く感じさせないあの精神力はどこから生まれてくるのだろう。小平選手は五輪前に連戦連勝だったが、それゆえに逆に本番前に不安になることはなかったのだろうか。高木姉妹の雌伏(しふく)の8年が、今回最高の形で実を結んで本当によかった。高梨選手の圧倒的に強い時期は五輪と重ならなかったが、それでもメダルを獲得したことは素晴らしい。その他、骨折を一切言い訳にしなかった複合渡部選手の潔さや北海道の小都市で立ち上げたカーリングチームの世界への飛躍など胸を熱くしたシーンは数えあげたら切りがない。
また、どうしてもメダリストのみに人々の関心が集中しがちだが、すべての出場選手に健闘ご苦労様と申し上げたい。厳しい選考を経て日本代表になるだけでも大変なことなのだから。
そして、閉会式に臨んだ各国選手団が見せた本当にリラックスした和やかで微笑ましい交歓のありさまは、まさに平和の祭典と呼ぶにふさわしい光景だった。
9日からはパラリンピックも開催されるが、さわやかな感動の余韻に浸りつつ、2年後の夏季東京大会に思いを馳せたい。
調布市長 長友貴樹
(市報ちょうふ 平成30年3月5日号掲載)
第317号 3桁の不思議
日常、生活していて素朴な疑問を繰り返し抱くことがあっても、人生に関わるような重大事ではないのでとことん突き詰めるまでには至らない。そんな経験をどなたでもお持ちではないだろうか。
私は以前より、なぜわが国における数字の区切りが3桁ずつなのだろうかと不思議に思っている。言うまでもなく、日本の数の数え方は、万、億、兆と4桁単位である。にもかかわらず3桁で区切ろうとするから読みづらくてしょうがない。3桁単位のコンマは、千、百万、十億ごとに区切られているので読み間違いも頻繁に発生する。表記上も20千とか300百万など本当に不可解極まりない。4桁で区切れば2万、3億と、読み書きを間違うことなどあり得ない筈だ。
この区切り方は明治以降のことだろうか。欧米の言語では普通数字の区切りが3桁ごとなのでその影響であることは想像に難くないが、それにしても、なぜわが国でそんな不合理なことが、是正されないまま継続されているのだろう。そのために、日本国中の職場で、学校で、毎日おびただしい数のミスが発生しているというのに。
もし3桁区分の合理的な理由があるのなら、どなたかに教えていただきたい。それがないなら、いつの日か国民的是正運動を起こしてみたいとひそかに思っている。
調布市長 長友貴樹
(市報ちょうふ 平成30年2月20日号掲載)
第316号 ノーマライゼーション
NPO法人調布心身障害児・者親の会が、その前身である昭和43年の「親の集い」発足から数えて今年満50周年を迎えられました(註)。
半世紀の歩みを振り返り、月並みな言い方で恐縮ながら、多くの困難を克服しながら活動を拡大してこられた会の皆様に改めて心から敬意を表させていただきます。
今回拝読した会の複数の記念誌には、多くの会員の方の時代ごとのメッセージが寄せられています。会が組織されたことにより、悩みや意見を交換する場ができたことへの安堵感。長年の希望がかなって徐々に市の施設が整備されていくことに対する活動の達成感。全ての時代に共通した、自らがお子さんをケアできなくなる将来への不安感。どの思いも誠に切実なものであり、読ませていただきながら、今後のこの分野における行政の取り組みにつき身の引き締まる思いを新たにした次第です。
ブリタニカ百科事典には、「ノーマライゼーションとは、障害者や高齢者がほかの人々と等しく生きる社会・福祉環境の整備、実現」とあります。
私も近親者の例などに接して、誰もが歳を重ねるにしたがって身体機能が低下する、すなわち障害を有するようになることを今更ながらに痛感しています。みんなが支え合うぬくもりのあるまちを形成するために、全市民のご協力をお願いいたします。
調布市長 長友貴樹
(註)初回会合、昭和43年3月31日。参加者16名
(市報ちょうふ 平成30年2月5日号掲載)
第315号 素晴らしい企画に感謝
平成30年調布市成人式を1月8日に挙行した。今年の市内新成人は2373人(註1)。式への出席者は現在市外に居住している方を含めて1289人で昨年を上回った。
調布中学の生徒さんによる迫力溢れる和太鼓演奏に始まって、第2部のアトラクションでは、FC東京からのメッセージのあと、白百合女子大学および桐朋学園芸術短期大学の学生さんによるチアリーディングとダンスパフォーマンスで花を添えて頂いた。その後、サプライズゲストとして結成20周年を迎えられたお笑いのテツandトモさんが出演され、極めつけは20年前のホラー映画の主人公「貞子」の登場。場内のボルテージは最高潮に達した。実行委員を始め多くの関係者の皆さん本当にご苦労様でした。全国ニュースに取り上げられた「貞子」の企画に関しては、角川映画のご貢献に感謝申し上げます。
他方、晴着販売・貸出会社の突然の営業停止により予約した晴着を着られないという何ともお気の毒な事件が他自治体で発生した。事業活動が破綻したのなら、当日以前になぜそれを公表しなかったのか。そうすれば、他で振袖を工面できる人もいただろうに。被害者が可哀そうでならない。被害者を対象にもう一度成人式を開催する案も浮上していると聞く。それが可能になることを願うばかりだ(註2)。
調布市長 長友貴樹
(註1)平成9年4月2日から平成10年4月1日までに生まれた方。男性1244人、女性1129人(平成29年12月31日現在)
(註2)執筆は1月12日
(市報ちょうふ 平成30年1月20日号掲載)
第314号 帰りなんいざ
社会生活も40年を超えるほどになると、思い起こして本当にたくさんの方にお世話になったなあとしみじみ思う。
そのうちの尊敬する先輩の一人が、ある時仰った。東京に就職が決まって、いよいよ生まれ育った郷里を後にしようとした時、父上がはなむけの言葉としてこう言われたそうだ。「思い切ってやってこい。困難にくじけることなく全力で頑張れ。一度や二度うまくいかなくとも決して諦めるな。成果を上げるまでとことん粘れ。安易に弱音を吐くことは許さん」と。しかし、その言葉にこうも付け加えられたそうだ。「だがな、最後の最後まで全力を傾注して、それでもうまくいかなかった時、万策尽くしてなお武運つたなく、人に頭を下げるのを潔しとしない時は、その時は帰ってこい。尾羽(おは)打ち枯らす前にな。ふるさとはいつでもおまえを迎えてやるぞ」。
私も親から多少似たようなことを言われたことがある。子を思う親の心情は同様なのだろう。
年の瀬を迎える頃になると、いつも脈絡なく折々の人の顔が浮かんでくる。
皆様はこの1年をどのように過ごされましたでしょうか。明年がすべての方にとりまして幸多き年となりますことを心からお祈り申し上げます。
調布市長 長友貴樹
(市報ちょうふ 平成29年12月20日号掲載)
第313号 武蔵野の森に
「武蔵野の森総合スポーツプラザ」竣工と聞いて、みなさんはすぐに何のことかお分かりになるだろうか。味の素スタジアムの正面入り口から道を挟んだ向い側に大きな施設が建築中でしたよね、と申し上げると思い当たって頂けるかと思う。
そう、東京都が建設した総合スポーツ施設が完成し、11月25日にいよいよオープンの日を迎えたのだ。その内容は、総面積3万平方メートルで、大小2つのアリーナ(体育館)と50メートル屋内プールを擁している。大アリーナは4900平方メートルで1万人の収容能力を誇る。小アリーナもバスケットボールコート2面分を有し武道場にも転用できる。これで、各種スポーツの国際大会や音楽の大コンサートが開催可能なスポーツ・文化イベントの一大拠点が市内に誕生したことになる。
思い返せば、しみじみと幸運を感じる。この施設の建設が都によって決定された後に2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催が決定したわけで、同施設の存在により、味スタにおける競技実施に加えて数種目の競技枠(註)が多摩地域にも割り当てられることになったのだ。
施設の誕生に臨み、これを一つの起爆剤として、調布市のみならず多摩地域全体の観光、文化、産業振興につなげていく方策を今後、各分野の方々と話し合っていきたいと考えている。
調布市長 長友貴樹
(註)味の素スタジアム(東京スタジアム)では、東京2020オリンピック競技大会の7人制ラグビー、近代五種(水泳、馬術、ランニング、射撃)、サッカーが実施され、武蔵野の森総合スポーツプラザでは、東京2020オリンピック競技大会の近代五種(フェンシング)、バドミントンと東京2020パラリンピック競技大会の車いすバスケットボールが実施されます。
(市報ちょうふ 平成29年12月5日号掲載)
第312号 あの日、あの時
家にいる時間帯はテレビに目を向けていることも多い。主に見るのは、ニュースやドキュメンタリーなどの報道番組とスポーツ中継だ。ドラマはあまり見なくなった。ストーリーに対する関心も一因だが、連続ものなどは欠かさず見ることが難しいのでどうしても敬遠してしまう。
ドラマと反比例して、以前より頻繁に見るようになったのが紀行番組だ。国内外の風光明媚な情景に触れて自然と癒されたり、その地域にまつわる歴史や文化に関する解説を興味深く拝聴して遠い古(いにしえ)に思いを馳せたりすることは、なんとも心楽しいものだ。
また、ナレーションなどにあまりとらわれず、移り変わる風景のみを心を空っぽにして眺めていると、あたかも自分が電車に揺られて旅をしているかのような錯覚に陥る。居間でグラス片手に味わう旅情も悪いものではない。
さらに、紹介された地域や都市が、これまでの自分の人生に何らかの関わりがあった場合、ふと脳裏に長年、心の中に封印してきた思いがフラッシュバックのように蘇(よみがえ)ってくることがある。言ってみれば、「脈絡なき追憶」とでも呼ぶような。甘いことも苦いことも。
振り返ることが多い地点まで人生が差しかかってきた証左なのか。今月、高齢者の一員と正式に認めて頂けることになった。
調布市長 長友貴樹
(市報ちょうふ 平成29年11月20日号掲載)
第311号 余暇を名画とともに
「調布に映画館が復活したんですね」。長年、市内にお住まいの女性が、感に堪えたようにそうおっしゃった。そのご様子に、「映画のまち調布」の市民感情を如実に感じ取ることができた。
調布市は、昭和の初めに映画撮影所が完成して以来、昭和30年代をピークとする映画産業の歴史とともに歩んできたと言っても過言ではない。現在でも、市内には二つの大きな撮影所を始め映画・映像関連企業が40以上存在している。それゆえに、市民のあいだには映画に対する思い入れも強い。その映画のまちに、待望久しかったシネマコンプレックスがついに誕生したのだ。その規模は、11スクリーン、1650席と東京都全体でも最大級だ。
多くの方に足を運んで頂きたいと呼びかけている手前、自らも体験せねばと先日初めて訪れた。もともと映画は大好きだが、近年はその機会に恵まれなかった。
大スクリーンの迫力が期待どおりであることに加え、シートの幅や前の座席との距離などが極めてゆったりと確保されていることに驚かされた。快適この上ない。
入場券の半券でサービスを受けられる店も190店(飲食店その他)以上あるし、年内は市の助成による割引も実施している(註)。余暇に一度足を運ばれてはいかがでしょうか。
調布市長 長友貴樹
(註)
- 半券サービス
市内の半券サービス加盟店で、イオンシネマ「シアタス調布」の当日座席指定券半券を提示することで、その日のみ各店舗が独自に設けたサービスを受けられる。詳細は調布市商工会ホームページ参照。 - シネマでお出かけサポート
12月31日まで、市内在住の子ども(中学生以下)、高齢者(75歳以上)、障害者が通常料金から500円割引で映画を鑑賞できるサービス。詳細は調布市ホームページ参照。
(市報ちょうふ 平成29年11月5日号掲載)
第310号 あと1000日を祝して
調布の花火大会を毎年心待ちにしておられる方がこんなにも多いのか、ということを今春以降痛感させられている。「今年は秋の開催になるんですって」との質問を百回ほども受けただろうか。有難いことだ。
「映画のまち調布“秋”花火2017」。来週28日の開催がいよいよ間近となった。澄み切った夜空に華麗な9000発の大輪の花が咲く。どうか大勢の方にご堪能いただきたい。
すでにご紹介した通り、調布駅前の大型商業施設「トリエ京王調布」の開業に呼応して、市内全域で一層の商業活性化を図ることを目的に、9月末から「調布100日まつり」と銘打ってさまざまなイベントを実施しており、花火大会もその一環として秋に開催するものだ。当日は、今月催された「調布市商工まつり」にて選ばれた3人の新たなミス調布の方々にも調布市観光親善大使として彩りを添えていただく予定だ。
今一つ、10月28日は東京オリンピック開幕のちょうど1000日前にあたる。先日も世界水泳選手権の銅メダリストで市内「アクラブ調布」所属の3選手が結果報告のため市役所にお見えになった(註)。オリンピックでの健闘を心から期待するものだ。それを含め、日本選手団の大活躍への思いも込めて威勢よく花火を打ち上げたい。
調布市長 長友貴樹
(註)ハンガリー・ブダペストで7月14日から30日の期間開催された第17回世界水泳選手権大会シンクロナイズドスイミング競技において、チームテクニカルとフリーコンビネーションで銅メダルを獲得した小俣夏乃選手、河野みなみ選手、大澤友里子選手(フリーのみ)が表敬訪問。
(市報ちょうふ 平成29年10月20日号掲載)
第309号 両国の絆をさらに
先月24日に、サウジアラビアンフットサル国際親善カップ2017が挙行された。今年で16回目の開催となる。
同イベントは、2002年の日韓W杯サッカーの際に、調布がキャンプ地としてサウジアラビア代表チームに選んで頂いたことに由来する。その後、市内有志を中心に「調布市サウジアラビア友好会」が組織され、今日まで本イベントを含む親善促進の活動が継続されてきた。その間、2003年から毎年、アラブイスラーム学院のご協力により、多くの調布市内児童が保護者とともにイスラーム文化およびアラビア語を学ぶ体験学習会も実施されている。
そのような経緯で深まる両国の絆をさらに強固にすることを目的として、市は内閣が募集した2020年オリンピック・パラリンピックにおけるホストタウンに名乗りを上げ、サウジアラビアのホスト市として正式に承認された(註)。今から3年後を目指して、同国を迎えるためのさまざまな取組を実施していく。そのことをフットサルの翌日25日に催された同国ナショナルデーにて、出席された河野外相に申し上げたところ、「頑張って下さい」と激励を頂いた。
さらにサウジアラビアは、来年のW杯サッカーロシア大会への出場をすでに決めている。日本チーム同様に応援していきたい。
調布市長 長友貴樹
(註)ホストタウンとは、2020オリンピック・パラリンピック競技大会開催に向け、スポーツ立国としてのアピール、グローバル化の推進、地域の活性化、観光振興等に資する観点から、参加国・地域との人的・経済的・文化的な相互交流を図る地方公共団体のことで、調布市は平成28年1月26日にサウジアラビアのホストタウンとして登録された。
(市報ちょうふ 平成29年10月5日号掲載)
第308号 調布100日まつり
調布駅前に建設中だった3館の商業ビルがいよいよ来週29日、一斉に開業する。決して大げさな意味ではなく、昭和30年4月1日に市となって以来、調布は最も大きな商業的転換期を迎えることになる。
この商業施設の総称は、「トリエ京王調布」。トリエとは、ラテン語で3を表すtriとアイスランド語で樹木を意味するtreを合わせた造語で、3館が3本の大樹としてまちの発展とともに成長していくようにという思いが込められている。
施設には、新宿方面から順にABCと記号が付されており、最も東寄りのA館にはファッション、雑貨、食物販等の63店舗が入り、最上階の5階は11店のレストラン街となっている。中央のB館の大部分は家電量販店で全フロア4階の延床面積は6000平方メートル。そしてC館は「映画のまち」として待望久しかったシネマコンプレックスおよびカフェ、レストランなどで構成されている。映画館は全11スクリーンで総座席数約1650席(最大ホールは530席)とのことだ。
市としては、この機に一層の商業活性化を図ろうと、多くの皆様のご協力の下、9月末から年内いっぱい「調布100日まつり」と銘打って70近い魅力的なイベントを実施することとしています(註)。どうぞお楽しみに。
調布市長 長友貴樹
(註)トリエ京王調布オープンを契機とした調布の魅力発信・活性化の取り組み。9月23日発行の市報特集号や市のホームページをご参照下さい。
(市報ちょうふ 平成29年9月20日号掲載)
第307号 バトンの重み
明治時代に生まれた方は、現在、日本中に総勢何人おられるのだろうか。各種人口統計を見ても、そのような数字は案外見当たらないらしい。推計では約1万人とも言われる。それでは大正生まれの方は?
そう考えながら、当該世代の方々が極めて少なくなった現時点において、その下の自分たちの世代がすでに社会の様々な局面における主導的立場を担っているという至極当たり前のことを改めて意識する。否、「担っていた」という表現のほうが正確かもしれない。もはや還暦も過ぎて、組織における役割も一旦終了した方が多くなっている年代なのだから。
過ぎ去ってみればあっという間にも思えるが、最近、一体我々の世代は、数十年の社会生活の中で国の発展に関して十分な貢献を果たしたと言えるのだろうか、と自問することが多い。その答えは歴史的評価に委ねるしかないのかもしれないが、現存する国内外の解決困難なさまざまな課題に思いを致すとき、次世代以降の人たちに対する自責の念が多少残るというのが正直な気持ちだ。かたや、上の世代に対してはやはり、戦後の復興からわが国を繁栄へと導かれたことに対する敬意を覚えざるを得ない。
果たしてどの国、どの時代も、このような形で世代間の継承がなされていくものだろうか。
調布市長 長友貴樹
(市報ちょうふ 平成29年9月5日号掲載)
第306号 黒く溶けた舗道
空に覆いかぶさる入道雲。地平線まで続く向日葵(ひまわり)畑。永遠に鳴りやまぬような蝉の大合唱。脳裏に浮かぶ夏の情景は、人それぞれに異なるだろう。
私の場合、夏の強烈な思い出の一つは、アスファルトかコールタールが高温で黒く油状に溶けた舗道だ。中学時代、親に買ってもらったテニスシューズにその油がつかないように細心の注意を払いながら、一日も欠かさずに夏休みのコートに通った。
小学校で熱中した野球を続けたかったのだが、いかんせん身体が小さすぎた(その後、高校入学時にはついに学年でもっとも身長が低くなり、改めて大きなショックを受けることになる)。
それで、身長差を多少とでも克服できる競技ということで軟式テニスを選んだ。と言っても、上背が必要な前衛は所詮無理だったが。そして大会に出て、人口40万人ほどのまちで1位になった。素質があったわけではない。ひとえに甲子園球児のごとき猛練習の賜物だ。あれだけ練習すれば誰だって上達するだろう。それだけ必死になった一番の理由は、やはり小柄な体躯では何かで優位を保たねば生きづらいという防衛本能だったと言える。今、思い起こせば、健気にも滑稽にも思えるのだが、あの時点では、本気でそう思いつめていた。
半世紀後の舗道には、もう溶けた油は見受けられない。
調布市長 長友貴樹
(市報ちょうふ 平成29年8月20日号掲載)
第305号 ドローンに期待をのせて
無人航空機ドローンの用途は、現在世界中で飛躍的に拡大しようとしている。にわかには信じ難いが、中東などでは近い将来、ドローンタクシーが誕生するという噂もある。
そのドローンを使って、大規模災害時に被災状況を迅速に把握するとともに、上空から撮影した映像をもとに被災エリアの地図を作成するという先端技術がすでに日本にも存在する。その技術が、発災時に住民の被害をなるべく小さくする上で自治体にとって極めて有益なことは言うまでもない。
そこで、調布市は今年3月に狛江市にも呼び掛けて、調布市内に本拠を置くNPO法人(註)との間で「災害時における無人航空機を活用した支援活動等に関する協定」を締結した。その協定の輪が近隣4市(府中、日野、多摩、稲城)にも広がることとなり、先月法人との間で調印が行われた。ドローンの活動エリアが6市に拡大することによって、全協定参加自治体の享受するメリットもより大きなものとなる。
法人理事長の古橋教授とわが市は、過去数年来、まちづくりにおける地図の活用をテーマに共同事業を継続してきた。その関係が、このような多くの自治体が参加する大事業の誕生を可能にしたわけで有難い限りだ。
今後とも、官民問わず、さまざまな方たちとの協働の可能性を積極的に模索していきたい。
調布市長 長友貴樹
(註)クライシスマッパーズ・ジャパン。理事長 古橋大地青山学院大学地球社会共生学部教授。
(市報ちょうふ 平成29年8月5日号掲載)
第304号 訓練を通じて
今月前半に九州北部を襲った記録的豪雨は、福岡、大分を中心に各地で甚大な被害をもたらした。
気象予報の精度は以前と比較して飛躍的に向上しているが、それでも毎年のように大きな被害が発生していることに改めて恐怖感を覚える。今回も「線状降水帯」(註1)の危険性が一部指摘され、「大雨特別警報」(註2)も発令されていた。2年前の鬼怒川においても同様だったが、異常な降水量が予想されたにもかかわらず被害を防ぐことは極めて難しい。河川の氾濫や山肌を大きくえぐるような大規模地滑りといった自然の猛威、そしてそれらによる家屋の壊滅的な損壊などの報道を目の当たりにする時、物理的な対策の限界を考えてしまう。
他方、近年の異常気象も大変気になるところだ。昨年8月には北海道に観測史上初めて1年に(しかも1週間以内に)3つの台風が上陸した。また、今月7日には同じく北海道の音更町(おとふけちょう)で全国最高気温が観測された。地球規模の異常現象が影響しているかどうかは判然としないが、いずれにしても、これまでの常識が通用しない事態の発生をも常に覚悟する必要がありそうだ。
5月に実施した総合水防訓練、また9月3日に東京都と合同で行う総合防災訓練などを通じて、あらゆるケースに対する備えをより強固なものにしていきたい。
調布市長 長友貴樹
(註1)積乱雲が帯状に集まる現象で、短時間に局地的な集中豪雨を引き起こす。2014年の広島土砂災害や2015年の関東・東北豪雨でも発生。
(註2)数十年に一度の降雨量となる大雨が予想される場合に気象庁が発表して最大限の警戒を呼びかける。2013年8月から運用開始。
(市報ちょうふ 平成29年7月20日号掲載)
第303号 一世紀の歩み
市内全域で民生委員(註)の方々が、日々、地域福祉の向上に寄与しておられることは、おそらくすべての市民がご存じのことだろう。
現在、活動は調布市民生児童委員協議会の下、市内を6地区に分割して展開され、総勢154名の民生委員が各地区で親身に市民と接しておられる。その相談案件は、在宅福祉、生活環境全般、家族関係、健康・保健医療、介護保険、子どもの教育・学校生活、子育て・母子保健など誠に多岐にわたっており、多くの市民が日常生活における懸案解決に極めて有効に活用しておられる。
その民生委員制度が、本年、制度発足100周年を迎えることとなった。その起源は、大正6年に岡山県で笠井信一知事により創設された済世顧問制度とされる。当初、県民の貧困問題に正面から取り組んだ活動が全国に発展的に拡大して、現在の素晴らしいシステムを確立するに至ったものだ。
民生委員以外の、福祉や防災部門などで活動いただいているすべての方を含めて、市民の自発的な貢献が、行政と連携して多くの市民の生活防衛もしくは生活向上に大きな役割を果たしておられることに、改めて敬意を表するとともに心から感謝申し上げます。
調布市長 長友貴樹
(註)民生委員・児童委員の意
(市報ちょうふ 平成29年7月5日号掲載)
第302号 爽やかなフィナーレ
プロゴルファーの宮里藍選手が今季限りでの引退を表明した。まだ31歳という若さだった(註1)ので意外感もあり、早い別れを惜しむ声も聞かれた(註2)。
高校生でプロトーナメントに優勝し一気に国内トップ選手に駆け上がり、果敢に挑戦した海外ツアーにおいても9勝を記録した。そして2010年6月にはなんと日本人男女合わせて初の世界ランキング1位に輝いている。
日本人の中でも小柄な体躯で、圧倒的に体格に勝る海外選手を相手に勝利を重ねたことは特筆に値しよう。
そして同時に、彼女の存在が高い評価を得た要因が、その素晴らしい戦績だけではないことも万人の認めるところだろう。
どのような場面においても、周囲に笑顔で接し、丁寧な言葉で応対する彼女の人間性にはすべての人々が好感を持った。
フィギュアスケートの浅田真央選手にも同様の印象を抱いたが、スポーツ選手がその成績だけで敬愛されるものでないことを彼女たちは証明していると言える。プロ野球で言えば、長嶋さんや王さんがインタビューにぞんざいな態度で対応したことが一度もなかったように。
藍ちゃんの爽やかなフィナーレを見守りながら、彼女に学んだことをいつまでも心に留めていきたいと思った。
調布市長 長友貴樹
(註1)6月19日で32歳。
(註2)国内最終戦とも言われた今月の試合には、異例ともいえる約1万人の観客が押し寄せた。
(市報ちょうふ 平成29年6月20日号掲載)
第301号 ワールドカップを思い描いて
私は、子供のころからスポーツ全般をこよなく愛好している。プレーすることも見ることも。昭和30年代の小学生の時分は、主流は何と言っても野球と相撲。その後、プロレスやボクシングのテレビ観戦などにも随分熟をあげたものだ。
そのころサッカーは、野球に比べればまだまだ地味な存在だった。隆盛を極めるようになった要因はやはり平成のプロリーグ設立だろう。そして、現在J1チームのFC東京がわがまちを本拠地として、市内のスポーツ振興にも大きな貢献を果たしてくれている。そのことに対する感謝もあり、私もホームゲームには可能な限り足を運ぶようにしている。
加えて近年はラグビーに費やす時間も増えてきた。一昨年のワールドカップ、イングランド大会の熱闘が再来年の日本大会で再現される。味の素スタジアムにおける開会式および開幕戦(註1)には今から胸躍る思いだ。
その前哨戦としても、強豪国とのテストマッチには極めて大きな意義がある。今月24日に味スタで対戦するアイルランドは、再来年の大会で同じ予選グループに所属することがすでに決まっている。本大会を思い描きながら、スタジアムを満員にしてみんなで応援に興じたい(註2)。
調布市長 長友貴樹
(註1)2019年9月20日。ラグビーワールドカップ2019日本大会。
(註2)5月末現在、チケットはまだ入手可能。
(市報ちょうふ 平成29年6月5日号掲載)
第300号 「学生時代」
歌手のペギー葉山さんがお亡くなりになった。「南国土佐を後にして」や「サウンド・オブ・ミュージック」の劇中歌、「ドレミの歌」などのヒット曲が思い出されるが、私の世代ではやはり、「蔦(つた)の絡(から)まるチャペル」で始まる「学生時代」が愛唱歌として最も多くの方の心に残っているのではないだろうか。中学から高校にかけて、イベントや旅行の際に作成する歌集には必ずと言ってよいほど入っていたと記憶する。
この歌が世に出たのは、ちょうど東京オリンピックが開催された1964(昭和39)年。戦後約20年が経過し日本の産業復興は確かな足取りを辿りつつあったとはいえ、まだ高度経済成長が完全に軌道に乗る前の段階で、道路や下水道などの都市インフラの整備度合いも低い水準に留まり、豊かさを実感するにはほど遠い状況だったことは疑いない。
ただ、まだ社会情勢が混沌として、今とは比較にならないぐらい国民生活に貧しさも残る時代だったからこそ、あの歌に込められた青春時代の純粋な感情が多くの人の心根に共感として深く染み入ったような気もする。
現代の若者が生涯にわたって口ずさむのはどのような歌なのだろう。そこには、はたして彼らの感性における共通の抒情性が込められているのだろうか。
調布市長 長友貴樹
(市報ちょうふ 平成29年5月20日号掲載)
第299号 多摩全域の振興を
5月1日から26市で構成する東京都市長会の会長を務めることになった。昭和30年に市長会が発足してから31人目、調布からは2人目の就任となる。大変名誉なことであり、まことに身の引き締まる思いだ。
ただ、これまで他の市長の皆さんに比べて市長会に特段大きな貢献を果たしてきたわけではなく、比較的在籍年数が長いことが主な選出理由であり面映(おもは)ゆさを禁じ得ないが、選ばれた以上は多摩地域全体の振興のために微力を尽くしていきたい。
市長会の現状はと言えば、和気藹藹(あいあい)としたすこぶる温かい雰囲気の中でフランクな意見交換が活発に行われ、かつ全国における自然災害発生時には極めて迅速に復興支援に対する協力態勢が構築されるなど充実した活動が展開されている。歴代会長を始めとした多くの先輩市長のご努力の賜物と深く感謝するばかりだ。
私は、過去数年以内に多摩地域等の首長に呼びかけて2つの意見交換の場を設けてきた。多摩川流域首長の会および5市連携シンポジウムだ(註)。そして、それらの場を通じて自治体間協力の方途を探ってきた。その成果がそろそろ出始めており、今後はそれを多摩全域に拡大する可能性を模索するとともに、その過程でわが市の享受するメリットをしっかり確保していきたい。
調布市長 長友貴樹
(註)多摩川流域首長の会(府中市、日野市、狛江市、多摩市、稲城市、調布市の6自治体で平成25年に発足)。現在はそれに加えて八王子市、世田谷区、大田区、川崎市が参加。5市連携シンポジウム(5市市長が語る地域自治体連携シンポジウム)武蔵野市、東村山市、福生市、東久留米市、調布市で平成22年に開始。
(市報ちょうふ 平成29年5月5日号掲載)
第298号 決して風化させない
平成29年度がスタートしました。桜花爛漫の中、市内の各公立小中学校でも入学式が挙行され1学期が始まりました。すべての児童・生徒が楽しく充実した学校生活を送ってほしいと心から願っています。そのために、当然ながら彼らの日常生活における安全の確保に市として全力で取り組んでまいります。
そして、そのことについては、やはり4年4カ月前の小学校5年生の女の子が亡くなられた、大変痛ましい食物アレルギー事故を思い起こさざるを得ません。
二度と同様の事故を引き起こさないために、市としては多くの関係者にご協力いただきながら、今日まで保育園も対象に加えて、市を挙げて諸施策を講じてきました。
食物アレルギー対応マニュアルの作成、慈恵第三病院とのホットラインの運用、医師による相談、教職員研修の徹底など、調布市の取組が全国の自治体の参考となるよう、広く安全対策を実施し、こうした取組を市のホームページで公開するなど、積極的に情報発信に努めてきたところであります。
事故を今後も決して風化させることなく、安全対策に完璧はないという自覚のもと、検証を重ねながら、責任を持って施策をより充実させてまいります。保護者の皆様には、どのような小さなことでも気軽に学校・保育園にご相談いただくようお願いいたします。
調布市長 長友貴樹
(市報ちょうふ 平成29年4月20日号掲載)
第297号 日々を大切に
本稿が印刷、配布される頃はすでに桜も満開だろうか。
年度が改まり、学業に仕事に多くの人が新たなスタートを迎えることとなる。我が身を振り返り、幼児期から現在までにさまざまな年があったことを改めて思い起こす。期待に胸躍らせたことばかりではない。先行きに明るい展望が見いだせずに不安にさいなまれたこともたびたびあった。そのようなときの桜は果たして自分の目にどのように映っていたのだろう。
ただ、必ずしも順風に恵まれなかった時期においても、若いころはいつかは事態が好転すると信じていたように思う。また、不遇に感じる時も心の安らぎを得ることができた家庭やその他のささやかな心のよりどころが、未来永劫不変であることを信じて疑わなかったような気がする。
しかし、齢(よわい)を重ねるに従い、当然のことながら、何事にも終焉があることを徐々に意識せざるを得なくなる。かけがえのない人を見送ったり、長年行きつけの店の廃業の知らせを受け取ったりしたときの、たとえようのない寂寥感(せきりょうかん)はまことに辛いものだ。
だがそこに、来し方の凝縮された幸せな瞬間を大いなる感謝の念とともに反芻(はんすう)している自分がいることも事実と言える。今年度一年間もさまざまなことがあるだろうが、貴重な日々を大切に過ごしていきたい。
調布市長 長友貴樹
(市報ちょうふ 平成29年4月5日号掲載)