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ページ番号:3519

掲載開始日:2012年3月5日更新日:2012年3月5日

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平成23年度 市長コラム「手をつなぐ樹」(第173号から第191号まで)

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コラム一覧

第191号 全校一斉防災訓練

 3月11日が近づいてくる。全国民がさまざまな感慨を抱きながら、この1年を思い起こしていることだろう。
 私は、昨年の同日2時46分には市役所内でミーティングを行っていた。その後、ただちに対策本部を立ち上げて被害状況を把握するとともに、公共施設におられた高齢者や、生徒、児童等の安否確認および安全な環境下での保護に努めた。
 そして、夕方以降にはおびただしい数の帰宅困難者が発生し、その方たちへの職員の対応は翌朝まで続いたのだった。
 その後、3月以降に原発事故の余波を受けて味の素スタジアムに避難して来られた福島県のみなさんに対する支援については、社会福祉協議会の運営のもとに、市内外の2800人にも及ぶ素晴らしいボランティア組織が結成された。すべての参加者に心から敬意を表させていただきたい。また、これからのまちづくりにおける大いなるヒントをいただいたと思っている。
 この1年間、調布市内の防災機能の強化に全力で取り組んできた。その一環として、24年度から毎年4月の第4土曜日を「調布市防災教育の日」と定め、28全公立小中学校で一斉の防災訓練を実施することとした。今年は4月28日の予定だ。是非、多くの方にご参加いただきたい。

調布市長 長友貴樹

(市報ちょうふ 平成24年3月5日号掲載)

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第190号 時には気持ちを楽に

 惰性とは言いたくないが、どうしても日常の営みに忙殺されるうちに、あわただしく日々が過ぎ去っていく。
 ただ、そのような中にあっても、近視眼的な考え方に必要以上に捉われすぎてはいけないと常々思っている。時に、全体を俯瞰(ふかん)するというか、一歩退いて問題点を見つめ直す、あるいは自分自身の気を楽にするような瞬間を持つべきなのだろう。
 たとえば、我々が生きるこの地球は誕生してから46億年の歳月が経過しているそうだ。宇宙物理学なるものに極めて疎(うと)い身には、どうやって計ったのか見当もつかないが。そして、遅くとも太陽が終焉を迎える50億年後には地球もなくなってしまうとのことだ。それを思えば私などは、公私に渡り多少物事がうまく進まなくとも、直面する問題からひととき距離を置いて仕切り直しがしやすくなる。「まあ、相手の主張も一理あるし、あまりこせこせしたことにこだわっても仕方ない」、というように。
 朝方、小鳥が飛んできて山茶花(さざんか)の生垣に瞬時に身を隠した。雀ぐらいの可愛らしい大きさに見えたので思わず覗いてみると、目をくりくりさせて暖をとるかのように佇(たたず)む綺麗な緑色のメジロと思わず視線が合ってしまった。こんな日は、いい一日でないわけがない。

調布市長 長友貴樹

(市報ちょうふ 平成24年2月20日号掲載)

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第189号 本気の対話を

 どうしても突飛な言い方になってしまうが、昨年来、日本の若者が心配だという気持ちが徐々に募ってきた。それは今の20代以下の人にとって、生涯大きなトラウマ(註)にもなりかねないような社会事象(大被害をもたらす自然災害や長期化する不況下での悲惨な事件など)が、出生以来あまりにも続きすぎているように思われるからだ。
 たとえば、阪神淡路大震災が全国民に与えた衝撃は計り知れず、生涯これを上回る天災はあり得ないと思われたが、僅か16年後に、1000年に1回ともいわれる未曾有の大災害が再び国内で発生してしまったのだ。
 ふと思う。このような生涯絶対に忘れ得ない負の記憶が人間形成に及ぼす影響はどの程度のものだろうかと。大人でさえも容易に払拭(ふっしょく)できない心の痛みが子どもに与えるダメージはどれほど大きいものなのだろう。加えて、彼らはものごころついて以来、右肩下がりの元気のない日本しか知らないのだ。
 若い世代を盲目的に甘やかすつもりは毛頭ないが、彼らの育った環境に対する一定の理解はあってしかるべきだ。それなしに、「留学忌避とは夢がない」などと批判してみても年長世代との溝はさらに広がるばかりだ。
 次代を担う彼らとの本気の対話が今こそ必要とされている。

調布市長 長友貴樹

(註)精神的外傷。後遺症として残るような心理的なショックや体験。

(市報ちょうふ 平成24年2月5日号掲載)

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第188号 歴史的な年の幕明け

 元旦の国立競技場から、調布市にとってこの上ない朗報がもたらされた。
 サッカー天皇杯におけるFC東京の見事な優勝。本戦出場クラブだけでも88チームを数える大トーナメントを制した快挙に心からの賛辞を贈らせていただきたい。勝利が確定した瞬間、スタジアムにとどろく祝福の大歓声の中で、私自身も大きな感動に包まれながら、心から快哉(かいさい)を叫んでいた。そして、今野主将に天皇杯が授与されるのを眼前にしながら、J2降格が決定して迎えた暗澹(たん)たる1年前の年明けをしみじみと思い起こさざるを得なかった。
 それにしても、地元に本拠地を置くチームが日本一になる確率は、ある意味では全国の市町村の数が分母になるわけだから、約1800分の1。なんという幸運だろう。
 今年は、京王線の工事が最終段階を迎えるとともに、三鷹市との共同事業である新ごみ処理施設も完成予定だ。また、来年の味の素スタジアムをメイン会場とする東京国体の準備も佳境に入ってくる。そのようなわが市にとって歴史的な年の幕開けを飾るのに、これ以上ない明るい話題を得ることができた。
 そのツキも大事にしながら、記憶に残る大切な年のまちづくりを着実に進展させていきたい。

調布市長 長友貴樹

(市報ちょうふ 平成24年1月20日号掲載)

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第187号 期待をこめて

 嬉しいことが重なる日もあるものだ。
 12月9日にFC東京の阿久根社長が、シーズン終了の報告のために市役所にお越しになった。役所内には熱心なサポーターも数多くいるので、みんなで心からの祝意をこめて社長をお迎えした。
 それにしても、本当に良かった。まさかのJ2降格から1年間、間違いなく1シーズンでJ1に復帰してくれるだろうと信じつつも、それが確定するまでの道のりは平坦ではなかった。J2優勝の余勢を駆って、是非とも来年のJ1では、今年の柏レイソルのように昇格、即覇権獲得を目指してもらいたい。
 また、同日にはプロ野球、元巨人軍の中畑清氏の横浜DeNA監督就任が発表された。多くの方がご存知のように、調布市民である中畑氏は、これまで福祉分野への多額の寄付、自治会活動やスポーツイベントへの積極的な協力などを通じて、調布市政に多大な貢献を果たしてこられた。明るいキャラクターで野球界全体に活力を与えることを期待させていただきたい。

 心痛む記憶とともに、今年も暮れようとしておりますが、すべてのご家庭にとって、明年が幸多き年となりますように、心からお祈り申し上げます。

調布市長 長友貴樹

(市報ちょうふ 平成23年12月20日号掲載)

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第186号 イルミネーションの影で

 欧州では、秋景色に目を奪われる季節になると、あっという間に冬将軍が訪れる。街路樹が鮮やかに色づくと、人々が真っ白な煙のかたまりのような息を吐きながら行き交う通りに、焼き栗の芳香が漂い始める。今頃はどの街もクリスマスのイルミネーションで着飾っていることだろう。
 だが、一見きらびやかな都市の装いとは裏腹に、昨年来のギリシャの財政破綻を一つの契機とする欧州全体の経済危機は、すべての欧州人の心に暗い影を宿している。そして、経済のグローバル化の中で、日本を含めた世界全体に及ぼす影響は極めて深刻なものとなっている。
 この困難な状況下で、欧州全体の協調体制が崩壊してしまう危険性も指摘され始めた。ただ、それではあまりに残念な気がしてしまう。2次にわたる世界大戦の反省の中で、もう永久に戦争のない欧州を築きあげようとした壮大な試みが、EC(欧州共同体)からEU(欧州連合)へと深化、拡大を伴いながら連綿と続いてきたはずではなかったのか。
 平和を基調とする大局的な視点における欧州の人々の英知と理性を今後とも信じていきたい。また、アジア諸国も同様に、国際的視野に基づく協調の議論をもっと急ぐ必要があるのだが。

調布市長 長友貴樹

(市報ちょうふ 平成23年12月5日号掲載)

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第185号 いよいよスタート

 前回(11月5日号)の市報1面でご紹介した、調布市商工会による「絆・ぬくもり がんばろう調布セール」が、いよいよ12月1日からスタートします。
 金券のあたるスクラッチ(カードの表面を削る)くじを商工会が市の補助金を活用して発行するという企画が注目され、有難いことに市内の情報紙にとどまらず複数の全国紙地方版においても報道していただきました。
 その内容は、12月1日から15日の期間に参加店にスクラッチくじを配布し、1回500円以上の商品を購入するか、飲食・サービスを利用されたお客様にくじを1枚贈呈するというものです。そして、その場でスクラッチ部分を削ってあたりが出れば、12月いっぱい金券として参加店において使用できます。金額は500円券を1万2000本以上、100円券を6万本以上用意させていただく予定です(註)。
 これは、長期的に景気が低迷する中で、少しでも調布市内における消費を拡大したいという思いに基づく試みではありますが、市民の皆さまにも子どもの頃の駄菓子屋でワクワクしながらくじを引いたような遊び心で、楽しみながらご協力いただければと思います。
 歳末商戦活性化のために商工会と連携して全力で頑張ります。

調布市長 長友貴樹

(註)参加店は継続して募集中です。お申し込み・お問い合わせは調布市商工会電話485-2214まで。

(市報ちょうふ 平成23年11月20日号掲載)

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第184号 どうか生き抜いて下さい

 10月19日に、調布市内の全公立小中学校28校別の震災時対応シミュレーションを作成した旨、記者会見を行い公表した。
 その結果、幸いにも翌日、4紙の地方欄にとりあげていただいたので、ご存知の市民も多数おられることだろう。
 内容は一口で言って、わが調布市を含む地域が、東日本大震災のような極めて大きな地震に見舞われ、かつ気象等の諸条件が避難するのに困難な日である前提(註1)のもとに、人命の救助を最優先に位置づけた避難所運営マニュアルである。
 重症を負われた方の生死を分ける境目は72時間以内の救援、救護と言われる。大混乱の避難所において、そのような危機的状況にある方以外にも重病人、障害者、妊婦、乳幼児をいかに手助けできるか。必要とされるのは、実際の現場で役立たせるために極限まで検討が深められた計画および実践である。
 避難所は、単に緊急時における生活の場であるだけでなく、ときに野戦病院であり、最悪、遺体の安置所となることを平時から覚悟しておかなければならない。
 市民のみなさん、どうか生き抜いて下さい。そのような切実な思いで作成したマニュアルに、一刻でも早く目を通していただきたいと思います(註2)。

調布市長 長友貴樹

(註1)「震度7の直下型地震が連休明けの昼前に発生、天候は雨、一般道路は電柱の倒壊などで車の通行が不可能」という状況を設定。
(註2)市のホームページから印刷可、または総合案内(市役所2階)、教育総務課(教育会館4階)で配布。詳細は6面参照。

(市報ちょうふ 平成23年11月5日号掲載)

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第183号 妥協なき前進

 米国アップル社の前CEO、スティーブ・ジョブズ氏が死去した。
 その生前の業績をルネサンスの巨匠レオナルド・ダ・ヴィンチになぞらえた人もいるが、確かにIT革命の名のもとの高度情報伝達社会の発展に果たした役割は計り知れなく大きい。
 ただ、家庭環境を含めて、彼の半生は、決して恵まれたものではなかったと言えるかもしれない。経済的な理由もあり、大学も1年足らずで退学している。20歳で起業したのち瞬(またた)く間に、卓越した技術力により彼は時代の寵(ちょう)児となりアップル社は一躍世界的企業となったが、当人は経営上の社内対立により30歳で会社を一度追われてもいる。
 スタンフォード大学における卒業生への祝賀スピーチで語りかけた名言「ハングリーであれ、愚かであれ」は、自らの波乱に満ちた人生軌跡から滲(にじ)み出た熱い思いと言えよう。
 わが国でも、昭和30年代末に「太った豚よりも痩(や)せたソクラテスになれ」と大学の卒業式で訓示した学長がいた(註)。
 社会生活のスタートラインに立つ若者たちに、生涯持ち続けてほしい心構えとして、彼らの言葉には共通の意味合いが感じとれる。現状に安易に妥協せず常に前進を心がける。そうありたいものだとつくづく思う。

調布市長 長友貴樹

(註)昭和39年3月の東大卒業式における大河内一男総長の言。ただし、その言葉は予定稿にはあったものの、実際には読まれなかったとされる。

(市報ちょうふ 平成23年10月20日号掲載)

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第182号 朗報を心待ちに

 爽快な青空の下でのスポーツの季節となった。プロ野球も終盤となり、すでにクライマックスシリーズ出場チームも確定しつつある。
 サッカーでは、なんと言ってもFC東京のJ2における順位が気になるところだが、現在はご承知の通りJ1昇格圏内の成績を堅調にキープしている(註)。
 思えば昨年の最終戦。すでにJ2降格が決定していた京都にアウェーで0対2と敗れ12年ぶりの降格が決まったのだが、その瞬間、調布でテレビ観戦していた我々20人ほどのサポーターは、まさに放心状態であった。
 その時、私の脳裏にとっさに浮かんだのは、翌シーズンJ2降格後の観客離れによるチームの士気低下への懸念だった。しかし、それは幸いにも杞憂(きゆう)だったと言えよう。私は、今シーズンもホームゲームにはほとんど足を運んでいるが、サポーターの変わらぬ熱狂的な応援ぶりに胸を熱くしている。ただ、あえて厳しい表現を使わせてもらえば、「仏の顔は一度」かもしれない。一日も早く、J1復帰の朗報に接したいものだ。
 また、わが郷土の星、皇風(きみかぜ)関。見事に9月場所は新十両で8勝7敗と勝ち越した。幕内を目指して11月の九州場所におけるさらなる飛躍を心から期待したい。

調布市長 長友貴樹

(註)9月25日(第29節)現在、15勝6分5敗 勝ち点51で首位

(市報ちょうふ 平成23年10月5日号掲載)

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第181号 ビスクラの人々

 9月11日で東日本大震災からちょうど半年。被災された多くの方にとっては、ご不便な日常生活の中であっという間の時間の経過だったことだろう。
 また、同日は奇(く)しくも、あの2001年のアメリカにおける同時多発テロから丸10年が経過した日でもあった。
 無辜(むこ)の民(たみ)という言葉があるが、罪のない人が、どうしてこのような理不尽な目に遭(あ)わなければならないのだろう。
 私は、人生に不条理さを感じる時、しばしばある光景を思い出す。今から約30年前に仕事で訪れたアフリカ、アルジェリア。サハラ砂漠の突端に位置するビスクラという田舎町。電気こそ存在したが、およそ何の娯楽施設も無く、宗教の戒律により酒も存在しない。人々は夕食を済ませたあと親戚の家に集まり、お茶を飲みながら静かに談笑することが唯一の楽しみだという。そして、誰かが困難に直面した時には自然にみんなで助け合う。
 その体験を通して、人間の根源的な営みについて深く考えさせられたものだ。
 人は支え合って生きている。不幸に見舞われたときには、物質的支援もさることながら、精神的サポートが極めて重要となる。利便性の高いまちづくりを進行させながらも、決してぬくもりを希薄にしてはならない。

調布市長 長友貴樹

(市報ちょうふ 平成23年9月20日号掲載)

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第180号 去りゆく夏に'11

 まだ残暑の日々が続くとはいえ、吹き抜ける風には、やはり秋の気配が感じられる。それぞれの人の心に、忘れ得ぬさまざまな思い出を残して、今年の夏が過ぎていく。
 多くの人にとって、去りゆくことを惜しむ心情が一番強い季節は夏ではないだろうか。灼熱の太陽、陽炎(かげろう)の中で燃え立つような万緑の眩(まぶ)しさ、疾駆(しっく)する素足が焼けるような砂浜など、受ける衝撃や刺激が最も大きいがゆえに。
 そのような中で、はじけるようにエネルギーを発散させる若人の躍動感を今となっては、ただただ羨(うらや)ましく思う。もちろん、思い起こせば私の脳裏にも、各年代ごとの原色に満ちた、多くの夏の情景が浮かんでくる。それはときに、盛夏の一瞬のちの、山や海からあっという間に人影が絶えて秋風が忍び寄ってくる、もの悲しいイメージと重なることもあるのだが。
 それにつけても、四季がきわめてはっきりと分かれる国に生まれたことの幸運を思わずにはいられない。
 その四季の移ろいを人はよく自らの一生になぞらえる。そうであれば、今、私は、いったいどのあたりに身を置いているのだろう。仲秋だろうか、それとも晩秋、はたまた。

調布市長 長友貴樹

(市報ちょうふ 平成23年9月5日号掲載)

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第179号 ローレライに魅せられて

 多摩地域の近隣市と、行政需要を実現させるための働きかけを共同で行うことはよくある。特に、道路や河川などのいわゆるインフラ整備については、自治体間をまたがる案件も多いので、統一行動の必要性が高い。
 先日も多摩川架橋とその関連道路の整備に関して、関連市による協議会が開催された。わが市の案件を含めて、早期の実現を関係機関に対し強く要望することを確認し合ったが、それにしても、長年の要請が実を結び、これまでに多くの橋が整備されたものだとつくづく思った。
 それと同時に、ふと思い出したことがある。ちょうど去年の今頃だった。ローレライで有名なライン川に橋が架(か)かるというニュース。それがどうした、と言われるかもしれないが、ドイツにおいては、ライン川沿いの美しい古城などの景観を守るために、マインツからコブレンツまでのなんと90キロにもおよぶ区間にこれまで一つも橋を架けてこなかったのだ。
 日常生活上の不便さは想像に余りある。よくもまあ、近隣住民から猛烈な苦情が出なかったものだ。あるいは、出ても観光を優先したに過ぎないのか。いずれにしても、わが国ではまずあり得ないことだろうが、生活の便利さと環境保全の兼ね合いについて考えさせられたものだ。

調布市長 長友貴樹

(市報ちょうふ 平成23年8月20日号掲載)

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第178号 祝 スポーツ二題

 このような年によくぞ世界一に。なでしこジャパン。
 「世界中の友よ、支援を有難う」。選手たちが試合後に場内を回りながら、横断幕により全世界に発信した感謝のメッセージは、地球全土に高らかに響き渡った。
 また、今回のアメリカとの決勝戦に、わが国の底力、そして日本人の生き様を見た思いだ。圧倒的な体格差に起因する猛攻を身を挺(てい)して防ぎきり、数少ないチャンスを見事に得点に結びつけた。野球におけるWBCの際にも感じたが、戦略を駆使すれば必ずや勝機は生まれてくる。狭小な国土、極めて乏しい天然資源というハンディキャップを克服して、ここまでやってきた国ではないか。
 いま一つの快挙についても、もろ手を挙げて喜びを分かち合いたい。
 調布市出身の力士、直江俊司君(註)が、名古屋場所、西幕下5枚目で見事全勝優勝を遂げ、来場所の十両昇進を確定させたのだ。彼は八雲台小学校、調布七中で学び、その間に「わんぱく相撲調布場所」に出場したことが、今日に至るきっかけとなっている。市制施行以来初の、関取(十両以上の力士)の誕生を心から祝福するとともに、今後のさらなる活躍に期待を寄せたい。

調布市長 長友貴樹

(註)しこ名は7月27日から直江改め皇風(きみかぜ)。

(市報ちょうふ 平成23年8月5日号掲載)

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第177号 産業再興への支援もあわせて

 東日本大震災の惨禍に見舞われた東北地方の現状は、想像以上に悲惨なものだった。
 釜石、大船渡、陸前高田、気仙沼、南三陸、女川、石巻、東松島、仙台、相馬と三陸海岸を車で南下しながら思わず息をのむような光景の連続に言葉を失った。
 骨組みだけが残る大きなビルディング、一見無傷に見えるものの、中ががらんどうになってしまった無数の住居、はるか内陸部まで運ばれた大型船、寸断された橋、レールを失った鉄道、その間にうず高く積まれたおびただしい量の瓦礫(がれき)の山。
 そして、何よりも心に残ったのは、まだ完全には片付いていない海沿いの広い更地だった。そこには、つい4カ月前まで、民家が、交番が、郵便局が、商店が、居酒屋が軒を連ね、人々の情愛あふれる営みが確かに存在していたのだと思うと、なんともやりきれない気持ちに襲われてしまう。
 また、岩手県遠野市の本田市長および釜石市の野田市長と、今後の支援活動についてお話をさせていただいた。その際、現地における復興支援継続への期待とともに、水産業などの産業再興支援に対するご希望も伺った。近隣の自治体にも呼びかけながら、有効な手立てを講じていければと考えている。

調布市長 長友貴樹

(市報ちょうふ 平成23年7月20日号掲載)

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第176号 広い世界を見てみよう

 前々回、「梅雨が明ければ一年でもっとも躍動的な季節がやってくる」と、書いた。
 ただ、その季節を有意義に過ごそうとしても、現役で仕事をしている間は、どなたも、そう時間を意のままに使うことができかねるだろう。また、残念ではあるが、誰しも年齢を重ねるごとに、若い頃のように身体に多少の無理を強いることが難しくなってくる。
 そうなると、ことさら昔のことがしのばれる。私自身、それほど大したことをしていたわけでもないが......。しかし、長い休暇があれば見知らぬ土地を旅してみたいとは、よく思った。「片雲の風にさそはれて漂泊の思ひやまず」というほど大げさなものでもなかったが。
 今、若い人が海外に出て行きたがらないと聞く。本当だとすれば誠に残念なことだ。若いうちに、外から日本を見ることは得がたい経験だと思う。他の国の文化、日常生活に触れれば、わが国の良さを再認識することも多いし、場合によっては逆に嫌悪感を覚えることもある。それでいいのだと思う。とにかく世界は広い。日本の国土は世界の総陸地面積のわずか0.25パーセントを占めるにすぎないのだ。
 今から40年以上前に、このような言葉があった。「書を捨てよ町へ出よう」。

調布市長 長友貴樹

(市報ちょうふ 平成23年7月5日号掲載)

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第175号 復興支援のためにも

 先月末、岩手県遠野市の本田市長が調布市役所にお越しになった。
 震災発生以来、多忙を極めておられる中で、所用があり上京されたとのこと。在京時間も限られると拝察したので、初めは私が都心に赴きますと申し上げたのだが、わざわざ調布まで足を運んでいただくことになり恐縮した次第だ。
 まず、本田市長が、4月以降3次に渡る、復興支援のための調布市職員の派遣(註)に対して、大変丁重な謝辞を述べられた。それを受けて私からは、あらためてお見舞いを申し上げるとともに、支援継続の決意を表明させていただいた。初対面であると思えないほど打ちとけた雰囲気の中で、意見交換させていただけたことは誠に有難かった。
 そもそも、遠野市とは水木しげるさんのご縁で、今年に入り文化および経済交流を積極的に推進していこうという機運が生まれ、4月上旬に私が先方を訪問させていただき具体的な話し合いをさせていただくことになっていたのだ。
 今回、本田市長より、復興支援に資する観点からも、両市の交流促進を希望する旨の意向があらためて示された。わが市にまったく異存はなく、できるだけ早く具体的な話をさせていただきたいと思っている。

調布市長 長友貴樹

(註)4月5日(火曜日)から10日(日曜日) 10人(第1次)、9日(土曜日)から13日(水曜日) 7人(第2次)、12日(火曜日)から16日(土曜日) 11人(第3次)

(市報ちょうふ 平成23年6月20日号掲載)

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第174号 四季の移ろいに

 今年は、入梅が全国的に平年より早かったようだ。ということは、梅雨の期間がいつもより長くなるのだろうか。まあ、そうだとしても、明ければすぐに入道雲が空を占め、一年でもっとも躍動的な季節がやってくる。
 また、振り返れば先月は、例年通り新緑が目に鮮やかな中で、さわやかな五月晴れの日が続いていたし、それ以前には、桜が今年も見事に咲き誇っていた。
 そう、四季の移り変わりには何の変化もない。ただ、日本全体に、自然界の転変を心地よく受けとめ、それを愛(め)でる心のゆとりが不足しているだけのことなのだ。
 咲き終えて吹雪のごとく風に舞う花びらを見つめながら、今年の桜も不憫(ふびん)にすぎるとつくづく思ったものだ。「酒に恨みはないものを」などという、はやり歌の文句が不意に脳裏に浮かんできてしまう。
 被災地では、まだおびただしい数の方が避難所生活を余儀なくされておられる。調布市にも被災後に移り住んでこられたご家庭が存在し、なかには、ご両親が仕事の都合で現地を離れられず、お子さんだけ避難しておられるケースもある。
 季節の移ろいに心和まれるご家族の団欒(らん)が、一日も早く復活いたしますよう心からお祈り申し上げます。

調布市長 長友貴樹

(市報ちょうふ 平成23年6月5日号掲載)

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第173号 「頑張ろう」、そして

 以前、ある外国人の方が、流暢(りゅうちょう)な日本語でこのように言われた。「日本語の「頑張る」という言葉をほかの言語に置き換えることは難しいのです」。
 我々日本人は日常生活で口癖のように、頑張れ、頑張ろうと言い合っている。これは、同族意識における連帯感のもとの向上心、あるいは不屈の闘志とでもいうことになるのだろうか。前述の方は、欧米には自分でベストを尽くすと言い、他人にご多幸をという表現はあるが、なにがなんでも目的を達成するまで努力するような意味合いの言葉を日常茶飯に使うことはないと言われた。それは決して、日本人の頑張りを否定するような指摘ではなかったが。
 未曾有の大災害によるおびただしい数の被災者の方々に今後とも支援の手を差し伸べ、全国民が一緒になって苦難を乗り越えていくことは当然であり、調布市として、また一国民として、できるだけのことをしていきたい。
 ただ、あれだけ悲惨な出来事に見舞われた方々に、特に身寄りのなくなった子どもたちなどに対して、ただ頑張ろうだけでは、時としてあまりにかわいそうな感じがしてしまうのは私だけだろうか。温かく包み込むことがこんなにも難しいかとつくづく思う毎日だ。

調布市長 長友貴樹

(市報ちょうふ 平成23年5月20日号掲載)

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調布市行政経営部広報課 

電話番号:042-481-7301・7302

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